第244話 死んだ?


 ギルドに着くと、テーブルにつく複数の冒険者がおり、何かを話し合っていた。

 俺達はそんな冒険者達を尻目にジーナのもとに向かう。


「ジーナ」

「あんたらか……」


 なんか疲れてるな。

 まあ、仕方がないけど。


「5-2迷宮に行こうと思ったんだけど、宿屋の子にただの洞窟になったって聞いたわ」

「ああ。もうバレてるから話すけど、本当だよ……」


 あっさり話すな……


「他国のことだからどうでもいいけど、情報統制しろよ」

「それが難しい町なんだよ。あんたらもだけど、この町は余所者しかいない。しかも、利益で作られた町だからこういう情報はすぐに広がるのさ」


 土地柄か……


「厳しいか?」

「そりゃね。ウチとしては大事な迷宮を一つ失った。町としては迷宮がなくなるという前例ができてしまったことだね。上はもう大騒ぎさ。この町は迷宮がなくなったら終わりだからね」


 やはりギルドも迷宮が死ぬということは把握してないんだな。


「なあ、5-2迷宮跡地を見れるか?」

「ん? 洞窟かい?」

「ああ。自分の目で見ないと信じられん」


 コアがあった場所はわかっている。

 そこを見たいのだ。


「そりゃ無理だよ。今は軍が調査しているから封鎖している」


 まあ、当然、するわな。


「そうか……」

「別のところに行くかい?」


 5-4はないとしてもまだ5-3と5-5がある。

 とはいえ……


「いや……その辺りを相談しないといけないから今日は帰る」

「そうかい……」

「ジーナ、イルヴァ達はどうしてる?」

「5-1迷宮だね。残っている遺品を探すらしい」


 首飾りか。


「わかった。ちょっと帰って仲間と相談してくるわ」


 俺達は落ち込んでいるジーナに別れを告げ、ギルドを出た。


「どうします?」


 AIちゃんが聞いてくる。


「帰って相談だな。でも、帰る前にちょっと5-2迷宮を見に行ってみよう」

「それもそうですね」


 俺達は町中を歩いていき、5-2迷宮に向かった。

 しかし、見物客や野次馬に見える冒険者や町民が集まっており、広場を見ることすらできない。


「ダメだこりゃ。近づくことでもできん」

「皆、気になるんだろうね」

「私達も気になるもんね」


 まあなー……


「マスター、カラスちゃんの出番ですよ」

「そうだな」


 頷き、空を見上げる。

 すると、黒い鳥が上空を飛んでいた。


「あれ? いたんだ……」

「ホントだ! カラスちゃんだ!」


 リリーがいる時点でカラスちゃんは用意している。


「ちょっと待ってろ。見てくる」


 カラスちゃんと視界をリンクする。

 すると、ばっちりリリーと目が合った。


「リリーさんをガン見ですね……」


 同じようにカラスちゃんと視界をリンクしたAIちゃんが呆れる。


「そう命じてあるからな……カラスちゃん、迷宮を頼む」

「カー」


 カラスちゃんは一鳴きすると、飛んでいき、すぐに広場が見えた。


「どう?」

「気になる、気になる」


 2人にも視界を見せてあげたいが……


「数人の兵士が洞窟の前にいますね」


 俺にもそう見えている。

 だが、数が少ないと思う。

 多分、他の兵士は洞窟内に入っているんだろうな。


「さすがに洞窟内は無理か……」


 この世界にはカラスがいないし、そんな鳥が洞窟に入ったら怪しまれてしまう。


「蜂さんを使います?」


 小さい蜂さんなら気付かれずに入れるとは思う。


「やってみよう」


 護符を取り出し、地面に投げると、通常の蜂サイズの蜂さんが現れた。

 そして、広場の方に飛んでいき、洞窟の方に向かう。


「気付いてませんね」

「ああ。だが、蜂だからな。慎重にしないと」


 刺すって思われたら攻撃されるかもしれない。


「蜂さん、慎重に行くんですよー」


 AIちゃんがそう指示すると、蜂さんは慎重に近づいていく。

 すると、カラスちゃんが降下してきた。


「カー」


 カラスちゃんが一鳴きすると、兵士達が上空のカラスちゃんを見る。

 そして、その隙をつき、蜂さんが洞窟の中に入った。

 見事な連携プレイである。


「これぞ、人工知能のスキルです」


 AIちゃんがドヤ顔になった。


「そうか……しかし、何も見えんぞ」


 蜂さんの視界は真っ暗だ。


「迷宮が死んだら当然、例の灯りも消えるわけですね……」


 こりゃダメだわ。


「無理だ。一度、戻ろう。そこで皆と相談だな」

「わかりました」


 カラスちゃんと蜂さんに引き返らせると、宿屋に戻り、リアーヌを呼ぶ。

 そして、寮に戻り、5-2迷宮が死んだことを報告する。


「あそこがねー……ハァ……この前行ったばかりじゃないの」


 アニーが頬杖を突きながらため息をついた。


「地図が無駄になっちゃいました……せっかく描いたのに」


 AIちゃんが落ち込みながら地図を取り出す。

 まだ半分も描けていないが、相変わらず、綺麗な地図ができていた。


「すごっ! この子、天才じゃないの!」


 地図を見たメレルが称賛すると、AIちゃんがドヤ顔になった。

 こうやってすぐに切り替えができるのがAIちゃんの良いところ。

 調子に乗るという悪いところでもあるけど……


「メレル、迷宮が死んだらどうなるんだ?」

「何も。本当にただの洞窟になるだけ。魔物も出ないし、罠も消滅。当然、魔石も出ない」

「魔石以外のドロップ品は?」

「それも消滅ね。一説によると、壁の中にあるっていうのも言われてるけど、どうかな?」


 迷宮を殺すのは良質の魔石であるコアを得られるぐらいでメリットがなさすぎるわけだ。


「ユウマ様、子ギツネが描いた5-1迷宮の地図を早めに売った方が良くないですか?」


 リアーヌが提案してくる。


「5-1迷宮も消滅する可能性があると?」

「ないとは言い切れません」


 確かにな……

 そうなると、せっかくAIちゃんが描いた5-1迷宮の方の地図も無駄になってしまう。

 まだ5-2迷宮はちょっとしか描いていないが、5-1迷宮はすでに完成しているのだ。


「うーん……」


 さて、どうするか……

 だいたい予想はついているんだが……


「リアーヌ、今夜は空いてるか?」

「も、もちろんです!」


 勘違いしてないかな?

 顔が赤いし。


「ちょっと5-2迷宮だった洞窟の中を見たいから付き合ってくれ」

「あ、はい……お任せを」


 リアーヌのテンションが下がった……


「メレル、帰るのはちょっと待て。お前も付き合ってくれ」

「私も見に行くんですか? 構いませんが、魔族ですよ?」

「お前の隠蔽魔法を使いたいんだ。間違いなく、夜でも見張りはいるだろうし」


 さすがに調査はしないだろうが、野次馬や冒険者が入らないようにしているはずだ。


「まあ、そうでしょうね。世話になりましたし、そのくらいなら構いませんよ」


 メレルの隠蔽魔法なら確実だし、リアーヌの転移で帰れるから問題なく確認できるだろう。


「頼むわ」

「じゃあ、夜まで待機ですね」

「ああ」


 今さら5-1迷宮に行っても仕方がないし、今日はもう5-3迷宮に行く気にならないしな。

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