第133話:国親の本領発揮?
「――……よし、とりあえずはこんなものか」
竜胆たちからの報告を聞いた拳児は、書類をまとめながら一つ息を吐いた。
「お役に立てましたか?」
「もちろんだ。特にスキルの部分は、現在伸び悩んでいるベテランプレイヤーの希望になるかもしれん」
授かったスキルをどのようにして使うのかを考え、実践することは、全てのプレイヤーが可能なことだ。
しかし、ある程度スキルの使い方を突き詰めてしまうと、それ以上先へ行けなくなることが多い。
それはベテランになればなるほど顕著に表れ、気づけば成長が止まってしまっていることも多くなる。
そんなベテランプレイヤーの希望となれるのであれば、今回の報告はとても有意義なものだったと、竜胆は思っていた。
「だけど、あの部屋って結局はなんだったんですかね?」
「それに、どうして僕たちだけが入れたのか、それも分からないんだよね」
「あぁん? そんなもん、少し考えたら見当くらいはつくだろうが」
ここでも国親が冷静な分析から声を発しており、彩音と恭介が視線を向けた。
「……そうなんですか?」
「国親は、何か見当がついているんだね」
「むしろ、どうして恭介が気づいていないのかが分からねぇな。……いや、そうか。俺と竜胆はあとから入ってきたから、気づけなくて当然なのか」
自分の中で何かに納得した国親は、真っ白な部屋に入れた五人の共通点について語りだした。
「あくまでも俺様の推測だが、あそこに入れた五人は、扉の攻略で活躍した上位五人だった可能性が高いと思っている」
「活躍した五人ですって? それじゃあ、あなたはどうなのかしら、猪狩国親?」
国親の推測に疑問を呈したのは、影星だ。
「聞いた話によれば、あなたは二重扉に入ってしばらくして、すぐにベルゼブゥの毒にやられて動けなくなったはず。それなのに活躍できた五人に入るのは、難しいんじゃないの」
「確かに、俺様に関して言えば、そこの影薄女の言う通りだ」
「か、影薄ですって!?」
自分の言われように声を荒らげた影星だったが、国親は気にすることなく話を続けていく。
「まあ、俺の場合は討伐で活躍したっていうより、竜胆へ助言を与えられたってのが大きいかもな」
「……もしかして、プレイヤー歴のやつか?」
ベルゼブゥの毒が効きやすい者の特徴として、プレイヤー歴が長い者ほど高い効果を与えてしまう、というものがあった。
だが、それだけで上位五人に入れるかどうかと問われると、国親も自信をもって活躍したとは言えない。
「それとだ。こいつも使っただろう、竜胆?」
そう口にした国親が手にしたのは、収縮させていたヴォルテニクスだった。
「これは俺様の所有物だ。これを使ってベルゼブゥを追い詰めることができたのであれば、それが俺様の活躍になっていた可能性もゼロじゃねぇ。まあ、すべてが俺様の推測だがな」
全てが推測だと改めて口にした国親だったが、彼の推測を聞いた竜胆は納得顔で頷いた。
「確かに、その可能性は高いと思う」
「天地竜胆、本気で言っているの?」
「あぁ。それに、さっき国親が言ったこと以外にも、二重扉に入る前の活躍だって目を見張るものがあったんだ。それならやっぱり、国親は今回の扉攻略に大きく貢献したってことだよ」
「……ちっ。なんていうか、調子が狂うな、てめぇは」
自分で自分は活躍したというのは、どうにも照れる部分がある。
そんな中でさらに、共に戦った仲間から活躍したと太鼓判を押されたのだから、照れないわけにはいかなかった。
「なるほど。しかし、そうなると無理をするプレイヤーが増えてしまいそうだな」
拳児が一つの懸念を言葉にすると、続けて竜胆が口を開く。
「ですが支部長、二重扉だからと必ずスキルの部屋に入れるとは限りません」
「分かっている。星5の二重扉では出てこなかったわけだしな」
竜胆たちが先に攻略した星5の二重扉では、スキルの部屋は現れなかった。
スキルの部屋が現れるのに必要な条件があるのか、それとも今回の星4の二重扉だけが特別だったのか。
その辺りの検証ができなければ、全体に向けてのアナウンスは難しいと拳児は考えた。
「攻略して早々の報告、感謝する。報酬は追って支払わせるので、今日はゆっくり休んでくれ」
最後に拳児がそう伝えると、全員が一斉に立ち上がり、扉の方へ歩き出す。
「そういえば、竜胆さん。鏡花ちゃんは大丈夫だったんですか?」
「僕も気になっていたんだ。どうだったんだい?」
そこへ彩音と恭介が、心配から竜胆へ声を掛けた。
「あー……あぁ、大丈夫だ。今は容態も安定しているよ」
大丈夫だと答えた竜胆だったが、どこか歯切れの悪さを感じた彩音と恭介は、ひとまず頷いてから支部長室をあとにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます