第092話 森での仕事


 森の奥に来た俺達は各自の役割を行っていく。

 AIちゃんとリリーは狩りをしにどこかに行った。

 ナタリアとアニーは目の前で薬草を採取してる。

 俺とアリスはそんな2人を眺めながら周囲の状況を探っていた。


「…………どう? 魔物はいる?」


 魔力を探っていると、アリスが聞いてくる。


「いるな……」


 相変わらず、この森は変な魔力が多いため、探知しにくいが、集中すれば十分に探れる。


「…………ゴブリン? オーク?」

「オークはいないが、ゴブリンは多いな。それと知らないのもいる」

「…………知らないの? 強い?」

「いや、そこまでじゃない。ゴブリンとほぼ変わらん」


 ゴブリンより多少、魔力が強い程度だ。


「…………じゃあ、ウルフだ。狼だね」


 狼か……

 それはちょっと危ないな。


「リリーは大丈夫かねー?」

「…………大丈夫だよ。エルフであるリリーは森では強いから」


 まあ、長年パーティーを組んでいたアリスとナタリアの言葉を信じるか。


「しかし、大蜘蛛ちゃんがあれだけ倒したのにもうこんなにいるのか……」


 以前と変わらないくらいにはいる。


「…………ゴブリンは繁殖力が強いからね。それに逃げたのも多くいるでしょ」


 それでか。


「ということは森の奥には逃げたオークもいっぱいいるかもな」

「…………かもね。でも、王都からの調査隊が倒していると思うよ。じゃなきゃ、解禁にはならない」


 なるほどな。


「さて、アリス、ゴブリンが来たぞ」

「…………私がやる。ユウマは引き続き、そこの2人のお尻を見といて」


 確かにナタリアとアニーは四つん這いでこちらに尻を向けているが……


 俺がアリスの言葉に呆れていると、2人が同時に尻を手で抑えた。


「別に見てないぞ」


 そう言うと、ナタリアとアニーがこちら向きに体勢を変え、俺を見てくる。

 微妙に睨んでいる気もする。


「違うってのに……アリス」

「…………うん。ファイヤーアロー」


 アリスの名を呼ぶと、アリスが杖を掲げた。

 すると、いきなり草むらから飛び出してきたゴブリンに炎の矢が刺さる。

 ゴブリンは矢が刺さった胸を押さえるが、そのまま倒れ、動かなくなった。


「あ、私がやるよ」


 ナタリアは立ち上がると、息絶えたゴブリンのもとにいき、魔石を採取する。


「狛ちゃん、私の後ろにいて」


 アニーがそう言うと、狛ちゃんが言うことを聞かずに俺のことをじーっと見てくる。


「…………あるじに本当に隠していいのかを確認しているんだと思う」


 俺もそんな気がする。


「お前まで俺をそういう目で見るか……狛ちゃん、アニーの言う通りにしろ」


 そう言うと、狛ちゃんがアニーの後ろに回った。


「ユウマ、はい」


 ナタリアは魔石を俺に渡すと、採取に戻る。


「しかし、暇なのは東の遺跡と変わらんな」

「…………まあ、ゴブリンだしね。というか、暇じゃない方が嫌だよ」


 それもそうか……


「適当にやるか」

「…………それがいいよ。しりとりでもする? アニー」

「それはやめなさい」


 アニーが顔を上げると、アリスを睨んだ。


「…………じゃあ、リリー」

「自分の名前にしなさいよ」

「…………恥ずかしいじゃん」


 リリーはいいのか……


 俺達はその後も適当に話しながら採取をし、魔物を倒していった。

 そうこうしていると、昼ぐらいにAIちゃんとリリーが戻ってきたので昼食にする。

 昼食を食べ終えると、リリーも採取に加わり、午前中と同じように過ごしていった。


 そのままアリスやAIちゃんと話しながら魔物を狩っていると、急にAIちゃんが半妖化し、狐耳と尻尾を出す。


「…………AIちゃん、どうしたの?」


 アリスが聞くと、ナタリア達も顔を上げてAIちゃんに注目した。


「良い眺めじゃのう、ユウマ」


 AIちゃんが尻をこちらに向けているリリーを見ながら笑う。


「帰れ。AIちゃんを返せ」


 母上だろ。

 急に出てくるな。


「少し話があるだけじゃ……えーい、うるさい! 頭の中でしゃべるな! ういるすって何じゃい!」


 母上が一人でしゃべっている。

 まあ、呼んでもないのに乗っ取られたからAIちゃんが怒っているのだろう。


「ハァ……母上、何です?」

「用があるのはおぬしではないわ」


 んー?

 じゃあ、誰だよ。


「こいつらか?」

「お前の女共に興味はないわ。そいつらに用ができるのは子供を生んでからじゃ」


 あっそ。

 もう何も言うまい。


「じゃあ、誰だ……」


 そこまで言って、気付いた。

 わずかだが、妖気を感じる。


「んー? レイラか……」


 この妖気はあの蛇のものだ。


 なんであいつがここにいるんだろうと思っていると、草むらがガサガサと動き、中から予想通り、レイラが出てきた。

 レイラは体に蛇を巻いており、蛇はレイラの肩口でチロチロと舌を出しながら母上を見ている。


「あ、レイラさん」

「…………珍しい」

「どうしたんです?」

「私、何もドジってないですよ!?」


 レイラがこの場に現れると、四者が四様の反応をする。


「ジェフリーと区長に頼まれて森の様子を見ているだけだ。王都の調査隊は撤退したが、一応、要観察ってことだな」


 なるほど。

 Aランクに依頼したわけか。


「レイラ、蛇をしまってどっか行け」

「失礼なことを言うな、お前……私、クランリーダーだぞ」


 レイラがごもっともなことを言う。


「槐……貴様、何故ここにおる?」


 母上がレイラを睨んだ。

 正直、かわいいAIちゃんで睨まないでほしい。


「如月の性悪ギツネか。いや、それはこっちのセリフだ」


 レイラがまたしてもごもっともなことを言った。

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