異世界ワンルームは家賃19,000円

寺場 糸@第29回スニーカー大賞【特別賞

プロローグ

 もともと、物事を深く考えずに行動してしまう性分だった。


 小学生の頃は、学校が突然嫌になって集団登校の輪からこっそり抜け出し大目玉を喰らったことがあるし、中学生の頃には、女子の軽いちょっかいにマジギレして号泣させてしまい、学年の女子全員に軽蔑の視線を向けられたこともある。


 高校生になってもその内なる衝動はコントロール不能で、読書にかまけて受験勉強をおざなりにしたせいで、大して箔もない大学をわざわざ一浪する羽目になってしまった。


 大学に入学し、もはやこれは生涯付き合っていかねばならない個性なのだと開き直った結果、症状は悪化の一路を辿った。


 講義にはロクに出席しないし、単位は当然落とすし、バイトは気分でバックれる。


 どこからどう見ても、人間失格な腐れ大学生である。


 そんな私にも、一時、恋人というものがいた。


 今にして思えば、私には勿体ない相手であった。


 きっと、天におわします神が、ふわりと、タンポポの綿毛を吹き散らすかのような吐息を向けてくださったのだろう。


 しかし、当然、私はそんな好機を無駄にした。


 ここでその失敗談を赤裸々に語るなどという愚かな真似はしないが、持って生まれた性分が災いしたということだけは述べておこう。


 人生で始めて迎えた青い春が早々に過ぎ去ると、私は泣き腫らし、天井に向かって罵り喚き、家に引きこもる日々を送った。



 そして私は、人生で最も愚かな行動を起こすことになる。



 どうやら私は、独り酒で悪酔いした勢いのまま、浴衣の帯を首にくくりつけ、自ら命を絶ったらしい。


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