第13話 新しいダンジョンへ
「えっ!? 配信始めるの!」
「始めるかどうかはまだ決めてないけど、面白そうかなと。あと友達に勧められてさ」
「なるほど。で、配信について私に聞きたいと」
「そうそう。せっかくだし聞けることは聞きたいなと思って」
と、俺は桃瀬さんに説明する。
「それで具体的に何が聞きたいんですか?」
「配信を始めるには何か必要なものがあったりするのか知りたくて。撮影するドローン以外に」
「えーっとですね……極端な話、ドローンさえあれば始められるんですよ。ダンジョン配信って」
「ほう……。結構簡単に始められるのか」
「肝心のドローンが手に入りづらすぎることを除けば……ですがね」
「確かに、本来ネットが繋がらないダンジョンで配信できるようにしているんだ。高く、生産数も少なくなるのは当たり前か」
「その通りです」
そこで俺はふと思いついたことをルーファスへ問いかける。
「ところでルーファスさんや、ドローン作れたりする?」
《作成済みです》
「……え?」
《昨夜、浩介様へ『配信を始める』とメッセージを確認しましたので作成に取り掛かりました》
「それはそれは、助かる。——てことらしい」
「ルーファスちゃん……有能すぎませんか」
桃瀬が驚いた様子で言う。
「それは俺も思う。自己進化できるようにしていたが、もしかしたら隣に立つ日が来るかもしれないな」
「それはもはやAIを超えてませんか。……それで、配信するとしてもどんな内容にするの? ︎︎やっぱりダンジョン系?」
「そうだな〜。せっかく色々作ってるしそれを紹介したり、案を集めて何か作るのも面白いんじゃないかと考えてる」
「なるほど」
「ただ、上手く話せるかとかそもそも見られるのかとか考えちゃってね〜」
「あっ、そしたら私の配信でアシスタントしてみませんか?」
「アシスタント?」
「はい! 私もそろそろ配信を再開したいと思っていたのですが……一人はやっぱりまだ不安なので」
「なら、お願いしたい」
「やった……それじゃ、行きましょう」
「今から!?」
「もうすぐ告知していた配信時間ですから!」
そう言って俺たちはダンジョンへ向かうのであった。
◆◆◆
「ここです」
目の前に広がるはダンジョンへの入り口。
《餓狼ですか》
餓狼ダンジョン——ダンジョン内に出現する魔物は狼系しかおらず、大多数が飢えた様子で凶暴化した魔物で溢れている場所だ。油断禁物と他のダンジョンに比べて口酸っぱく言われている。
「先に配信について説明しますが、視聴者——リスナーと呼ばれている人たちが書き込むコメントがこのドローンから読み上げられます。それを広い、会話しながらダンジョンを攻略する。これがダンジョン配信者です」
「なるほど……リスナーか。これ、コメント読み上げられて魔物に気が付かれないのか?」
「その心配はありません。魔物には聞こえず、人間には聞こえる周波数があって、それを利用しているそうですよ」
「便利なもんだなぁ……」
「あとはおいおい話していくとして……準備し始めましょうか」
「了解」
俺はパワードスーツを取り出し、起動。全身に装着する。
桃瀬さんもドローンを起動し、準備を始めた。
「では、私も配信始めますね〜」
そうしてドローンへ向けて話し始める。
「皆さん! お久しぶりです〜」
「はい、そうですね! またこれから再開していこうかなと思います!」
————視聴者と話しているのだろうか、楽しそうに笑う桃瀬さんが見える。
「あ、読み上げ機能オンにしますね〜。……よし。それで、今日は餓狼ダンジョンに来ています」
:餓狼!?
:狼型の魔物しか出てこないダンジョンだっけ
:ボスが結構強かったイメージ
:てか後ろの人誰?
「そうですね〜。今日はそのボスを討伐することを目標に頑張っていこうと思います」
ボス討伐か……。餓狼ダンジョンといえば確か、フェンリルだっけ。
「そして今日はアシスタントを呼んでいます!」
:もしかして後ろの人?
:ああ〜、アシスタントだったんだ
:全身鎧じゃん
:動きづらそう
「そう、私の友人なんですけど、配信に興味があるってことで体験してみようとなりましてね〜」
「黒瀬と言う。よろしく」
俺は緊張を誤魔化すように端的に自己紹介をした。
:顔は出さないのかな
:友人さんなんだ
:よろしく!
「さ、立ち話もなんですしここからは歩きながら行きましょう!」
:おー!
:おー!
:レッツゴー!
そして掛け声と共にダンジョンの奥へと進み始めた。
◆◆◆
硬い地面に俺たちの進む足音が響く。
あれから進んだが、一向に魔物が現れる気配がしないのである。
「全く魔物が出てきませんね〜」
「珍しいな」
「普段ならもっと出会うはずなんですが……暇です。」
:なら質問コーナーなんてどう?
「それいいですね!」
読み上げられたコメントに桃瀬さんが反応する。
「質問?」
「はい! 黒瀬さんのこと気になる人も多いでしょうし」
「いいぞ」
「やった! じゃ、みんな聞きたいことコメントに書いていって。その中から私が選ぶよ」
:そのスーツって自作?
:武器? それとも魔法を使うの?
:桃瀬ちゃんとはどういう関係なんだ?
:顔は出さんの?
:どんな戦闘スタイルなの
など、続々とコメントが読み上げられていく。
「結構な量ですね〜。どれにしましょうか……」
少し悩む様子を見せる桃瀬さん。
「じゃあこれにしましょうか! 『どんな戦闘スタイルなの?』です。私も少ししか知らないので聞きたいので」
「戦い方か……そんな特別なことは何もしてないぞ。魔法もほとんど使えないし」
「そうなんですか!? でも初めて会った時、なんか凄いビーム出してませんでした? あれ、魔法だと思っていたんですが……」
「基本は武器を使った中遠距離で一応、近距離もいける。あとは、一対多の殲滅戦が得意かな。作る武器の傾向的にそうなっちゃうのもあるんだけど」
「てことは、全て自作だったのですか。確かに市場じゃ見かけないような装備ですし」
「ああ。と言っても、大部分は相棒のAIに任せてるけど」
「ルーファスさんですね!」
《その通りです》
:AI!?
:てことは、もしかしてそれ防具じゃない?
:AI搭載の防具?
「皆さん、黒瀬さんのパワードスーツに興味津々ですね〜」
「それならパワードスーツのことも話すか」
:パワードスーツ!
:それって……防具と何か違うのか?
「防具ではあるぞ。ただ、こんな感じで——」
俺は右腕を前に突き出し、魔力を流す。すると、右前腕部が変形。砲身が出現する。
ブォンと起動音が鳴り、胸の核魔力炉から魔力が送られ、全身にひび割れのように線状で青白く発光する。
:おおッ!
:すごっ
:なにそれ……
「高出力の魔力砲、中遠距離の主力武器だな。今回のために新しく作った」
「新しく作ったんですか!? そういえば……スーツも以前と違うような……」
「改良前は胸の核魔力炉は搭載してなかったな。これを追加したおかげでほぼ無尽蔵の魔力を供給できるようになった。核融合の過程に、周囲から取り込む魔力を混ぜることで実現している」
「核!?」
:へっ!?
:核融合!?
:危険すぎないか
「無問題。そこは天才ルーファスが調整してくれているのだ!」
「やっぱりおかしいです。AIの範疇にないでしょ、ルーファスちゃん」
「そこは……ほら、自己進化するからさ————ん?」
「それでも————魔物ですね」
「ようやくお出ましか」
俺たちは魔物の魔力を感じ取り、警戒体制に入る。
前方の影から一体の魔物が出現した。成体の雄ライオンくらいはある灰色のハイウルフだった。
「ウルフの上位種ですか。黒瀬さんが戦いますか?」
「いいか?」
「むしろお願いします。リスナーもそれが見たいでしょうし」
:見たい!
:見せてくれ!
:楽しみ
「了解」
俺はハイウルフへ向けて歩を進めた。
「久しぶりに近接のみでいってみようか」
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