2章 - 01
城を出てから丸二日、ウィンタラルの街を囲むように我々は身を潜め、作戦決行の機会を待つ。
「フォース様」
「あぁ」
街を照らしていた明かりがゆっくりと光を失っていき、あたりは暗闇に包まれた。
城の警備のために灯されている光だけが残っている。
夜目の効く我々にはむしろ都合がよい、闇に身を潜められるだけでなく、的が自らの位置を教えてくれているのだから。
「よし、フェーズ1開始」
数分後、街の至る所から物音と女の叫び声が響き始める。
騒ぎは少しずつ大きくなり、誰もいなくなっていた街が人で溢れ、再び明かりが戻ってくる。
何事だ。と街の兵士が騒ぎに駆けつけてくる。
「そろそろだな、フェーズ2だ」
人間に化けて街の人ごみに紛れ込んだ数名の部下が、城の近くで魔獣達を放つ。
魔獣は真っ直ぐ城に駆けてゆき、警備兵と衝突した。
魔獣は何人も兵をなぎ倒すが、何十人もいる軍勢にあえなく敗北する。
「よかった、兵士様達がすべて倒してくれたのですね。ありがとうございます」
フード被った女が、魔獣の遺体を調べている警備長らしき男に声をかけた。
「あなたは、街に入ってきた獣の数を知っているのですか?」
「は、はい。私が見た時はまだ群れで行動していたので。羊飼いをしておりますので、数を数えることだけは得意なのです」
「そうか、貴重な情報をありがとう」
兵士長は城の方に戻りながら、部下に指示を出す。
「この騒ぎは終わった。念のため街を巡回するが、明かりはランプを持てばいいだろう」
歓声は今だ止まず、ざわめきを残して街の明かりも消えていく。
「今だ!フェーズ3。みんな慎重にな」
街の外で待機していた私は、部下と共に夜の空へと飛んだ。
闇は我らを隠し、人々の冷めぬ興奮が空を切る音をかき消す。
私は城の中庭に降り立つと、数歩前を歩いていた警備兵二人の背中に手を当て、魔法で心臓を拘束する。
二人は声にならぬ叫びを上げ、すぐに力つき、私にもたれかかる。
鎧が音を立てぬように地面に転がす。
「お…お前は…な、なん…」
不運にも城の裏口にいた一人に見つかってしまった。
が、私と目が合ったら最後。その者が次の行動を決めた頃には。
「わざわざそちらから招いてくれるとは」
お前を殺して、私は城の中だ。
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