ロマンス詐欺
「なんだと、紹介できる
「はい、高田様のおっしゃる条件に合う女性は当紹介所にはいらっしゃいません」
「俺は年収500万のいけおじだぞ、若い子にもてるんだ!いないはずがないだろう!」
「高田様の条件は、20代、年収300万、共稼ぎで家事は嫁がやる。両親の介護、同居する人。子供は二人。でしたか」
「そうだ、それがどうした」
「ですから、この条件に合う人はいませんよ。20代年収300万というところまではいいとして、共稼ぎで、家事、育児の分担をしない。そのうえ義両親の介護、同居となればだれも望まないということです。今20代の女性が求めているのは対等な関係を持ち、妻を労わり、家事育児を分担し伴に歩んでいく人ですから。それに子供が二人とおしゃってますが、高田様今43歳ですよね。結婚したとして、二人目のお子様は47歳ぐらいに生まれるのではないですか?となると大学を卒業するころには69歳になられますが学費はどうされるおつもりですか?」
「それは若い嫁に働いてもらって、残りは奨学金で」
「すべてお嫁さん任せですか。将来設計が甘すぎます。これでは紹介できません」
「俺はいけおじなんだ、俺はもてるんだ。女なんてより取り見取りのはずだ。もういいこんな紹介所退会する!」
「承知いたしました。それでは手続き致しますね」
俺は結婚紹介所を退会した。だがむかむかは収まらず、SNSに今回の事を投稿した。
『この顔でいけおじ!誰もこんなのと結婚したくないって!』
『なにこの条件、嫁を奴隷とでも思っているの?こんなのと結婚したらお先真っ暗』
『年収一千万で、タワマン持ち、専業主婦で贅沢させてくれるなら考えなくもないけどね』
『だよね!wwwww』
と、さんざん馬鹿にされて俺の怒りは頂点に達した。
数日後ダイレクトメールが来た。
『投稿見ました。私なら、高田さんの条件にすべて合っていますよ。会ってみたいな~。いけおじさん』
俺はそのメールを見てすぐに返事を送った。
何度かやり取りして、俺たちは会う事になった。
休日の昼、駅前で待ち合わせた。待ち合わせ場所に着いた俺は送られてきていた写真の人を見つけた。
「
「はい、
「そうです。初めまして」
「初めまして、わぁとても素敵な方。本当のいけおじですね」そう言われ俺は気持ちがよかった。
「食事に行きましょうか」俺は由美子さんを予約していたレストランに連れて行った。話がはずみ俺たちは来週も会おうと約束して別れた。
毎週末にデートを重ねた。由美子は家に来て料理を作ってくれたりと、俺の理想にぴったりだった。数か月後俺は指輪を用意しプロポーズすることにした。
「これを受け取って欲しい。結婚して下さい」
「私に、嬉しいわ。でもごめんなさい結婚は無理なの」
「どうして俺の事が嫌いなのか!」
「明夫さんの事は好きよ。でも、私借金があるの。なかなか言い出せなくて」
「いくらだ」
「300万、利子も入れたら400万ぐらいなってるかも」
「それ、俺が払ってやる!そしたら結婚してくれるか?」
「いいの!借金が無くなるのなら喜んで」
「数日中に金を作るよ。金が出来たら連絡する」
「解ったわ。連絡待っているからね」
俺は銀行の預金と、消費者金融からの借り入れで400万を作った。
由美子に連絡すると駅前の公園にお金を持って来てくれとの事だった。
俺はお金を持って約束の公園へと向かった。
「ほら、約束の400万。これで結婚できるな」
「ありがとう。もちろんよ。指輪はめて頂戴」
俺は由美子に指輪をはめた。そして結婚の約束をした。
しかし、それから由美子に全く連絡が付かなくなった。電話は『番号が使われていません』とガイダンスが流れる、メッセージも届かない。ラインもメールもブロックされてしまったようだ。SNSも無くなっていた。聞いていた住所に行ってみたがそこは空き家。勤め先に出向いてみたが榎本由美子という社員はいないとの返事だった。
途方に暮れた俺は警察に相談に行った。俺の話を聞いた警察官は
「榎本由美子さんにお金を渡した途端連絡が付かなくなったんですね。住所も勤め先も実態無し」
警官はしばらくパソコンを操作していた、
「同じような事例が数件寄せられています。結婚詐欺にあわれたようですね」
「俺の金は戻りますか?」
「被害届を出してください。でも相手を逮捕できたとしてもお金が戻ってくる可能性は低いですね」
「そんな・・・」
俺は力なく警察署を後にした。騙されていた。その現実が俺を叩きのめした。貯金は無くなり、これからは借金の支払いもしなくてはならない。結婚するどころかこれからの生活もままならなくなってしまった。
SNSに投稿すると、『これ見た事か!』『勘違いおじさんの痛い末路!』など本当に手厳しい批判に晒された。被害者なのに俺の投稿は面白がられ、拡散していった。
会社でも、道を歩いていても俺を見てくすくす笑いをする人がいるような気がする。俺は人が怖くなりだんだん外に出るのが億劫になってきた。
無断欠勤が続き俺は解雇された。金も無く、借金取りに追われる。そのうちに家賃が払えなくなり、家を追い出され俺はホームレスになるしかなかった。
落ちるところまで落ちた俺。何が悪かったのか今でも解らない。
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