勇者が死んだ罪と罰

プロローグ 勇者の死

勇者が死んだ

その悲報は世界を震撼させた

約100年人間族を支配していた魔王

強大な魔獣、悪魔を従えしたがえ人間とはかけ離れた魔力を有する魔王を征伐した者の死は様々な思想を交錯させた


ある者は何かの陰謀に巻き込まれて死んだと言う

ある者は勇者が何者かに敗れ殺されたと言う

ある者は神に役目を全うし召喚されたと言う



勇者の死を受け、各国の王族は神聖な勇者の死を追求する事は今まで彼が行ってきた功績を踏みにじる行為として世界の禁忌とした



──それから10年の歳月が流れた──

ここは世界随一の軍事力を誇る国【アレスティア】

その王城内、王の間に通ずる道をただ全力で走る男が1人...

「はぁはぁはぁ……はやく王に知らさなければ!!」



バダン!

王室の扉が開かれた

「王よ!リリア様がリリア様が!!!」

男の目の前に座るあごひげをたずさえた王と呼ばれた老人が男を諭すさとすように

「落ち着け、グディアスよ お前が慌ててどうする」

「リリア様の教育係はお前であろう」


「……これはお見苦しい所を申し訳ありません」

男は服をただし、神妙な面持ちで再び言う

「リリア様が今朝、……出ていきました!」



王はやれやれとため息をつき

「本当に困ったものだな」

「リリア様がでていかれたという事は……」



男は視線を落としゆっくりと

「はい…」

「恐らく父君である勇者様の最期をお調べに行かれました」


「リリア様に課した課題は達成されたのか?」


男は頭を縦にふると王は強めの口調で

「勇者様のご息女を表立って城に監禁出来ない……」

「その代わりに勇者の課題という名目で行動を制限していた…この意味がわかるかね?」


男は額に汗をたらし

「わかっています…ですが私がだした課題は到底達成されることはないと思っていまし…た」



「では今の状況をどう説明する、娘は出ていき拘束理由も失った今の状況を…弁明はあるか?」

「これであの娘が真実に近づき世界が終焉に向かったらどう責任を取るのかな…グディアス・エルクノープ侯爵」



男は顔をあげ急ぎ

「でっでは私の騎士団が即刻身柄を拘束し、王城まで連れて参ります…」



「公衆の面前で勇者の娘を捉えるのか?もっとその有能な脳を使ってしゃべったらどうだ?」

王は立ち上がり男の元まで近づく

男の頭を掴み、目を睨みつけ

「もう死んで良い…あとは我々が始末する」



王は男を背に玉座に歩を進める


「ま‥待ってください、王よ!私はまだ…まだ私はぉぅ……」

男は自分の首を自分の両腕でちぎり息絶えた……

グシュ


コトン



「掃除するやつの気持ちも考えろよじいさん」

そこには片目に眼帯、長いコートに長剣を携えた青髪の大男が立っていた



「いたならお前が切ればよかろう、我もそんなゴミに使いたくなかったわ」



大男はため息をつき

「でどうする、どうやって捕まえるんだよ…まあ誰がいっても返り討ちに合うだろうがな」

「だから言ったんだ、生まれた時に殺すべきだったって…あんたもそう思うだろ?」

「今朝出て行った時、誰も出て行く姿を認識できなかったらしいぜ」



王は立ち上がり

「勇者様がお亡くなりになったのは娘が5歳の時…誰がこうなると予測できた?」

「まあ…様子を見るとしよう」


大男は呆れた口調で話す

「もしも…勇者の死について辿り着く事があったら…どう責任を取るんだじいさん」



「ハッハッハッ」


王は嘲笑し



「冗談は程々にしてくれ、娘一人で辿り着くほどあの男の死は簡単じゃない」

「我も目を背けたくなる程あいつの死には様々な思惑が複雑に絡まり過ぎている…」




大男は呆れたように

「フッ……それもそうだな」

「俺もあんな死に様だけはごめんだね」




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