第二章 北海道編
第48話 北海道へ出発
一人目の四天王を倒してから一週間程の休暇を貰い、思い思いの日々を過ごした。久しぶりの休暇でリフレッシュできたと思う。だけど、それぞれがこの地を離れるのを寂しく思っていた。
そうしてやってきた北海道への出発の日。
「無事に帰って来るのよ? 帰りにまた寄りなさい?」
「はい。必ず。では、行きます!」
知友基地長は眉間に皺を寄せて心配そうにこちらを見つめている。そして、千紗にも視線を巡らせている。心配しているみたいだな。
千紗はしっかりしているけど、それでも自分の子は心配だろうしな。
「千紗を頼んだわよ」
「その必要はないと思いますが、頼まれました」
戦闘では足手纏いになるからという意味かもしれないが、ここ最近の千紗を見ていると大丈夫なのではないかと思う。
手を振って東北基地の皆へと別れを告げた。
東北基地を後にして北上する。そして、高速にのり八戸で新幹線の為の道を使う気でいる。今は危険すぎて電車、新幹線は運行されていないから使っていいとの許可を総長からもらっている。
「ふわぁぁぁ。また旅が始まりますねぇ。旅立ちの朝は何食べました?」
欠伸をしながら千紗が聞いてきた。
「朝か? 焼き魚定食食べてきたぞ。しばらく食べられないからな。あっ。釣りすればいいか」
「自分で釣って食べるんですか?」
「だってよぉ。自分で取らないとずっと干し芋か干し肉とかだぞ? 今回はインスタント食品多めに持ってきたからカップラーメンと味噌汁。飯もあるけどよぉ」
そんなどうでもいい会話をしながらのドライブは朝早くだからなのか平和なもので、魔物一匹いな────
「朝から魔物ですよ? しかもネズミがウジャウジャ!」
「あいつらはマーラットだなぁ。飛炎!」
鳥のような火の粉の集合体が窓から飛びだしていく。行く手を阻むマーラットを焼き、消し炭にした。遠くから、それよりも大きい奴が突進してきた。
「おいおい。朝から熱烈な歓迎だな。まだ基地をでて十五分しか経ってないぞ?」
さすがに千紗が車を停めたので俺が下りる。鞘を左手で持ち柄に右手を添えて半歩下がり構え敵を迎え撃つ。マーラットロードのようだった。
随分と成長していたんだな。この一週間基地を出なかったからここまで育ったのだろうか。成長が早すぎやしないか?
鞘から青い炎が溢れる。
「ふっ!」
マーラットロードは半分に分かれて俺を避ける様に後ろへと倒れ、消し炭となった。残りのマーラットは飛炎で燃やし尽くした。
車の中では出番の欲しかった雷斗が悔しがっている。
「自分もいけたっす! 見せたかったっすよ! 特訓の成果!」
雷斗が見せたいというのは魔力を魔素から取り込んで無限運用を可能としたからだった。
空気中の魔素の感じ方を教えてやらせてみると三日ほどかけてできるようになった。やはり雷斗は優秀なようだ。同じ様に冬華にも教えたのだが、冬華はまだマスターできていない。
道中も訓練しながら行くことにしている。
「次出た時に頼む」
「了解っす!」
大きい道路を通っていくのだが、途中釣具店を眺めてみた。すると、何年前からかはわからないが、放置されている竿と疑似餌があった。それを調達して海に行ったら釣りして見ようと思っている。
こういう密かな楽しみがないとやっていけないのだ。海釣りなんてやったことがないのだ。楽しみで仕方がない。
「竿とその疑似餌でしたっけ? それで本当に釣れるんですかぁ?」
「たぶんな。俺も釣りしたことないからしらん」
「うわー。期待できなぁい」
千紗の辛辣な態度に腹を立てながらも街が過ぎ去っていく様を眺めていると岩手山が目の前に見えた。
「富士山綺麗だと思ってたけど、あの岩手山も綺麗なもんだな?」
「そうですよね!? 岩手山私好きなんですよぉ。登ったこともあるんですよ!」
山を登る趣味なんてあったのか。まぁ、身体を動かすことが好きそうだからな。
「ほぉ。そうなのか。どうだった? 岩手山は?」
「きつかったですけど、山頂からの眺めを見て疲れなんて吹っ飛びますよ!」
山を登ったことがないのでその気持ちはよくわからない。登った人にしかわからない何かがきっとあるんだろうな。いつだか武岩総長にも言われたんだよな。山はいいぞって。俺には良さがわからない。
「そんなもんかぁ。俺は登ったことないからなぁ」
「人生損してますよ⁉」
顔を近づけて、眉間に皺を寄せて睨んでくる。
「いや、別に損はしてないね。その素晴らしさを知らないからな。知らなきゃ別に損はしてないんだ。そうだろう?」
「急に理屈っぽいですねぇ。そういうの嫌いです!」
なんなんだコイツは。突っかかってきやがって面倒だな。
「千紗さんは刃さんにわかってほしいんすよね? そして一緒に登りたいってことっすよ!」
雷斗がわけのわからないことを言っている。
「そうなのか?」
「ち、違います!」
顔を赤くしながら否定する千紗。
そんな顔を赤くして怒るほどか? はぁ。これだから女は理解できないんだ。
「そこから高速に乗ってくれよ?」
「わかってますよぉ!」
情緒不安定なのかコイツはと不満を心に抱きながら外を眺める。
段々と近づいてくる岩手山のゴツゴツした岩肌をじっくりとみながら通り過ぎていく。あれを登るのか? 理解できんな。
「いい鍛錬になると思いますわよ?」
「何がだ?」
「山登りですわ。山頂付近は酸素が薄いのですわ。だから負荷がかかった状態での登山になるのですわ」
「なるほどな。千紗はドМなわけだ」
千紗をチラッと見ると凄い形相でこちらを見ていた。
「どういう解釈してるんですか!? もう!」
アクセルを踏む足に力を入れたようで冬華が酔い始めた。
千紗に謝ってなんとか機嫌を直してもらうことで、スピードを落としてもらい事なきをえた。
全くなんなんだこのチーム。出発してからこんなんでこのチーム大丈夫だろうか。まぁ。平常運転か。
さぁ、青森に入るぞ。
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