病臥にてこいし今宵の月見酒

※びょうがにて こいしこよいの つきみざけ


「残念だったなあ」

今日は、中秋の名月。

二人で、素敵な庭園でのお月見のつもりだったのに。


僕は、布団の中にいる。


「仕方ないでしょ、風邪なんだから。あ、月見うどん、食べられたのね、良かった」

マスクをしていても、笑顔なのが分かる君。

ありがとう。


「美味しかったよ、お月様も。ありがとう、ごちそうさまでした」


今年の僕の中秋の名月は、月見うどんの玉子のお月様かあ。


「ここにもいるよ、玉子のお月様。見えないけどね。はい、月見酒」


「……ありがとう、早く治すからね」


玉子酒だ。


なんて素敵な月見酒なのだろう。


どうしよう、君のことを、もっと好きになってしまうよ。




※病臥は病気で床につくことです。


こいし、には恋し、と 請いしを掛けております。


中秋の名月は見られなかったけれど、玉子のお月様は、二つも。

カーテンを開けて、二人で部屋から見る満月も、乙なものかも知れませんよ。


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