第2話 グランデリア
「うわぁ…」
グランデリアという街の大きさに驚きを隠せなくて、駅を出てからすぐに声をだしてしまった。
どこをみても建物ばかり。
緑の多いヴェールランドとは違って、建物のカラフルな色で街は彩られていた。
行き交う人々は楽しそうに話していたり、笑いあったりしている。
「変わってないな、ここは」
「え、アオさん来たことあるの?」
「ずっと前だけどな。誰かさんのお付き合いで来た」
誰か、はボクには分からなかった。
けどずるい。一緒に初めて来たと思ってたのに。
「何か見たいものはあるか?」
「え?あー、えーっと…」
グランデリアは何でも揃っている。けど何か欲しいものとかあったかな…
「じゃあ、俺の行きたいとこでもいいか?」
初めて来たところだということもあって、この街についてまだ何も知らないボクにアオさんはそう言ってくれた。
「うん、いいよ!」
「よし、あそこに行こう」
♦♦♦♦♦
「ねーアオさんどこ行くのー?」
ここまでただただ着いてきただけだったからどこに向かっているのか知らなかったことに今更気づいた。
「それは着いてからのお楽しみだな」
せっかく聞いたのに、期待していた答えは返してもらえなくてボクは頬を膨らませた。
改めて周りをキョロキョロしてみた。
ピンクやオレンジ、ミドリやアオ、ムラサキなど様々な色をした建物。行き交う人々を彩るキラキラとした服。遠くから聞こえる音楽。それと調和するかのように響く高らかな笑い声たち。
全てが初めて見るものだった。
出会う人たちの笑顔を見ているとなんだか幸せな気分になった。
「着いたぞ」
そう言ってアオさんはあるお店の前で立ち止まる。
そしてボクはそのお店の看板を見た。
「ここって…」
アクセサリー屋さんだった。
「いやいやいや!私はアクセサリーなんか着けないよ?!」
「別にいいだろ、行きたいところ特にないって言ってたんだし。それに、ナノに買ってやりたいものがあるからな」
「ねえ、だから私はアクセサリーなんか着けないってば…」
ボクは基本、装飾品は嫌いだった。ボクはあんまりキラキラしたものとか似合わないことを自分で分かっていたから、アクセサリー屋さんなんて滅多に来なかったし、別に行きたいと思ったこともなかった。
でもまさか、憧れのグランデリアに来てここに来ることになってしまうとは…
アオさんがお店の中に入ってしまったから、ボクもしょうがなく中に入った。
「いらっしゃいませ」
突然声をかけられて驚く。
声の聞こえた方に目を向けると、華美なアクセサリーをつけた綺麗な女の人がニコッと笑っていた。
その姿を見て、ボクはしゅんとなる。
こんなに綺麗な人ならいいけどさ、ボクはこの人みたいに綺麗じゃないんだよ…?
そう思いながら少し身を屈めてアオさんについて行った。
アオさんはしばらくアクセサリーを眺めていた。
なんでこんな真剣なんだろう。ボクには似合わないものばっかだろうに、こんな悩んでてもいいのないと思うよきっと。
そう思ってたけど言えなかった。
顔が、あまりにも真剣だったから。
「……これはどうだ?」
しばらく黙っていたアオさんだったが、ようやく口を開いてボクに何かを渡してきた。
その手にあったのは、赤色のお花が付いた髪ゴムだった。
子供っぽい、けど赤色が凄く大人っぽく見えた。
「…私、こんなの着けたことないよ」
「大丈夫、似合うから着けてみて」
そう言われて、ボクはおさげになっている髪の留めているところにこのゴムを使った。
「…うん。やっぱり似合うな」
今まで他の人が着けているのを見てきただけだったのに、アクセサリーというものをボクも着けていることがなんだか不思議だった。
しばらく鏡に映るボクを見ていた。
なんだか、懐かしい気持ちがあった。
ここには来たことないはずなのに。
「すみません、これを購入したいのですが」
気がつけばアオさんはお店の人にそう言っていた。
「え、アオさん、ほんとにこれ買うの?!」
「ああ、ナノに似合ってるし」
「ボク、あんまり女の子のもの似合わないよ…」
ふと、"私"ではなく"ボク"と言っていた。
「何言ってるんだ。俺からすれば、いや、俺からだけじゃなくてもナノは女の子だよ」
そう、アオさんは言ってくれた。
アオさんはボクを女の子としてみてくれていた。ボク自身はそんな風にあんまり思っていなかったけど、彼だけはいつもそうだった。
「……じゃあ、しょうがないなぁ。いつもお世話になってるアオさんのために着けてあげてもいいよ?」
「なんで上からなんだよ…」
正直、似合う、と言ってもらえて嬉しかったかもしれない。もちろんアオさんにはそんなこと言わなかったけど。
アオさんがお金を払っている間、ボクは髪についている買ってもらった赤いお花の髪ゴムを眺めていた。
かわいいな。ボクに似合ってるか不安だけど、買ってもらえたのは嬉しいな。
しばらくしてアオさんがお店から出てきた。
「アオさん、ありがとう」
「いや別に。俺が買ってやりたかっただけだから」
そう言いながら彼は視線を逸らした。あ、照れてるなこれ。
ふふっと思わず笑ってしまった。
その時だった。
《ドカン!!!》
突然爆発音が聞こえた。
「「?!」」
二人驚いて音のした方を見た。
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