「第二話」デート登校

「……」

「よっ、迎えに来たぜ」


いつも通りに玄関を出たら、昨日のヤンキーが立っていた。


「……なんで?」

「なんでって、お前あのチンピラ共に狙われてんだろ? 何があったか詳しく聞きたいし、何よりまた襲われないか心配なんだよ」


ありがたいけど、なんだか複雑である。一応真面目にやってきた私としては、事情があるとはいえ怜央(ヤンキー)と一緒に登校するというのは……いやまぁ、守ってくれるのもありがたいし、そうしてもらわなければもっと危険なだけなのだが。


私は渋々、怜央と一緒に登校することにした。


「ふぁーあ……にしても、杏子は早起きだな。俺、こんな時間に起きたことねぇよ」


暫く歩くと、怜央が呑気にあくびをした。よく見ると目の下にくまがあることから、寝不足であることが伺える。夜遅くまで何をしていたのかというのは、考えないことにした。


「まぁ、私は他の人と比べたら学校に来るのは早い方かな。誰もいない教室にポツン……ってこともザラにあるし」

「へーぇ、真面目なんだな。やっぱり」

「当たり前でしょ。そういう怜央くんこそ、一体何時に学校に来てるの?」

「ん? ああ……ちょっとな、色々あってな。実は学校行くの初めてなんだ」

「……え?」


やっぱり、そういうことなのだろうか? 学校にも行かず、家でダラダラしながら……不真面目で無意味な日々を過ごしている。想像するだけで、やはりこの男の頭の悪さが見えてくる気がした。まぁ、ヤンキーなんてそんなものなのかもしれないが。


「ちなみにお前と同じクラスだぞ?」

「え」

「あ? はぁ……お前、もしかしなくてもクラス全員の名前覚えてないだろ」

「……覚える価値なんかないから」


訝しげな顔をする怜央から目をそらし、私はそのまま歩いた。

何てことはない、いつもよりちょっと……足取りが重くて、いつも通り、憂鬱なだけである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る