第5話 なぞのメール
ゼフィラ研究所。
ボクが昔いたところ。
アオさんが勤めていたところでもある。
アオさんはそこの研究員だった。
そしてボクは、
被検体だった。
数年前、フォーライア帝国のアーニマ族の動物食性タイプの人口が少なかった。
動物食性タイプの人がいつか人を襲ってしまうのではないか、という差別によって数が少なくなっていた。
そこでいち早く保護しようとしたのがゼフィラ研究所。いや、ここの場合は保護、というより研究がメインだったけれど。
ボクは孤児院から引き取られてやって来た。
『ヴァレリア』という人を中心にボクを研究していた。
まあ、あんまり言えないけど、研究の仕方と言えば酷いものだった。思い出したくない。少なくとも、保護って感じじゃなかったな。
そんな中、アオさんは若い有能な研究員としてここに来た。
その当時からアオさんは優しかったから、いつも研究で辛いボクのことをたくさん気にかけてくれていた。
すごく、嬉しかった。
♦♦♦♦♦
そんなことを思い出している内に、あっという間にヴェールランドに着いた。
結局、ハカセの話をした後は何も話さずに家に帰った。
家に着いて、アオさんが作ってくれた晩ごはんを食べた。その間もあんまり喋らなかった。本当はもっと話したいことがあるはずなのに、アオさんの様子を伺いすぎてしまってボクは何も言えなかった。
♦♦♦♦♦
ボクはお風呂から出た。
疲れた体を癒してくれるお風呂はやっぱり気持ちがいい。体がホカホカしている。
ボクと入れ違うようにアオさんはお風呂に入った。
そういえば、冷凍庫にアイスがあった気がする。
そう思ってキッチンの方に行く。ごそごそ探ってアイスを探す。見っけた!袋を破ってアイスを頬張る。
お風呂から出て温まった体に冷たく染みるアイスはなんて贅沢なんだろう。なんでこんなに美味しいんだろう。
ウキウキな気分で自分の部屋へと向かう。
その途中で、いつもなら気にならないはずのドアに目がいってしまった。
アオさんの部屋。
いつもならきちんと扉を閉めるアオさんだけど、今日だけは少し開いてしまっていた。だからボクも気になってしまった。
ボクはキョロキョロと辺りを確認する。まあ、ボクとアオさんしか住んでないから誰かがいる訳じゃないんだけど。一応。
そしてこっそりと部屋に入る。
暗い部屋の中に、ひとつ、ぼんやりとした光があった。パソコンだ。
パソコンもつけっぱなしでお風呂入っちゃったんだ、アオさん。
なかなか見ることの出来ないパソコンの存在に目を引かれた。
パソコンの画面には、メールらしき画面が開かれていた。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
新規メッセージ
宛先:⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
Cc/Bcc、差出人:◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎
件名:アストラルへの勧誘について
本日言ったようにナノをアストラルへ加入することは認めない。
お前がどんな交渉を持ちかけてこようと断ると決めたことだ。
だいだい彼女h
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そんな画面が映し出されていた。
宛先には難しい字が使われていてボクには読むことが出来なかった。
でも本日、とかアストラル、って書いてあるってことはハカセ、なのかな…?
そんな推測をしていると、このメールの画面に履歴も一緒に映っているのが目に入った。
お仕事用のメールかもしれないけど、もしかしたらなにかわかることがあるかもしれない。
そう思いながらメールを見ていった。
ふと、目に留まるメールが一通。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
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久しい友へ
やあアオ。元気にしてるかい?
君と同じ研究所で働いていた人に聞いたよ。
研究員を辞めてヴェールランドに移住したらしいじゃないか。
しかも『ナノ』と一緒に。
まあヴァレリアさんが言ったことだって話も聞いているから別にボクは何も言わないけどね。
話は変わるんだけれど、どうやら、『ナノ』っていう子はどうやら不思議な子らしいね。
研究をしていたって言う彼に聞いたんだから間違いないんだろう?
ヴァレリアさんも賞賛のお言葉を言っていたとも聞いた。「この子は世界を救う」とかだっけな。
まあ本当かどうか分からないんだけれど。
でももし本当なら。これはチャンスではないかと私は思っているんだよね。
そこで提案だ。
私が作った組織【Astral】への加入はどうだろうか?
…って言っても突然【Astral】なんて名前を出されても困るし分からないよな。
よし、次のメールにこの【Astral】についての説明を送ろう。
それではまた。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
気が付けばメールの内容に夢中になっていた。
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