第28話 「祝勝会」

――祝勝会


私はというと久しぶりに女性貴族としての正装をしていた。そのせいか私の姿を見た人たちはびっくりしていた。


まずは王子様


「な…なんだその格好は…」


「一応、公の場ですので」


「に…似合ってるよ」


その後は黙り込んでしまった。それだけかい!!と心では突っ込んでいるけど、横にいたクラウス様は


「ふーん。馬子にも衣装とはこのことだね」


相変わらず冷たい。するとレオン様は、私をジロジロ見ている。腹黒なレオン様、きっと何か言ってくるに違いない。


「どうかなさいましたか?」


「うーむ。歳末大売出しって感じかな」


「レオン様、どういう意味ですか?」


「ここで売り切らないと商品価値はなくなる」


クラウス様は納得したと手をポンと叩いて


「なるほど、レオンは、いいことを言うね」


「クラウス様!!、レオン様!!」


「ハハハ、怒ったか」


「もうっ!!」


相変わらずレオン様は腹黒だ。しかし、王子様は、この二人の会話についていけなかったよう。


「時間だ」


***


勲章授与式で私を見た王様は


「フ…フリージアなのか?」


「はい、陛下」


「これは、見違えたぞ。いつも治療をしている姿しかみていないから、今日もその格好でくると思っていたのでな」


「陛下、このような場ですから」


「ほう…貴族令嬢らしきことを言ってくれるわ」


「陛下のいじわる~」


「ようやく、いつものフリージアらしさがでたか」


「もう…しらない」


すると後ろから


「陛下、陛下、時間が…」


「おっと、そうじゃった。フリージア、この度の働き誠に大儀であった。ここに勲章を授ける」


「ありがたき幸せ」


そこまでは良かったんだけど、陛下に近づこうとした瞬間、履き慣れていないスカートの裾を踏んでよろけてしまった。


「あ…」


「おっと」


陛下に抱き着く形になってしまった。周りがざわついていたが陛下は冷静に


「大丈夫かね」


「はい…」


勲章を陛下自らつけた後、


「本当に大儀であった。我が兵士たちを救ってくれた、フリージアに騎士(ナイト)の称号を与える。今後、フリージアを正式に聖女として認める」


「おお!!」


こうしてエターナル王国公認の聖女となったんだけど、この後が大変だった。祝勝会の中で少しでも一人になると、どこからともなく、貴族の坊ちゃんがやってきて


「私と結婚してくれ」


だったらましな方で


「当然、俺と結婚するだろう」


という謎の超上から目線で話をしてくる奴もいたんだけど、直ぐに王子様がやってきて


「聖女様に結婚を申し込んでいないだろうな?」


めっちゃ殺気立っていて、その気迫が私にまで伝わて来た。そして、中途半端な連中は逃げ去っていったのだった。


この会に来ていたロイド=ビンセントは、遠くでその光景を見ていた。いつもならオリバーに近づくように指示するのだが、先日の失敗している。更にコーエンからの忠告が頭をよぎる


「ロイド様、聖女様には手を出されない方が得策かと」


「どういう意味だ」


「まともに戦って勝てる相手ではございません」


「それほどなのか?」


「はい。魔人が放った黒炎のファイヤーボールを受けても無傷ですよ。更に反撃で漆黒のファイヤーボールを撃ち返したのです。あれは神の領域でございます。ですから、手を出されてはいけませぬ」


それほどの魔力を有しているのであれば、その気があれば、このエターナル王国など手中に収められるだろうに、その聖女は目の前で能天気なふるまいをしている。すると、グロブナンがやって来た。


「ビンセント殿は、聖女様には手を出さないのかね」


「いえ…聖女様になった以上、手出しはできぬかと」


「そうだな。聖女様になってしまったからな、しかし、あの王子が聖女様に好意を持っているとは」


「どういうことだ?」


「女どもの間では有名な話だ。あの鉄壁要塞の王子が聖女にアタックしているそうだ」


「なんと」


「しかし、聖女様は年も年だから、断っているそうだ」


「そうだな。既に行き遅れに近いからな」


「だから、他の貴族たちは、ほら、隙を見て聖女様に声を掛けているだろう。ほう、王子様が排除したか」


「なるほど」


「そういえば、教会が聖女様の調査をするそうだ」


「どういうことだ?」


「マーリンのように魔導士になればよかったのだが、あのような流れで聖女扱いになったことで、教会としては、聖職者としてふさわしいかどうか確認しないといけないらしい」


「ということは、教会本部は動くのか」


「教会本部が動くとまずいな」


「異端という烙印を押したら、悪魔狩りと称して聖騎士団がやってくるとやっかいだ」


「陛下はどのように考えておられるのだろう」


「よくわかりませぬが、先程、聖女であると宣言したことは、教会側へ干渉するなというメッセージという意味ではないのか?今回の授与式に教会の司祭が来ていなかっただろう」


「確かにそうだな」


そんな話があったことはつゆ知らず、祝勝会が終わった翌日、私はいつも通り治癒魔法を施していた時にドクターワトソンが慌てて私の部屋に入ってきた。


「フリージア様!!大変です」


「どうなされたの?ドクターワトソン様」


「ドミニク司祭が来られました」






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