異界窓

これは私の実家の話である。


里帰りした私とパートナーが二人だけ残されて、リビングにいた。ベランダに通じる大きな窓の他にもう一つ、小さな窓があった。


だいたい胸の高さにある、縦60cmぐらいの引き違い窓だ。

そこを何気なく見詰めていたら、雨が降っていた。


片側だけ。


え?と思う私。

隣のパートナーの肩をトントンと叩いた。


「片方だけ、雨降ってない?」


と聞いてみる。


「あれ、本当だ」


思わず二人で首を傾げる。


窓に近付いてしげしげと眺めてみても、やっぱり片方のガラス越しにだけ雨が降っているように見えて。

いやいや、まさか。と思いながら降っている方のガラス窓を開けてみた。


雨は降っていない。


閉めてみる。


雨は降っていた。


ベランダの方に視線を向ける。


雨は降っていない。


訳が分からず、今度は降っていない方の引き違いのガラス窓を開いて、顔を外に出し、降っている方向を向いてみる。


雨は降っていない。


窓越し、しかも引き違い窓の片方だけに、雨が降り続けるのだ。


そこだけ別のどこかに繋がっているんだなぁ、不思議だなぁ、とパートナーと二人で話ながら一日過ごした。

後にも先にもその一度しかなかったが、未だに面白かったな。と思い出すことがある体験だった。

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