第27話 吹かせて頂戴

あれは、私……?


けれどどこか違う気もするし、所々あっている気もする。一体彼女は何者?


私がそう考えながら唖然としていると、女の子の方がその、私によく似た違う人物に問いかけた。




「この世界の主、この子は皇 奈津美と言うのね。あなたは観測者で間違いない?」




 そう問いかけると、私によく似た何かは首を縦に振る。




「そう、私がこの世界の観測者。そしてこの世界にあなたたちを襲うモノは居ないわ」


「……いない、ってどういうことだ?」


「その言葉通り。あなたたちの世界では居たようだけれど、私たちの世界には居ないわ。だって精神と肉体が乖離していないんですもの」


「じゃあなんでこの世界が……」


「……いや、あり得る……幸助、こっち来て」




 そう女の子が呼ぶと、男の子と一緒に少し離れた場所へと移動した。


何の話をしているのか、よく聞こえない。




「……。」













         8






         ♭









 俺は榊に呼ばれて、二人とは少し離れた場所で話すことになった。


観測者の言っていた"誰も襲わない"ということに関係しているのだろうか。




「あの襲わないっていうのはなんなんだ?」


「前にも確かにそういう世界の子は、居たことがある。けどそれが一番の問題なの。肉体と精神が乖離して起こるのが神化世界。でも乖離していないとすれば……どちらも崇めるものとの同化を望んでるってことになる」


「それって……」


「ええ。彼女の精神も肉体も、そもそも生きようとする考えがないってこと。唯一の救いがあるとすれば、彼女自身がそれに気づいていないこと。でも彼女の核がそれを認知してしまうと……この世界はたちまち崩壊してしまう」


「どうやって救うつもりだ」


「……過去にいた子たちは、自身の記憶を取り戻した時点で世界が消滅し、帰ってくることはなかったわ。でも、二の舞はしない。なんとか彼女を説得するしかないわ」


「でも、どう言葉を尽くすつもりだ?その言葉関係なしに世界が崩れ去ることだってあるんだろ?」


「……結局は、祈るしかないのね」


「……。」




 正直、こればっかりは本当に本人次第である。どうすれば、その心に寄り添えるだろうか。どうすれば……




「今くよくよしてても始まらない。とにかく、やれることはやりましょう。祈るのはその後」


「ああ、分かった」




 とにかく俺たちは、皇 奈津美の記憶を取り戻すべく散策し、いつも通り世界を攻略することにした。















        ◎◎◎









         A






 ここが皇 奈津美の神化世界か。なんとも言えない風景だ。


アイツも神化世界の予感がしていたんだが……当てが外れたかな。




「それじゃ、ぼちぼち行きますか」




 そういって立ち上がり、この世界の観測者を探す。


そして——




"見つけ次第、殺害する"




やる事は単純明快。とっととやってしまおうか。

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