第236話 難しい問題
俺達は広場を出ると、看板を確認しながら5-5迷宮を目指す。
そして、5-1迷宮と同じような広場に出た。
しかし、先に迷宮らしき洞窟が見えるのだが、人っ子一人いなかった。
「誰もいないね……」
「…………なんか寂しい」
確かに寂しい。
人気がないんだろうか?
「AIちゃん、これは?」
「5-5迷宮は最難関です。挑む人が極端に少ないのでこういうありさまらしいですね。ですが、死んでいった高ランクも多く、かなりの質の良いアイテムをドロップすると言われております」
罠はタマちゃんが見分けられるし、魔物も俺の敵ではないだろう。
挑んでもいいのだが、まずは皆と相談かな。
「誰もいないんじゃ仕方がないな。ギルドに行って、換金して帰るか」
「そうだね」
「…………うん、ここはちょっと怖い」
ナタリアとアリスが頷いたので来た道を引き返すと、5番ギルドに向かって歩いていく。
すると、露天商の品物を見る見覚えのある青みがかかった黒髪の女が見えた。
「よう、ロザリア」
イルヴァのパーティーの子だ。
「あ……ユウマさん。それにナタリアさんとアリスさんでしたね。それとAIちゃん」
ロザリアは俺達のことを覚えていたようだ。
「こんにちはー」
「…………やっほー」
「どうもでーす」
3人も挨拶をする。
「迷宮ですか? 精が出ますね」
「お前らは休みだったな。今朝、イルヴァに会ったわ」
「あー……1人でした?」
ん?
「確かに1人だったが……何かあったか? ちょっと元気がなさそうに見えたんだが……」
「やっぱりですか……昨夜、ちょっと揉めましてね……」
揉め事か。
「仲が良さそうに見えたが?」
「そういうケンカみたいなことじゃないですよ。自分で言うのもあれですが、仲が良いパーティーだと思ってます」
ちょっと見ただけだが、そんな気はした。
「じゃあ、方向性の違いか?」
「まさしくです」
仲が良いならそうだろうな。
「聞いたらダメか?」
「いえ……別にマズいことではないですし、よくあることです。シーラとフェリシアが今回の遠征で引退したいって言いだしたんです」
シーラは赤髪の剣士でフェリシアが茶髪の魔法使いだったな。
「引退か……まだ若いだろ」
「どうでしょう? 2人共、もう25歳です」
25歳……衰えての引退じゃないな。
「結婚か……あの2人は彼氏持ちだろうしな」
「そんな感じです…………え? 知ってるんです?」
ロザリアが驚いた。
「そんな気がしただけだ」
「ひゅー! さすがはマスター! 女性にしか反応しないすんごい嗅覚!」
子ギツネ、うっさい。
「なんか怖いですね……」
ロザリアが若干、引いている。
「言っておくが、そんな気がしただけだぞ。わからないことも多い」
メレルとかわからないし、何ならロザリアもわからない。
イルヴァがいないのはわかるがな。
「そ、そうですか……ま、まあ、そういうことで2人が引退と言い出したんです。それでちょっと揉めたわけです」
「イルヴァは次の遠征のことを話してたからな……俺のせいか?」
そんな気がする。
「いえ、そんなことはないです。2人も話さないといけないけど、ずっと話せなかったって言ってました。いいきっかけでしょう」
そうか?
まだ迷宮に潜るんだろうし、ギスギスしたらマズいだろ。
「お前らって長いのか?」
「私は新参ですが、3人は子供の頃からの付き合いのようですね」
それは……
「イルヴァも納得できんわな。しかも、2対1の構図になってるが良くない」
きついわ。
「ですよね……一応、私はイルヴァさん側に立ったんですけど、空気でした」
パーティーの問題ではなく、幼なじみの友情問題だからな。
「話し合いは上手くいかなかったわけだな?」
「はい。ただ、あまりこういうことは言いたくありませんが、結論は出ているんですよ。あとはイルヴァさんが納得するかどうかです」
引退は止められんわな。
ましてや、危険な冒険者職だし。
「お前は納得してるのか?」
そう聞くと、ロザリアが首を横に振った。
「私もあのパーティーが好きでしたからこのまま続けたいと思っています。でも、シーラとフェリシアに幸せになってほしいとも思います。新参の私を快く受け入れてくれて、ずっと良くしてくれましたから」
ロザリアは納得してるな。
イルヴァのことがあるからはっきりと頷けないだけだ。
その証拠に言葉が過去形になってる。
「辛いな」
「ええ。そして、あなた方が羨ましく思えます。あなた方はたとえ、強制引退になってもずっと一緒で仲間のままでしょうし」
強制引退っていうのはやめてくれないかな?
「パーティーは解散か?」
「どうでしょう? 私はまだ引退しませんから2人で続けるかもしれませんし、イルヴァさんの心が折れるかもしれません。こればっかりは待ちです」
ロザリアが苦笑いを浮かべる。
「そうか……じゃあ、当分、休みだな」
「ですかね……なんかアドバイスありません? ユウマさんはこういう揉め事の解決が得意そうです」
別に得意じゃないけどな。
そもそも揉め事を行さないようにすべきなのだ。
「2対1の構図をやめさせろ。1人ずつ、ちゃんとイルヴァと話をさせた方が良いぞ。2対1は裏切られた感が増す。ちゃんと1人で自分の意思を伝え、希望を言え」
「なるほど……わかりました。2人にそう伝えてみます」
ロザリアが頷いた。
「じゃあ、頑張れ。お前もしこりが残らないようにしろよ」
「はい……そうします」
俺達はロザリアと別れると、ギルドに向かった。
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いつもお読み頂き、ありがとうございます。
私が連載している別作品である『左遷錬金術師の辺境暮らし』のコミカライズが連載開始となりました。
ぜひとも読んでいただければと思います。
https://kakuyomu.jp/users/syokichi/news/16818792438764608704
本作共々、よろしくお願いします!
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