第三章 生活圏、実は「死の森」③

 勝手に集まってくる食材をひととおり手に入れたあと、アイテムボックスに戦利品をしまい、オレは「ある目的」のために再び《認識阻害ローブ》を身に纏っていた。

 ある目的とは、【鶏肉】になる前の「ニワトル」という鳥型モンスターを見つけることだ。

 オレは、見つけたニワトルのあとをひっそりとついていく。

 そうしてたどり着いたのはニワトルの巣。

 その中には、ニワトルの卵があった。

 オレはスキル【鑑定】で、ニワトルの卵が食用として問題ないかを確認した。

 案の定、そこには【鶏卵】と表示されている。

 ――よし、やった!

 ニワトルが【鶏肉】になるなら、卵は【鶏卵】になってくれると信じてた!

 オレはニワトルが去るのを待ち、【鶏卵】を二つほどもらっていくことにした。

 あのニワトルには申し訳ないが、卵は栄養豊富だし、何かと便利なためぜひとも積極的に使っていきたい。

 ちなみにニワトルはニワトリに比べてたくさん卵を産むのか、巣の中には七つほどあった。これなら二つくらいもらっても罰は当たらないだろう。

 環境が整ったら、ニワトルを飼うのもアリだな。

 あいつら狂暴だし一メートルくらいあるから、リュミエが怖がるかもしれないけど。

 でも毎回取りに来るのもな。

 何かいい方法はないものか……。

「まあとりあえず――次は【小麦粉】だな!」

 この世界の【小麦粉】は、森にあるコムという木の実から生成する。

 コムの実はドングリのような見た目をした小さな実で、殻の中身を乾燥させてすり潰すと出来上がる、本来少し手間のかかる代物らしかったが。

 これもまた、オレのスキル【料理】を使えば一瞬だった。

 ちなみになぜ生成方法が分かったかというと。

 宝物庫にあった書物の中に、「モンスター除け」として作り方が書かれているのをたまたま見つけたのだ。

 ここでの【小麦粉】は、そういう扱いらしかった。

 毒があるため仕方がないが、何とももったいない……。

 オレはコムの実を大量に収穫し、アイテムボックスに放り込む。

「手に入れたかったものは手に入れたし、そろそろ帰るか」

『スキル【転移】を使いますか?』

「ああ、頼む」

 スキルは、もちろん自分で念じても使えるが。

 メカニーに頼むとその手間すら省略できてしまうのがありがたい。

 実はメカニーの存在自体も隠しスキルの一つ(というか女神からの特典)らしく、本来ならSPとMPを同時消費する上級者向けのものだという話だが。

 オレの場合、このSPとMPがほぼ無尽蔵にあるため、メカニーを常時発動するという特別待遇を受けられている。

 ――何だかんだで、ラスボスであることに救われてるな、オレ。

 今のところ冒険者がやってこないから、こんな悠長なことを言ってられるのかもしれないけど。

 冒険者はオレを殺すために、命の危険を冒してダンジョンに潜るわけだしな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る