第013話 ギルド


 俺達が歩いていると、とある建物の前に来た。


「これが冒険者ギルドだよ」


 ふーん……


「…………ギルド内での私闘は禁止だから気を付けて」


 禁止なのはギルド内だけらしい。


「わかった」

「じゃあ、行くね」


 ナタリアとアリスがギルドに入っていったので俺とAIちゃんも続く。


 ギルドの中に入ると、いくつかの丸テーブルが置いてあり、そこで仲間と何かを話す冒険者がいた。

 他にも右の壁に貼ってある何かの紙を見ている者達もいる。


 そんな中をナタリアとアリスが進んでいき、奥の受付に向かったため、俺達も後ろについていく。

 受付は3つあり、どこも見た目麗しい女性が座っていたが、2人は真ん中の金髪の女性の前に立った。


「ただいま、パメラさん」

「…………ただいま」


 2人が金髪の受付嬢に挨拶をする。

 どうやらパメラという名前らしい。


「おかえりなさい。どうでした?」


 パメラがニコッと笑い、確認をする。


「えーっと……」

「…………ナタリア、私が話す」


 嘘がつけそうにないナタリアが言い淀んでいると、嘘がつけそうなアリスが前に出た。


「どうかしたんですか?」

「…………たいしたことじゃない。まずだけど、依頼は無事に達成した。やっぱり前の被害者が出たところで襲ってきた」

「やはりですか……わかりました。すぐにギルド員を派遣します。報酬は確認が取れ次第、お支払いします。お疲れさまでした」


 どうやらギルドの者が確認に行くらしい。

 首を持って帰らなかったから変だと思ったが、そういう仕組みらしい。


「…………はい。それとだけど、迷子を連れて帰った」


 やっぱり迷子なんだ、俺達。


「迷子? 後ろの2人でしょうか? 1人は…………何かを描いてるようですけど」


 AIちゃんはずっと地図を描いている。


「…………小さい子は気にしないでいい。問題はこっちの人。どうやら異世界からの転生者らしい。しかも、昨日、転生したんだって」

「はい? 大人の方ですよね? 幼い顔立ちではありますが……」


 俺って、幼いかな?

 そんなことを言われたことがないんだが……


「…………20歳らしいよ」

「同い年……見えないなー…………え? 転生者では?」

「…………それがよくわからない。99歳の大往生だったらしいんだけど、20歳の姿で森の中にいたんだって」

「うーん……まあ、わかりました。聞いたことないですけど、そういうケースもあるのでしょう。少し、お話を伺ってもいいですかね?」


 パメラがチラッと俺を見た後にアリスに確認する。


「…………いいけど、気を付けてね。色々と……」


 その含みは何かな?


「色々? えーっと、言葉は通じるかしら?」


 パメラが俺を見て、確認してきた。


「通じているぞ。言語は問題ない」


 他がわからないけどな。


「それは良かったです。えーっと、異世界からの転生者ということでいいですかね?」

「そうだな。服装なんかを見ればわかると思うが、文化が全然、違って困っている」

「それは大変ですね。この2人とはどこで出会われたんです?」

「盗賊狩りを終えて休んでいるところだろうな。そこで話を聞いて、ここまで連れてきてもらった」


 話は合わせておかないとな。


「なるほど。えーっと、お名前は?」

「如月悠真だ。呼びづらいのはわかっているので名前の方のユウマでいい」

「あ、苗字が先なんですね」


 ん?


「違うのか?」

「私達は苗字が後に来ますね。例えばですが、私はパメラ・アストリーと言いますが、パメラが名前でアストリーが姓になります」


 この辺も違うんだな。


「わかった。覚えておこう」

「はい。えーっと、ユウマさんはこれからどうされるんですか?」

「さっきアリスが言ったように俺の前の人生は99歳の大往生だった。たいして記憶が残っているわけではないが、思い残したことはないはずだ。だから今回の人生では適当に生きようかと思っている。だが、来たばかりで着の身着のままだ。要は金がないんだよ。そういうわけでこいつらと同じように冒険者とやらになって金を稼ぎたい。話はそこからだな。このままでは今日も野宿だ」


 食料はどうにかなる。

 蛇でもネズミでも何でもいいし、川で魚を獲ってもいい。

 でも、さすがにそろそろ屋根のある部屋で寝たい。


「それは大変ですね。では、冒険者登録をしましょう…………あのー、登録料に金貨1枚が必要なんですけど」


 パメラが気まずそうに言ってくる。


「ナタリア、貸してくれ」

「うん」


 ナタリアは肩にかけてあるカバンに手を突っ込むと、小袋を取り出し、そこから俺に金貨1枚をくれた。


「感謝する。お礼に良いことを教えてやろう。明日は晴れだぞ」

「どうも…………」

「…………しょうもな」


 俺の天気占いは結構すごいんだぞ。


「はい、金貨1枚」


 俺は受付に受け取った金貨1枚を置く。


「確かに。では、こちらに必要事項をお書きください…………文字は書けますか?」


 どうだろ?


「AIちゃん、俺って文字は書けるのか?」

「書けますよー」


 AIちゃんが地図を描きながら答える。

 すると、ナタリアとアリスがAIちゃんが描いている紙を覗いた。


「すごっ」

「…………え? 何これ?」

「まだ途中ですから見ないでください」


 AIちゃんが紙を抱いて隠す。


「めっちゃ気になるなー……まあいいや。これに書けばいいんだな?」

「はい」


 俺は紙を見て、必要項目を書いていく。

 名前、年齢、性別から始まり、基本的な項目を書いていった。


「パメラ、得意分野って何を書けばいい?」

「そのまんまご自分の得意分野を書いてくだされば結構です」


 と言われても陰陽術と書いても通じないだろうな。


「魔法でいいか。あと剣術もそこそこできる。後は……占いと算術も得意だな」


 とりあえず、書いとけ。


「そのくらいで結構ですよ」


 俺が得意分野を埋めるくらいに書いていると、パメラが止めてくる。


「そうか?」

「写経と書かれても冒険者には意味のない技能ですし……」


 それもそうか。


「じゃあ、こんなもんだな」

「はい。では、お預かりします」


 パメラは書いた紙を読み込んでいった。

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