24話 消える

ブンっ!

刀をおろすヒヨル

「図に乗るなよ…」


ダンパ

「おいっいいのか、こいつがどうなってもよぉ」


「私は知らない」


ぐっ

足に力をいれる


やめて!!


止めるリリア

「でもこのままではリリアが」

「いいの…」


「やってください!」

青年が叫ぶ

「リリア様!僕を殺してください」

「…もうこれ以上…人に…迷惑をかけたくないです」


それを見てニヤつくダンパ


ニコッ

笑顔のリリア

「大丈夫…心配しないで」

「迷惑なんかじゃない…あなたを助けるのは」

私のわがままだから



がん!

青年の頭を下に向けるダンパ


するっ

服を脱ぐリリア


隣で歯を食い締めるヒヨル

「申し訳ありません‥」

口からは血が垂れる


「へへっいいよ気にしないで」

ばさっ

ズボンを脱ぐ


「うぅ…すみませんリリア様」

泣く青年


ダンパ

「あぁいい!非常にいい!」

「穢れなき聖女のありのままの姿を初めて目にする!!」


パンツに手をかけるリリア



カン!


遠くから音がする


ダンパ

「ん!なんだ!」


刹那


ザシュ!

「ぬわぁぁぁぁあ!」

ダンパの腕が切れる


そこには刀を振り終えたヒヨル

「死ね」


ダンパはリリアがいないことに気づく

「どこいっ………」

ザァァン!!

え…………


ダンパの首が宙を舞う

目線の先には冷たい目のリリア



ドサッ 

ドサ

コロン

ダンパの首が転がる


「全部なんて脱ぐわけないでしょ」


ダダダ

ばさっ

リリアに服を押し付けるヒヨル

「うぇぇん」

「ごめんなさいリリアぁ」


頭を撫でるリリア

「いいって、大丈夫だから」


服を着るリリア

「それにこれで事件解決………てあれ?」

「さっきの人は?」


辺りを見渡す二人



何かを思い出すヒヨル

「そういえば………狼……」

リリア後ろ!


バサァ

「ガヴゥ!」


何者かの強襲に反応しリリアをかばう

どさぁぁ


地面に倒れ込む二人、見張り台の上から差し込む月光により照らされる


狼の姿


混乱するリリア

「なん…で、あいつは殺したはず」

ガウッ!


飛びかかる狼

ぐっ

刀を構えるヒヨル

「ふん!」



ギィィィィィィン!

刀と爪が混じり合う


ザン

ブゥン!


(こいつ…動きに一貫性がない)

ブン

ザァン!

規則性のない動きに翻弄されるヒヨル

フッ

ヒヨルの影から剣が見える

(もらった!)


ブシャ!


二振りの剣は狼のハラワタをえぐった

「合わせるよヒヨル!」


「はい!合わせ…………」




ドン



バァァァァァァァン!!!




え………


体調5mを超える狼がヒヨルを殴り飛ばした

飛ばされた方の壁には開いたはずの穴が塞がっていた


リリアは目を横に向けると



ダンパの死体は無くなっていた…



「おぉこれが……ははっいい気分だ」

「まぁ君の裸を見れればもっと気持ちいいんだけどなぁ」



「最っ低……」


ダンパ

「おい、お前はあっちの相手しろ」


狼は前屈みでヒヨルを追う



「まぁ生きてればだけどね」



構えるリリア

「これが結界…めんどくさい」


考えるダンパ

「こうなったら…どうしても裸が見たい…あっそうだ」

「殺してから見ればいいか」

ニチャ


ヒュン

一気に距離をつめるダンパ

「しねぇぇぇぇぇ!!」


ドン

ダァン

ダダダダダダ

拳の連撃


「こんなの…遅すぎ」

軽く剣で受け流す


「ふざけんな!」

ブン!

腕を振りリリアを掴もうとする

ガシっ!



ザァザァン!

「ギャァ!」


掴もうとした腕は切り刻まれる

タッ

ダダダ

地を蹴り壁を蹴る

斜め頭上からの斬撃


「ギヒァァ」


ダンパの両目は切られていた


「うぅ〜俺のめが…め…ウヒっ」


ダン!

キィン!

裏手を止めるリリア

「よく止めたねリリア」


タッタッタ

距離をとる

(しぶといゴミ…一気に決めよう)

シュン

剣を投げる


ザクッ

「どこ狙ってんだいリリア、僕はこっちだよ」

投げた剣は壁に刺さる


ザクっ

ザクザク

剣を出しては壁に刺す


「あんたこそ喋ってないできなよ……ブサイク」


ドンドンドン

地面を両手で叩くダンパ

「お前ぇこの美しいフォルムがわからないのかぁ!!」

「これは人間と魔獣の合成種、臨界天を超える代物だぞぉ!!!!」

……!

(いない!)

プシュー

血が出る

「だから喋っちゃ……………だめ」


ボトボト

ダンパの両腕が落ちる

「あぁぁぁぁぁぁぁぁあ!俺の腕ぇぇぇぇぇ」

がだばだばだばだ

動き回るダンパ


それに構わず剣を投げる


「リリア…はぁ……君のために…進化したよ」

ぎゅる

どぽぽぽ

ぢゅぷぷぷぷぷぷ

ダンパは腕を生やした四本も



「…それで最後でしょ?体内魔力がそこを尽きてる」


「最後違うな……これが完成だ!」

ウオォォォォォォォォ


雄叫びがこだまする



吹き飛ばされたヒヨル

「う……」

起き上がると噴水広場で転がっていた

「わた…しは……は!」


(あの時リリアが私に防御魔術を)

ヒヨルは自身の体を見てリリアの魔力を感じ取る

辺りを見渡す

「それにしても建物一つ壊れてない…これが」


ブン

刀を構えるヒヨル

道から獣が迫る

「あの場所から考えると…あれは」


ガウ!


キン

スン

ヒヨルは捌く

(殺してしまえばリリアの覚悟を無下にしてしまう)

一瞬の躊躇が隙を生む


ざくっ

「……ぐっ」


爪で腹を抉られた


「すまない!」


刀に魔力を込める

魔術{旋風せんぷう


刀に風がまとわる

「ふん!」


振り抜くと線上に斬撃が飛ぶ

「ガウ!」


狼の右足に直撃

動きが止まる


「くっ…戦いづらい」


ガァ…ウ…ガウ

狼はひどく荒い呼吸

だが目はこちらを捉えている


ヒヨルは呼びかける

「もう無理だ!これ以上やると君を殺してしまう」


無反応

すると!


アウゥゥゥゥゥゥ

遠吠えが聞こえる


ガウ……ガフッ…グラァァァァ!!

体は一回り大きくなり爪は鋭く、背中からは骨が剥き出している



構え直すヒヨル

「すまないリリア…殺した方が良さそうだ」


ダッ!

両者距離をつめる







「うるさいわよ、非常識」

急な大声に怒るリリア



「なぁに、気にしないでよ!」

ダッ

距離がつまる

「ここだ!」

下から爪を突き上げる

ヒュン


状態を後ろにそらしかわす

(浮いてる…いまだ)

「オラぁ!」

ぶんっ

後ろにリリアの気配

「そうくると思ったよ!」


ブン

三本目の腕を後方へ振りおろす

ザクッ

「私の事見たいならさ」

目を離さないでよ


「ごふぁ!」

ダンパは視線を前に下ろす

影に隠れ剣を突き立てるリリア


胸にひとつき


すん

顔を上げるリリア

!!!

その顔に恐怖するダンパ

満面の笑み

「これが私の魔術」



魔術{幻無げんむ



タッタッタ

ステップするように下がるリリア

「今私、過去最低くらい気分良いからさ」

「先に言っとくから許してね」






ごめんなさい







「うらぁ!」

二本の腕で掴もうとするダンパ

ヒュン

すり抜ける

「お前はぁ…俺のものに…なるんだよぉ!」


ダダダ!

ヒュン

4本の剛腕がリリア目掛けて襲い狂う

ガシャ!

スン

ダァガァン!!

シュン

現れては消え、現れては消える

「うらぁぁぁぁぁぁぁ」

四本の腕を大きく動かしリリアを追従する

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド

壁が破壊されては修繕される

風が吹き荒れる

カランカラン

壁から剥がれた剣が落ちていく


カタン

ダンパの後ろから音がする

ぬぅ!

振り返ると月光に照らされた天使のような少女が笑っていた

「どう?私が初めて作った技」




――――神出鬼没しんしゅつきぼつ――――




「あ……あぁ……こんなところで……」

うぁぁぁぁぁぁぁぁ

必死にリリアの所に走るダンパ




ボト

腕が落ち


バン

足が崩れ


ガダン

体が崩壊し




死に至る。



「切られた痛みは脳内にこだまする」



ボロボロボロォ

リリアの前に無数の残骸

「少し切りすぎたかな」

ふふ

ゴミを見る眼



「はやくヒヨルのところ行かなきゃ」

タッタッタ

いそぎ足で外へ出る

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