第148話:スキル【融合】

(新しく手に入れたスキル【融合】。これを使って、同族食いに対抗できるスキルを作り出す。だけど……)


 スキル【融合】には分からない部分が多くある。否、分からない部分の方が多すぎて、既存のスキルで使用するのを躊躇っていたという方が、竜胆の心情では正しいかもしれない。

 現在、竜胆が獲得しているスキルは【上級剣術】【死地共鳴】【鉄壁反射】【魔法剣】の四つだが、全てのスキルを使用しており、不必要なスキルが一つもない状況だ。

 その中で竜胆が融合させるのに選んだスキルは――


「スキル【融合】発動! 選ぶのは――【上級剣術】と【魔法剣】!」


 竜胆の体から強烈な光が放たれる。その光の色は、白と赤。

 まるで竜胆を中心に暴風が発生したかというくらいの突風が吹きすさび、鏡花たちは思わず半眼となり、瞬きをしないよう腕を顔の前に置き、風を遮る。


「お兄ちゃん!」


 鏡花が叫ぶも、突風に遮られて竜胆には届かない。


『ゲゲ? ゲギャギャギャギャ!』


 竜胆の変化に気づいた同族食いは、雄叫びをあげると地面を蹴り、確実に殺すため突っ込んでいく。

 体の傷は完全に癒されており、一度吹き飛ばされたはずの右腕を振り下ろした。

 直後――白と赤の光が一つとなり、二色の光が竜胆を包み込んだ。


「うおおおおおおおおぉぉっ!!」


 鋭く振り抜かれたデュランダルが、同族食いの鋭い爪を捉え、そのまま後方へ吹き飛ばす。

 ぶつかり合った部分の爪が僅かに欠け、同族食いは驚愕する。


『ゲギャ?』


 着地から後方へ飛び、竜胆と距離を取る同族食い。

 何が起きたのか理解できず、驚愕から困惑へ思考が移り変わっていく。


「……どうやら、成功したみたいだな」


 二色の光を纏った竜胆がそう呟くと、鋭い視線を同族食いへ向けると同時に駆け出す。

 数分前と比べて倍近い加速で最高速度へ到達し、瞬く間に同族食いを間合いに捉える。


『ゲギャ!?』

「ふっ!」


 再び驚愕の声をあげたが、その時にはすでにデュランダルが振り抜かれていた。

 同族食いの左腕が斬り飛ばされ、その表情が初めて恐怖の色を浮かべる。


「上級魔法剣術――発火」


 ――ゴウッ!


『ゲギイイイイッ!? ゲギャ! ゲギャガガアアアアァァッ!?』


 スキル【上級剣術】と【魔法剣】が融合し、新たなスキル【上級魔法剣術】を獲得した竜胆。

 当初の【魔法剣】では炎を纏っていたデュランダルだが、今は目に見えるような炎を纏ってはいない。

 しかし、同族食いの左腕の傷口からは猛烈な炎が噴きあがり、その肉体を包み込もうと胴体の方へ移動していく。


『ギ、ギギャアアアアッ!!』


 ――ブチッ! ブチブチブチブチイイイイッ!!


 同族食いは炎を消そうと右手で払ったが、一向に消える気配がない。

 すぐに消すことができないと判断した同族食いは、右腕で左腕を鷲掴みにすると、根元から引きちぎってしまった。


「いい判断だ! だが――遅い!」


 左腕を引きちぎった同族食いめがけ、鋭い横薙ぎが迫る。

 体を仰け反らせて回避した同族食いだったが、デュランダルの動きが止まることはなく、そのまま袈裟斬りへと変化していく。

 まるで剣舞のような竜胆の動きが、同族食いの体に傷を作り続けていく。そして――


 ――ゴウッ!


『ギ、ギギャアアアアッ!? ギガガ、ガギギャギャアアアアァァッ!?』


 全ての傷口から炎が噴きあがり、ついに同族食いの全身を炎が包み込んだ。

 断末魔の悲鳴が響き渡り、同族食いが炎に焼かれながらよろよろと動き回る。

 そして、炎は傷口から体内へと広がり、内側からその身を焼き始めた。


『……!? ……ァ……ァァ…………』


 最終的には言葉を発することもできなくなり、ついに同族食いは倒れ伏す。

 しかし、相手は同族食い。本当に死んでいるのか確認が取れるまでは、警戒を解くことはできない。


【モンスター討伐によりスキル【ガチャ】が発動します】


 そこへ竜胆の本来のスキル【ガチャ】の発動が知らされたことで、竜胆は同族食いが死んだことを確認することができた。

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