第10話 『修行』
菊理から受ける修行の日々は、それはそれは辛いものだった。
最初の内は優しいかに思えた日程も、日々確実に増え、決して減ることはなかった。
しばらくすればそれに着いていけるだけの体力、そしてある程度の技術も見には着いたが、そうなればそれに見合った辛さに引き上げられる。
とくかくも上へ上へ。
ただひたすら上へと昇り詰めるだけの日々が、数年続いた。
月日を重ね、成熟し、十分な体力と体格が身に着いた後は、本格的な戦闘技術の訓練が始まった。
ユウの最終目標は酒呑童子——本心では、始めの内はそれを半ば馬鹿にもしていた菊理だったが、それまでの彼の本気ぶりを見続けている内、その目標に向かう為の修行を真面目に考えた。
実戦では、特に集団戦や長時間戦であれば、ただ刀振るうだけでは意味がない。我武者羅に振り回していたのでは、簡単に体力が底をついてしまう。そういった戦場で最も必要な技術は、いかに温存しつつ全ての攻撃を確実な一手とし、なるべく長時間闘い続けられるか。
それには基本的な型、それを応用した型……とにかくも効率的な動きが求められる。
現場を長い間離れていた咲夜があの一戦でずっと食い止め続けられたのも、身に着いたそれら技術があればこそ。刀一本、己の肉体一つだけで、妖術さえ使っていなかったのだから。
結果的に体力が底をつき、予期せぬ酒呑童子の襲来に備えることが出来なかったとは言え、普通の兵であれば、そこまで持ちこたえることすら不可能だった。
菊理は逆にそれをしてこなかったからこそ、その大事さを誰より理解している。正に適任という訳だ。
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