とある異形少女と番い~碇草は蜘蛛の娘を包み込んだ~
求められるのは一番
親の愛などそこにはなく
求められるのは価値ある子ども
それだけの力はあったけれども
ひどく空しくて 空箱の子ども時代を捨てた
求められるのは力だけども
それは生き残るためであり
誰かの為に生きることであったから
今の生活は苦ではなかった
ただ
時折、寂しくはあった
「
いつも通り任務の確認をしていると、鷹野は上司に呼び止められた。
「なんでしょうか?」
「すまない、急な内容だがすぐにここに行ってくれ」
上司に渡された書類を受け取り目を通すと、とある山岳地帯とその洞窟の調査研究を行っている研究所のデータが渡された。
「潜入捜査ですか?」
「ああ、ここ最近その近辺で失踪事件が多発していてな、調べたところその山岳付近で行方不明になった民間人が目撃されている」
「なるほど」
「だが、そこは基本立ち入り禁止でな、そこの研究チームだけは特例で入れるそうだ」
「了解致しました。すぐ準備致します」
「すまないな」
上司を見送ると、鷹野は再度書類に目を通し始めた。
二週間後、鷹野は研究所に派遣の研究者として潜入し、チームに所属ができた。
そして、いよいよ明日目的の場所に行くことが決まった。
「鷹野さん!」
同じ研究チームの一人が声をかけてきた。
「これから町にでかけませんか? 明日から山の中にいることになりますし――」
「悪いな、だからこそ今日は遠慮したい。飲みに行くなら終わってからにしてくれ」
静かに断ると、その若い研究員はがっくりと落ち込んだ。
「やっぱりですか――いやね、
「――安登奈?」
「ええ、ほらこの間来た人ですよ! あそこにいる」
研究員が小声で、他の研究者と楽しげに話している少女のような見た目の若い研究者――安登奈を指さした。
「しかたない、今日は早く休みます……」
「それがいい」
とぼとぼと戻っていく研究員を見送ってから、再度安登奈に視線を向けた。
少女のように笑っていたが、他の研究員が居なくなり一人になると胸のポケットから棒つきの飴を取り出し、口に含んだ。
やがて表情は一変し、酷く寂しそうな顔つきになった。
「……!」
思わず、周囲にいる人間が誰もいなくなり、世界が彼女一人になっているような錯覚を感じた。
だが、その錯覚はすぐさま消えた。
安登奈は鷹野に気づき、彼に対してはにかむように笑ってそのままその場所から立ち去った。
今のは、何だ?
何だったんだ?
ほんの一瞬のことだったのに、鷹野は彼女が酷く気になった。
しかし、任務のことを再度認識し、もっていた資料に目を通し始めた。
山の情報と、調査予定の洞窟について目を通す。
「……」
明日からが正念場だ
翌日、荷物を確認している安登奈に視線を向ける。
調べたところ、彼女は様々な研究所を渡り歩いているとのことだった。
また経歴としても問題はなかったため、今回の件の容疑者からは外した。
ただ、重い荷物を小柄な体で持つ姿に、少しだけ罪悪感を感じた。
鷹野は安登奈に近づいた。
「――安登奈助手。そろそろ出発の時間だそうだ」
「あ、はい。解りました」
声をかけると同時に、彼女が持とうとしたバッグをいくつか手に取り方にかける。
「――他に荷物はあるか?」
「あ、いえ。有り難うございます」
「では先に行ってる」
鷹野はそういうと、荷物を抱えて安登奈の前を歩き始めた。
後ろからぱたぱたと小走りでついてくる音が聞こえる。
ちらりと後ろを見ればじっとこちらを見て少しだけ険しい表情をしていた。
「安登奈助手。荷物が重いのか?」
「え?! い、いえいえ!! 鷹野さん大丈夫です!! 私こうみえて力持ちなので!!」
安登奈はぱっと明るく笑うと、腕を振りながら大丈夫だといった。
「――あまり考え事ばかりしていると置いて行かれるぞ」
「は、はい!!」
やはり気になり、声をかけると彼女は歩く速度を上げて鷹野に追いついた。
「教授達は先にいっているそうだ」
「あちゃー……」
鷹野はそういって、やらかしたと言わんばかりの表情をしている安登奈を見る。
間近でみると、艶っぽい黒髪と――珍しい紫の目が気になった。
特に、紫の目に視線がいった。
別に、見たことがない訳ではない。
紫の目は珍しいが、鷹野は見たことがあった。
しかし、安登奈の紫の目は――
アメジストよりも、美しい紫の輝きをしていた。
嗚呼、綺麗な目だ
鷹野の視線に気がついたのか、安登奈が顔を上げた。
「……安登奈助手は、目の色が珍しいな」
「あはは、よく言われます。 紫の目って珍しいって……」
安登奈が困った様に笑っていた。
よく、言われるのか。
「――そうだな。そんな綺麗な紫色の目は初めて見た」
「……え?」
鷹野の言葉に、安登奈は目を丸くしていた。
まるで、信じられない言葉を聞いたような表情だった。
「だから、綺麗な色だと思ったんだ。そこまで綺麗な紫を、俺は初めて見た」
鷹野がそう言うと、安登奈の顔が一気に赤く染まった。
……照れてるのか?
だがこんなに照れて赤くなるのは初めてみたぞ
もしかして疲れたのか?
「……本当に大丈夫か? 疲れたなら少し休むか?」
「いえいえー! 大丈夫です私は元気です問題ありませぬ!!」
顔を真っ赤にし、声をうわずらせて言う安登奈が、鷹野には酷く不思議な存在に見えた。
「……ならいいんだが」
「あ、あははー……」
苦笑する安登奈から一端視線をそらし、再度彼女に視線を向けた。
自分の目元に触れていた。
表情は酷く困惑しているように見えた。
紫の目が青い輝きに揺れる。
紫色のサファイアでもこのような色合いにはなりはしないし、紫色と青の宝石を重ねたとしても決してこうはならないだろう。
――こんな色もするのか、こんな表情もするのか
「――安登奈助手。本当に大丈夫なのか?」
しかし、こうも注意散漫だと調査中に触られかねないと不安になり、言葉をかけた。
「は、はい?! だ、大丈夫ですよ!!」
安登奈が笑いながら答えるので、鷹野の口から思わずため息が零れた。
その後、似たようなやりとりが先に移動したチームと合流するまで続いた。
その間、鷹野は時折見せる安登奈の表情と、ふと輝きを変える目が気になった。
困惑すると青く染まり
照れると薔薇の様な桃色に
気分が沈むとやや暗く
宝石の目を持つ存在がいるというお伽話をどこかで聞いたが、それが安登奈じゃないのかと思えてしまう程だった。
そして聞いてみた。
「安登奈助手、一つ聞いていいか?」
「は、はい?!」
「俺は綺麗な目だと思ったのだが、今までそう言われたことがないのか?」
「あ、あはは……そう、ですね。言われたことは、ない、ですね。珍しいはありますけど……不気味ってよく言われますね……」
安登奈は困ったように笑った。
彼女の目の色が、少し悲しげに青く揺れる。
鷹野は、彼女は自分の目について理解しているのが解った。
だが何故この「綺麗な目」が不気味と言われるのか理解出来なかった。
ただ、その目もまた安登奈が時折見せる寂しげな表情と関わりがあるのだろうと、予測はできた。
合流後、先に軽く調査していた教授達から洞窟内に無許可で侵入した人物がいると聞かされ、鷹野は内心舌打ちをした。
失敗したな、下手すると誘拐犯達が逃げるかヤケを起こすぞこれは
警察を呼んだという話に反論すると、立場が危うくなる為内心黙っていることを選択肢、荷物確認している安登奈にこのことを伝えることにした。
「安登奈助手」
手を止めていた安登奈に声をかけた。
「んぐ?!」
安登奈は何かを食べていたらしく、口をもぐもぐと動かしながら、手で少し待つように鷹野に訴えた。
ガリガリと硬い何かを砕いた音が聞こえ、安登奈は何かを飲み込んだ。
「……悪い」
タイミングがどう見ても悪かったのが理解出来たため、素直に謝罪する。
「い、いえいえ。お気になさらず……ところでどうしたんですか??」
「ああ、先に軽く内部調査したら立ち入り禁止区域に足跡がのこってたそうだ。それを教授が役所に連絡したところ、警察が来ることになったそうだ」
鷹野がそういうと、安登奈は少しびっくりしたような顔をした。
「もしかして警察の方と一緒に調査することに?」
「そうだ。だから出発はもう少し遅くなりそうだ」
「解りました」
安登奈は穏やかに微笑んでから、鞄から飴を再度取り出し口に放り込んでいた。
ああ、先ほど食べていたのはそれか
ガリガリと噛んでいることから、何か苛立っているのか、それとも緊張をほぐそうとしているのが考えられた。
鷹野は現状では後者をとった。
「安登奈助手、本当に大丈夫か?」
「え?! だ、大丈夫ですよ??」
心配になり声をかけると、安登奈は驚きながらも明るく返した。
「そうか」
何となく無理しているように思えたので、少し不満げな声色で言う。
鷹野はふと、歩きっぱなしで水分補給を怠っていたことを思い出し、クーラーボックスを開けてスポーツドリンクを取り出した。
「安登奈助手も飲むか? 水分補給は大事だろう?」
「……あ、じゃあお水で」
「水のでいいのか?」
「ええ、タブレットもあるので」
「解った」
鷹野は安登奈の手が水で濡れないように、タオルでペットボトルを拭き取ってから彼女に渡した。
「有り難うございます」
安登奈は受け取ると、ペットボトルの蓋を取り水を口にした。
そして何かに気づいたのか、安登奈が鷹野を見た。
「あ、鷹野さんも少し休んだほうがいいですよ? そこに折りたたみ式の椅子がありますし……」
「ああ、悪いな」
安登奈の助言に従い、鷹野は折りたたみ式の椅子を広げて、腰をかけた。
手にしていたペットボトル中の液体を口にする。
やや居心地悪そうにする安登奈の様子を見ながら、鷹野は警察の到着を待った。
警察到着後、検証しながら調査することになった。
本来は珍しいことだが、教授が此処の洞窟調査では有名だったらしくそうなった。
鷹野は少し前を歩きながら、後ろを歩く安登奈を気にかけた。
表情はなんともないが、違和感を感じた。
何かに警戒しているような、そんな雰囲気を放っているのを感じた。
それに他の研究員と警察が気づいていないことが解った。
そして突如、耳を痛めたかのように耳を押さえた。
安登奈が耳を押さえた直後洞窟内が大きく揺れた。
バキバキと大きな亀裂が走り、安登奈だけが隔離されるような状態で地面が、割れた。
血の気が引いた。
奴等、彼女が狙いか?
なら、何としてでも彼女だけは守らなければ
「安登奈!!」
鷹野は一部の荷物を捨てて、安登奈の腕を掴み抱き寄せた。
そして何とか地面を掴み這い上がろうとしたが、再度大きく洞窟が揺れ、その地面も一気に崩れ二人の体は落下していった。
鷹野は何とか安登奈を守ろうと、彼女を守るように抱き込んだ。
直後、何か弾力性のある布のようなものに何度かぶつかり、そのまま地面に落下する。
が、不自然にとがった岩が運悪く頭部に直撃し、ヘルメットが砕けた。
頭部への衝撃に、ふっと鷹野の意識が暗転した。
黒い人影が泣いている
それは紫色の綺麗な目をしていた
『ひとりはいや ひとりはいや……』
周りには誰もいない
それは泣いている
少女の声で泣いている
『ひとりぼっちはいや……』
哀れに思い、手を伸ばした――
手が届く前に、鷹野の意識が覚醒した。
視界が非常に狭いが、目を開けるのも辛いため仕方ないと諦めた。
わずかな視野で横をみれば、自分が安登奈に背負わせているのが理解できた。
俺と一緒に逃げようと、しているのか?
だめだ、足手まといになる
「……安登奈、助手?」
声をかけると、安登奈は驚きの表情を浮かべたが直ぐに安心したように破顔した。
「た、鷹野さん!? よかった……えっと無事だったんですけど、鷹野さんが怪我をしてて……治療はできたんですが、ここにずっといるとまた地震がきそうでその」
いけない、だめだ
「――先に逃げろ。ここは、危険だ」
安登奈の言葉を遮り、途切れ途切れになりながらも言葉を口にする。
「……すまない、俺はここの調査員じゃない。ここで起きた行方不明者の救助と誘拐した組織の壊滅の為にきた」
安登奈は驚愕の表情を浮かべていた。
「安登奈助手、早く逃げろ」
せめて、君、だけでも
「――いえ、一緒に行きましょう。第一怪我人放置して逃亡できるような思考回路をもってません」
安登奈はきっぱりと鷹野の言葉を拒否し、鷹野を肩で背負うようにして、移動を始める。
「少し休んで下さい。一緒に脱出しましょう」
「……悪い、な」
再度襲ってきた痛みに、鷹野は再び意識を手放した。
先ほどの影が泣いている
紫の目から涙をこぼしている
手を伸ばそうとした
手が動かない
近づこうとした
足が動かない
動け
動け
動け!!
意識が再度浮上する。
自分は地面に横たえられていた、
目の前には安登奈が立っている。
紫の目に、緋色の炎を宿しながら怒りを顕わにして。
よく見えないが更になにかいるのは解った。
自分の知覚には、蛇や蜘蛛がいるが攻撃する様子はない、なにか守るように自分に寄り添っている。
いま、どういう状況だ?
『お前とて我らと同じではないか!! これらは皆餌よ、餌。お前のそれとてそうだろう??』
聞いた事のない声が耳を刺激する、正直気分が悪くなる声だった。
「――ふざけるな小蜘蛛が。食い散らかし、蹂躙するしか頭にないロクデナシめ」
安登奈が今までにない程怒りに染まった声をそれに向ける。
蓮の額に無数の目が出現するのがはっきりと見えた。
それはまるで、まるで蜘蛛のようだった。
彼女の目が更に深い紫に、緋色の光を宿した紫に変貌する。
――ああ、綺麗だ
場違いなのは解っているが、そう思わってしまっていた。
蜘蛛の足が安登奈のいる地点をえぐるが、既に彼女はその場から離れていた。
びきびきと彼女の体がひび割れる。
背中から蜘蛛の足に似た何かが出現する。
ぐちゃぐちゃと気持ちの悪い音を立てながら――安登奈は巨大な蜘蛛へと変貌した。
信じられない光景のはずだった。
でも、鷹野には酷くそれが納得できた。
そうか、あんなに美しい目をしてて「人間」なはずがない
あんなに、優しすぎて「人を食い荒らす化け物」のはずがない
なんて、綺麗な紫の目の、蜘蛛、なんだろう
蜘蛛へと変貌した安登奈を確認すると、鷹野は再び意識を失った。
蜘蛛が泣いている
紫の目をした蜘蛛が泣いている
楽しそうな人影を見て泣いている
鷹野は近づいて、目から涙をぬぐってやる
蜘蛛は鷹野を確認すると嬉しそうな色に目を染めた
しかし、直ぐに怯えの色に目を染めて逃げてしまった
目を覚ますと、視界に入ってきたのは病院の白い天井だった。
自分が病院に運ばれたのを理解した。
起き上がり、周囲を確認すると個室だと理解出来た。
花瓶には薄紫の小さな花が入っていた。
誰がこれをおいていった?
首をかしげる。
その後、教授や医師、警察などからの会話から「誘拐事件」は解決したことを理解した。
しかし、そこに安登奈の姿はなかった。
自分の本当の組織と連絡を取り、無事に終わったことを連絡し息をつく。
教授の話から、安登奈は責任を感じて止めてしまったと聞かされた。
が、あのことからソレが嘘であることを理解する。
また、今回の「誘拐事件」を解決したのは安登奈であることが解った。
上司には報告しなかったが、それに後悔はなかった。
あるとすれば、今彼女に会えない事だけだった。
ベッドの上でため息をつく。
その時――
「マイシスター!? げんきですかー!!」
見慣れない少女がいきなり病室に入ってきた。
予定のない訪問に、思わず鷹野はあっけにとられ呆然とする。
「……あれぇ? 蓮ちゃんどこですかー?? おねーちゃんが入院したってきいて遊びにきましたよー?」
ブレザー姿の少女の言葉に、該当者を探す。
一人だけいたが、入ってきた少女と外見を照らし合わせると、どうもおかしい。
だが、もしかしたらと思い口にする。
「――君が行っている蓮、とは『安登奈 蓮』のことか?」
少女はにんまりとわらって親指を立てた。
「いえーす! ざっつらーいと!!」
少女の言葉に思わずぽかーんとなる。
それもそのはず。
安登奈とその少女、全くもって似ていないのだ。
容姿も、口調も、雰囲気も、何一つ一致する箇所がない。
「……失礼だが、本当に安登奈さんのご家族ですかな? 悪いですが彼女は入院しておりません、検査入院もしてません」
「あ! あのこ嘘ついたのー! ひっどーい!!」
大げさに言う少女の言葉が何処まで本当か嘘か分からなかった。
全てが嘘に聞こえるし、本当にも聞こえる酷く奇妙な印象を感じたのだ。
「まったく、あの子『検査入院』ついでに知り合いの見舞いに行ってくるったから花を少し分けてあげたのにー」
「花?」
「そうそう……あ! 貴方だったのね!!」
少女はぱたぱたと花瓶に近づき、花を見る。
「ねぇねぇ、貴方蓮とどんな関係? もしかして恋仲だった? 喧嘩別れかなんかした?」
思わず、飲んでいた水をぶっと吹き出し、むせた。
「……ただの、仕事仲間です」
嘘は言わずに伝えると、少女は不思議そうに首をかしげる。
「おかしいわねぇ、あの子人に花を渡す時花言葉は念入りに調べる子だから」
少女は先ほどの口調とは打って変わって、落ち着いた女性の口調になる。
「花、言葉」
「ええ、そうよ」
少女はにこりと花のような笑みを見せる。
「この花はシオンっていうの。そして花言葉はね」
「『あなたを忘れない』――」
なんだそれは
ふざけるな
話をさせろ、もう一度
いやもう一度なんて言わない
何度だって話をしたい
「すみません、お邪魔致しました」
少女はにっこりと笑いながらその場を去って行った。
鷹野は念のため看護師に花瓶のことを尋ねた。
そして、花瓶の花は安登奈が持ってきたという事実を、再度確認することとなった。
一週間後、鷹野は病院を退院し、その足でとある探偵事務所を訪れた。
仕事で何度か協力したことのある探偵がいる事務所だ。
事務所前には、全身黒服の人物が立っていた。
「今回は私用とのことだ、事務所ではなく私の家で話そう。そちらの方が都合が良い」
「助かる」
その人物に促され、事務所横の建築物に入っていく。
広めのリビングに通され、椅子に腰をかけるように言われた。
椅子に腰をかけると、珈琲をだされた。
「以前と同じものだが、いいか?」
「ああ」
鷹野はカップに口を付けた。
探偵は彼の正面の椅子に腰をかけた。
「――今回は鷹野康陽個人の依頼、でいいのか?」
「ああ、異形に様々な意味で詳しい貴方――平坂零でなくてはどうしても頼めないことだ」
探偵――零は紅茶の入ったカップに口を付けてから、静かに鷹野を見た。
「それで康陽。何が知りたい、私が知っている範囲でいいなら答えるぞ」
「――安登奈蓮という存在について教えてくれ」
鷹野がそういうと、零は静かに息を吐いた。
「それなら彼女に聞くのがいいだろう」
「彼女?」
鷹野が首をかしげると――
「いえーす! お呼びになったかな零ちゃん!!」
思わず目を丸くし、ぎょっとする。
そこには、病院であった正体不明の少女がいたのだ。
何故かメイド服で。
「……フエ、いつの間に着替えた?」
「だって探偵さんの助手っぽいことだからメイド服がいいかなーって!」
「お前の恋人にうだうだ文句言われそうだから着替えてこい」
「ちぇー」
少女――フエはぷりぷりと怒りながら部屋を出てくると10秒にも満たない時間でワンピース姿に着替え、戻ってきた。
零の隣に座り、オレンジジュースを口にする。
「……零、彼女は一体?」
鷹野は、何とか停止した思考を再稼働させ、言葉を搾りだす。
「ああ、一度は聞いた事はあるだろう『異形の子』と呼ばれる存在の一人だ」
――異形の子、それは異形と呼ばれる人外の存在と、人の間に生まれた子を示す言葉だ
「……つまり――」
「所属的にはお前が探している安登奈蓮も『異形の子』に属している」
「正確にはちょっと違うけどねー」
からからと笑いながら、フエが口を開く。
「私達、大体は親の片方が異形でもう片方が人なんだけど、蓮はちょっと違うのよー」
「違う?」
「うん、蓮の基礎となる親は両方とも人、ただし父親が魔術師とかそういう類の血筋なの」
フエは花のような笑顔のまま続けた。
「その父親がクソみたいな奴でねー、一般人のお母さんレイプして蓮を孕ませたのよ」
フエの言葉に、鷹野の表情が強ばる。
「で、お母さんはまぁ色々あって生むことにしたんだけど、とある異形の蜘蛛に噛まれてしまったのよ。そいつ噛んだ相手を自分の同胞にしちゃう毒もってるのよねー」
異形の、蜘蛛
「その毒、お母さんじゃなくて全部蓮にいっちゃたのよ。そしたら蓮が異形になるはずだんだけど父親の血がそれに強い抵抗力もってた結果完全に異形にはならーず、あの子は異形化するけど中身は人に近い私達とは別もんになっちゃったわけ」
フエは続ける。
「お母さんも毒がたまらなかったとはいえ、噛まれたとか色々あった結果、精神が病むし肉体は人間とはちょっと異なる存在なってしまった」
声が静かになっていく。
「お母さんは蓮の事を娘と認識できない、娘が死んでしまったと思っている。死なせてしまったから自分は罰でこうして生き続けているのだと」
まってくれ、じゃあ彼女は――
「彼女はそれを理解して、娘と言わない。父親と、異形は殺した、自分の人生を母親の人生を台無しにした存在を皆殺しにした」
フエは無表情のまま、坦々と続けた。
「あの子は私達とは違う、異形の子ではなく、異形の『なりそこない』。近しくて遠い、決して私達にはなり得ない存在、私達も彼女のようにはなり得ない」
ふふっと穏やかに笑っているが、どこか憂いを帯びた表情でフエは続けた。
「異形としての要素は多いのに、精神は人間に近いから私達以上に苦しむ。母親を見てきたから番は作られない。傍に居て欲しいのに、自分と他者との違いを目にするのが怖いから離れる」
「哀れな子でしょう? 私の可愛い『妹』なの」
鷹野は、何故此処までフエが喋っているのか理解できた。
お前にその覚悟があるのかと
興味本意なら止めろと
あの子を絶望させないでくれと
そういう意図で、あえて情報を渡してきているのだと。
鷹野の脳裏にあの意識がないときの『夢』がよぎる。
泣いている紫の目の少女と蜘蛛
間違いなく、蓮だ
触れた途端に逃げ出した
拒絶が怖いから、自分の所為で今までの人生を台無しにするのが怖いから
蜘蛛は、彼女は逃げ出したのか
「――解った。 蓮は何処にいる?」
知るか、そんなたいした事で俺から離れようとする
誰が絶望するか、失望するか
蜘蛛の巣にかかった餌というなら笑えばいい
餌になる覚悟もできている
鷹野の言葉に、零がふーっと息を吐いた。
「――フエ、解っていると思うが。こいつは『魅入られている』の言葉で済ませるには不十分なレベルだぞ」
「うん、解ってる」
フエがオレンジジュースを飲む。
「じゃあ下世話的になる覚悟も聞いとくよ?」
「性交渉か?」
「直球だな、おい」
鷹野の言葉に、零がやや呆れたようにいう。
「まぁそうだね。あの子性質が酷くアンバランスだから両方満たさないといけなくなるよ」
「フエ、頼むからもう少し解りやすくいってくれ」
「えーと、突っ込むのと突っ込まれるの? 受けと攻め?」
ド直球だな
フエの言葉に、鷹野は思わず遠い目をする。
「いやね、私達は基本どっちかが満たされれば問題ないんだけど、あの子私らと違うから両方満たさないとフラストレーション給ってそのうち自己嫌悪起こすから。まぁ、今までも両方経験あるけど、お前は素人童貞か生娘かー!って言いたくなるレベルでまともにできねーから」
おい、誰だその相手は
「ちなみに相手は基本私と此奴だ」
「あ、ちなみに突っ込むのは私で、突っ込まれるのが零さんね」
お前らか
フエと零の無遠慮すぎる台詞に、若干意識が飛びそうになる。
「番になるって場合は、どうやっても両方やるハメになるよ」
フエはからからと笑う。
「――お兄さん多分経験ありそうだけど、流石にそっちは経験なさそうだから覚悟しとくといいよー」
「まぁ、単純に尻使うハメになるからガンバレ、ということだ」
お前ら最低だな
白い目を向けながら、何も言わない鷹野に、フエはにんまりと笑って続ける。
「でね、ここからが重要。異形の番になったらお兄さんはもう年とかとらなくなるし、あの子が死んだらお兄さんも一緒に死ぬことになるの」
フエはにっこりと笑う。
「あ、でもお兄さんが死んでも蓮はしなないよ? でもしばらく精神面がやられるから下手すれば死ぬことになるからそこは注意ね。ほぼ運命共同体と思ってね」
なるほど、確かに『ほぼ』運命共同体だ
鷹野はくすりと笑った。
「それでもいいなら協力するよ?」
「協力?」
フエの言葉に、鷹野は怪訝そうな顔をする。
「そう、蓮ねーこの間の任務が終わってからやたらと暗くなったり、何か思い出して真っ赤になったり『お前何処の恋する乙女だよ』ってツッコミ入れたくなる行動ばっかりするのよ」
フエはにんまりと意地悪そうに笑う。
「それでね思わず『鷹野って人かっこいいよねー、今度お話してみたいなー』っていったらすごい怒って赤くしたり紫にしたり可愛かったよー」
零はその言葉に、くすりと笑って鷹野を見た。
鷹野は目を丸くし、あっけにとられたが、そのあと肩をふるわせて笑い始めた。
そうか、そういう状態だったのに
俺から逃げたのか彼奴は!!
何が何でも捕まえてやると心に決めると、フエを見据えていった。
「では、俺はどうすればいい?」
「そうねぇ、散々此処まで迷惑かけたから少しからかっちゃいましょうあと――」
フエは何かを思いだしたように手を叩いた。
「そうだ! お兄さん、もしあの子と一緒になりたいなら今の仕事は辞めてくれる? 今すぐじゃなくていいから」
「わかった」
フエの頼みに、鷹野は即答した。
当然だ、傍にいるつもりなのにいれない仕事など不要だ
「じゃあ作戦会議といきましょうか!!」
楽しそうなフエの言葉に、内心不安になりながらも、鷹野は蓮と会える事への期待が隠せなかった。
作戦決行までの数ヶ月間、フエから横流しされた情報を元に蓮が潜入する予定の場所に仕事として潜り込んでは彼女に接触しつづけた。
「安登奈、何故逃げる」
「な、なんでもありません!!」
「――だから私は異形なの!!」
「そんなこと――おい、耳をふさぐな逃げるな俺の話を聞け!!」
蓮は予想通り、鷹野から逃げ続けた。
予想通りすぎて腹が立つな
鷹野はそう考えつつも、口には出さず作戦決行の日まで少しだけ愉快な日々を過ごした。
作戦決行の一週間前、上司には諸事情にて組織を抜ける旨を伝えた。
なんとなく想像がついていた上司は、あっさりと彼の離脱を認めた。
作戦決行日、鷹野はフエから貰ったとある店に行く為の認可証を持ち店へと向かった。
認可証を持ち、場所に立つと扉が現れた。
鷹野はゆっくりと扉をあけると、中は綺麗なカフェだった。
中に入ると、うつむいた顔の少女――蓮と、ソレをニヤニヤ笑いながら指さすフエ、無表情で指さす零がいた。
気づかない蓮に近づくと、蓮は涙をにじませていた。
用意していたハンカチを彼女に差し出した。
「使え」
蓮は何も言わず受け取り、顔を覆った。
数秒後、彼女は恐る恐る顔をあげて鷹野を見る。
「え゛」
この上ない間抜け面をした蓮を見て、フエがカウンターをばんばんと叩きながら笑い出した。
「どうした、今までに無いくらい間抜けな顔をして」
今までの鬱憤を晴らすかのように、鷹野はこれでもかという位意地悪そうな顔をしてニヤリと笑った。
「鷹野さんんんん?!?!」
蓮はだらだらと冷や汗をかきはじめた。
鷹野は、そんな彼女の正面の椅子に腰を下ろした。
「お客様、何に致しますか?」
店主はこの状況に動じず、穏やかに尋ねてきた。
「珈琲を」
「畏まりました」
珈琲がくるまでの間、鷹野はじっと、目の前で萎縮している蓮を見た。
「お客様、どうぞ」
「有り難う」
鷹野は出されたカップに口をつけ、珈琲を飲む。
「美味いな」
「……あ、あの何のようでございますでしょうか?」
「お前はそういうキャラだったのか?」
蓮はだらだらと冷や汗を流しながら、視線を逸らしている。
「いやだから何のよう」
「お前、あのあと他の『仕事』で遭遇してもやけに俺を避けてくれたな」
ぎくり、と音がなりそうな位蓮の体が硬直した。
「いやだって」
「こっちからすると事情をしってるから少しは話しやすいと思ったのに、お前は避けてばかり」
蓮の言葉を遮りながら鷹野は続ける。
「しかもお前は自分から『異形なんだと』わめいて俺の言葉も聞かずに逃亡」
鷹野の言葉に、フエは更に腹を抱えて笑い出していた。
「そんなの知るかといえば耳をふさぐわ、逃亡するわ」
鷹野がじろりと鋭い視線を蓮に向ける。
「はっきり言ってくれ、俺はこういう男だ。言ってくれないと納得できない。近寄るな、とただ一言だけでいい」
鷹野は蓮をじっと見つめた。
蓮は冷や汗を流しながら視線を彷徨わせている。
何かを呟こうとしているのはわかった。
さぁ、言え。
俺はお前が言える言葉は予想できている。
「言えるか馬鹿ぁあああああ!!」
蓮が声を張り上げて立ち上がり、テーブルを叩く。
「何で好きになった奴にいわなきゃいけ……」
最後まで言う前に、蓮の顔が真っ赤に染まった。
其れを見てフエはまた笑い転げていた、女店主はあらあらと楽しそうに笑っている。
鷹野はニヤリと笑う。
予想通りのお言葉、ありがとう
そして逃がさん
「言質、とったぞ」
蓮は更に真っ赤になり、鞄から一万円を取り出しテーブルにおくと、店を飛び出した。
飛び出すことも予測していた鷹野は、同じく一万円をテーブルにおいて店を飛び出た。
「あーはっはっはっは!! 最高!! なにこれ面白い!!」
ひーひーっとフエは店内で笑い転げていた。
「正直あっけにとられるくらい予想通りだったな」
零は紅茶を口にしながら静かに述べる。
「ちょっと蓮ちゃんがかわいそうだったわねぇ」
店主が困った様に微笑みながら二人に言う。
「いやいや、今まで散々アレだったんだからこれくらいいいですよー! あーおもしろかった!!」
「お前は笑いすぎだ、後で痛い目みてもしらんぞ」
笑い転げるフエをみて、零は静かに苦言を呈した。
「逃げるな!!」
「うるせーばかー!!」
蓮は鷹野の言葉に、半ばやけになって返していた。
誰も居ない公園に二人の声が響く。
「だから私は異形だっつてんだろうが!!」
「それがどうした!!」
本当にそれがどうした、とっくに知っている
「人間は人間らしく普通に人生おくればいいんだよ!!」
「それはお前の押しつけだ勝手に決めるな!!」
そんなお節介などいらん
「私はまだぼっちでいいんだよ!! 番なんぞいらんわ!!」
「半世紀近く一人身で寂しいと兄弟にぼやいていた奴が何いっている!!」
「誰から聞きやがった!!」
お前の色々と酷い『姉』からだ
ぎゃーぎゃーと、叫びに近い言葉の応酬が続くが、距離は縮まることはなかった。
鷹野は舌打ちし、このままでは逃げられることを予想する。
卑怯だが、仕方あるまい
頭を押さえうめき声をあげる、そして鷹野はその場に倒れた。
「鷹野さん?!」
蓮は倒れた鷹野を視認すると、狼狽えそして駆け寄って抱き起こそうと手を伸ばした。
かかったな
鷹野は蓮の腕を掴んでニヤリと笑う。
「漸く捕まえたぞ」
蓮は自分がはめられた事に気づいた。
「ひ、卑怯だ――!! それでも人類守る組織の一員なのか――?!」
「ああ、それか」
顔を真っ赤にして怒る蓮を押さえながら鷹野はどうでもよさそうに言う。
「やめた」
蓮が固まった。
それを見て、鷹野は呆れたような息をついた。
「お前の傍にいたいのに、共同で仕事できる保証がない仕事についていても仕方ないだろう」
「いや、だから私異形」
「知ってる」
静かにそう返せば、蓮は目を逸らした。
「……そもそも異形の番」
「番になったら年もとらない、運命共同体だろう。知ってる」
鷹野は普段通りの坦々とした口調で続けた。
蓮は困惑したまま口をひらく、早く諦めてほしいように見えた。
「私人間の姿してるけど――」
「ああ、綺麗な紫の目をした、蜘蛛だろう。知ってる」
鷹野が穏やかに返すと、蓮の顔が青ざめた。
ああ知っている。
紫の目を持つ、泣き虫の蜘蛛
そうだろう?
「――最初会った時、あの時な不定期だは意識が時々戻っていてその時に、ちょうどよくな」
穏やかに言う鷹野を、信じられないものを見る目で蓮は見つめた。
「……最悪だ」
蓮の目からぼろぼろと涙が零れる。
鷹野は何も言わず、またハンカチをだして彼女に渡す。
「……ほんと、何枚もってるのよ」
蓮はハンカチを受け取ると、泣きながら笑い出した。
「泣き虫には、必要だろう、その分持ってきている」
鷹野は笑う。
「蓮、どうか一緒に歩かせてくれないか?」
穏やかに笑いながら、いう鷹野に、蓮は小さく頷いた。
「――さて、では俺もこれをプレゼントしよう」
鷹野は蓮に錨のような形の花を手渡した。
「碇草という花だ。本当ならこれを先に渡す予定だったが、まぁいいだろう大事にしてくれ」
「……本当に、鷹野さん、ずるい……」
蓮は花を受け取ってまた泣きながら笑った。
「――あと、いい加減俺の事を苗字で呼ぶのは止めてくれないか?」
鷹野がそういうと、蓮は体を強ばらせて冷や汗をかきはじめた。
「どうした?」
「あ、あのね……実は……」
「た、鷹野さんの名前、しらなくて……」
……はぁ?!
「おい、今なんて言った?」
予想外の言葉に、鷹野の表情が険しくなる。
其れを見て、蓮は顔を青ざめさせたまま視線を彷徨わせる。
「ひぃ?! ご、ごめんなさい!! 最初あった時名前だけ覚えてなくて……覚えようと名前探すと思い出して辛いから、いままで見ないようにしてて……」
わぉ、こいつはたまげた
俺の予想以上に頭が悪いな
けれども、嫌いじゃない
「そうか、じゃあ覚えるまで何度でも言ってやる。
鷹野はそう言って蓮の頭をわしゃわしゃと撫でると、蓮は何度も小声で鷹野の名前を呟く。
「こうよう……康陽……康陽さん?」
「よくできました」
鷹野は――康陽はにっと笑って蓮を抱きしめた。
「……えへへ」
蓮は嬉しそうに、笑ってから何度も彼の名前を呟いた――
「――で、なんで私こんなに仕事するハメなってんのー!!」
一週間後、大量の書類を前にしてフエは悲鳴を上げていた。
「お前の可愛い『妹』かつ、私の可愛い『妹』の蓮がな、お前に『はめられたー! 情報漏洩されたー!!』と言ってきてな、当分仕事したくないと珍しく駄々こねたものでな」
女性が煙管を吸いながら呆れ顔でフエを見る。
「ちょっとー!! せっかく恋人いないでぼっちな妹の恋人つくる手伝いしたのにお礼がこれ?!」
「お前さんはやり方が愉快犯すぎたんだ。第一喫茶店で笑いまくったのを根に持ってたぞ」
女性がため息をつくと、フエはガンと机に頭をぶつけた。
「あー笑いすぎだったかー……しょぼん」
「――安心しろ、今回は私も手伝ってやる」
女性は珍しくしょげているフエから書類を一部取り上げると、自分の目の前においた。
「どうしたの? 珍しいね」
「――今まで妹の孤独感の理解もたりず、仕事後の変化にも気づかなかった阿呆に対しての罰だと思ってくれ」
少しだけ罰悪そうに紅はいうと、フエも理解したのか同じく罰悪そうにいう。
「
「――ああ、本当にどうにかしたいよ」
女性──紅は青い煙を吐き出し、どこか遠くを見つめる。
「こればっかりはしょうが無いしょうが無い、ところでさあの子の結婚式どうする??」
「本人が言い出したのか?」
「ううん、でもねウェディングドレスとかそういう雑誌みてぽーっとしてるから」
「なるほど」
フエの言葉に紅は苦笑する。
例え異形であっても、私達にも心はある
故に、私達は願うのだ、愛しい『妹』が幸せであることを――
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