2 追放ですか?(5歳から7歳になりました)

 私だって、だてに二次創作書いていたわけじゃないの。

 受験勉強必要なかったから、その時期に周回を重ね、全てのエンディングを見届け、さらに周回を重ねては悪役令嬢リリアの幸せを願っていたのよ。


 主役たちのバッドエンドを選択しても幸せになれないリリア様。だから設定集や公式のサイドストーリーも読み込んでの二次制作。本編では描かれていない幼少期の出来事をあらゆる面から推理をして、妄想をつぎ込みプロットを作っていったのよ。だから、ここは本編が始まる前の誰も知らない世界だけど、私の予想が当たったのね。それとも私の妄想の世界?


 思い出すんだ、設定資料集を! ここはスプリング・ウインド王国。ヒロインは平民。名前は自由に付けるから分からない。メインキャラ三人の女子の仲間は、


 

 公爵令嬢の イリーナ・ホワイトローズ(優等生)

 侯爵令嬢の ウーリ・ゴールドラッシュ。これが義姉ね。

 子爵令嬢の エリーヌ・グリーンフィールド(ロリ)



 彼女たちが、4人の攻略対象をそれぞれ落とすの。誰が誰を落とすのかは、ヒロインの選択が済んだ後ランダムで決まるの。ヒロインは自分の恋を成就させながら、仲間の恋のサポートもしなければならないから本当に大変。組み合わせによっては「相性悪すぎなんじゃない?」って組み合わせもあるから本当に大変なの。カップルが少なくなると、魔王討伐に向かうパーティ人数が減ったり、やる気のメーターが減ってデバブがかかったりして大変なのよ。親密度が高くなればなるほどバフがかかって強くなる。それがLOVEパワー。


 攻略対象は、


 第一王子   カール・ダイヤルビー (俺様)

 第二王子   キール・ダイヤルビー (ワンコ)

 宰相子息   クール・イエローブック(知的)

 騎士団長子息 ケール・ブラウンホース(脳筋)



 この4人ね。イウエとカキクケだから覚えやすいね。きっと制作者の手抜きだわ。ヒロインがアから始まれば完璧なんだけど。


 そして私、リリア・ゴールドラッシュ侯爵令嬢。現在5歳。本編は14歳の学園入学時から17歳の卒業までが攻略パート。卒業式でリリアが追放されたら魔族討伐、リリアが追放されなければバットエンド1回目ね。追放されたリリアは魔王軍に入り中ボスとして行く先々で妨害を行うのよ。つまり私はそのフラグを折りながら静かな学園生活を送ればいいのね。よし! メインキャストに近づかないように……って無理じゃん! 義姉がメインキャストじゃない!


 考えよう。今の状況は……?


 父、ダニエル・ゴールドラッシュ侯爵には二人の妻がいる。第一夫人は私ことリリアの母、サミア。隣国のシルバースミス侯爵家のお嬢様。もちろん政略結婚です。


 第二夫人は義姉ウーリの母シシリ。自国のグレイマウス男爵の三女。父とは大恋愛の末第二夫人になっているんだけど、金使いは荒くやりたい放題。父の威厳を盾にやりたい放題なんだけど、私の母より少しだけ早く子供を産んだせいで態度が大きいの。


 母は気が弱いのと、この国の文化レベルの低さに精神が参ってしまっていた。さらに生まれた私がこげ茶の髪と瞳のせいで、第二夫人があることないこと吹聴したの。おかげで母のまわりからは、どんどん人が離れて行ったわ。


 父は第二夫人のシシリとその娘のウーリを溺愛。そのため、どちらが第一夫人なのか分からないような振る舞いをしているのね。この間の池の一件だって、絶対私を再起不能にするために仕組んだんだのよ。


 いくら本当のことを言っても、むしろ私の立場が悪くなるのは目に見えている。ここは実力をつけないと。私は母に頼み、文字を教えてもらった。母は、「文字なんて10歳を過ぎてから覚えればいいのに」と言っていたが、私には時間がない。


「あなたは私の、いえ、ウインター・コールド王国の血を受け継いでいるのね」


 母はそう言うと、楽しそうに文字を教えてくれた。生活が厳しい環境にあるウインター・コールド王国では、勉強と技術が重要視されているらしい。


 まずは文字を覚えないと。もともとスペックの高いリリアの頭脳と、西洋料理には語学が必須とばかりに、外国語は得意だった私の経験が合わさり、すぐに文字は読めるようになった。そこからは必死に家にある本を読み、母からいろんな話を聞きながら学んでいった。


 そんな素晴らしい日々は7歳で終わりを告げた。母がパーティーの帰りに夜盗に襲われ亡くなってしまったからだ。第二夫人が病気のため急に参加したパーティーの帰りのことだった。第二夫人の仕業ではないかと噂も立ったが本当の所は分からない。


 母がいなくなったので、ウーリの母シシリが第一夫人になった。他にいなかったから。


 私は、母屋から汚い小屋に追放された。今後一切母屋に入ることを禁じられて。


 そこから私のサバイバル生活が始まるのよ。恋愛ゲームのフラグを折る前に、私の命が折られそうだよ!

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