第21話 和央君との最後
二月末、学年末テストが終わった。すぐに冬休みだ。友達からはスキーに行こうと誘われたが、もうバレバレの彼氏が「冬休みはどうする? 家に来る?」と、言ったせいで、友達から生暖かい目で見られた。彼女たちはずーっと引いていった。
「なぜ僕が現れたら彼女たちはことはから引いたのだ?」
引いた理由を教えることから始まるのか。
カズオ君と会ってもしても刺激がなくなってきた。新しい体位を試してみても四十八もすることは出来ないし、日常になりつつもあった。
カズオ君なりに考えてくれて、そういうことをしない日を演出してくれた。二人で作ったホットケーキ、二人で選んだホラー映画、初めてのスキー。
カズオ君は我慢も覚えたし、察することが出来るようになった。クラスメイトはその変貌ぶりに驚き、友達もたくさん出来た。
変貌に驚き期待に胸を膨らませて、補習に追われたアホは最後の登校日一日前にノートを要求した。
明日のテストを外すと留年らしい。
「どの教科がいい?」
「全部貸してくれ」
「いいよ、はい」
「ドイツ語はダメだぞ」
「贅沢だな、はい」
次の日「おかしい、なぜドイツ語なんだ!」と、言われたがうちのアホは。
「イタリア語だよ。フランス語の方が良かった? この機会に第二外国語を覚えるのもいいよ」
アホはノートを先生に見せたおかげで留年は免れた。
カズオ君とこんな馬鹿なことをしながら、これからも楽しく生きていくのだ。
いつか二人で一緒に朝一番におはようと言って、一日の終わりにおやすみって関係を築きたいな。
ずっと体だけではなく心も愛し合った私たちだよ。絶対明日や明後日、
天然で可愛い私の初めての彼氏、これからの人生を一緒に歩く人。この人の隣でずっと過ごしたい。
でも終わりは突然やって来た。
「母さんの転勤で今月末に引っ越しをすることになった。転勤先から近いところに住んでいるおじいちゃんの意向も大きくて、お父さんも家を継ぐことなりそう」
「そんな高校生だからもう」
一人暮らし出来るよ。
「おじいちゃんが県を二つ跨ぐ、転居先の方が大学も選べるし、ここと違って難しい大学も受験できるだろうって、そんな顔しないでいつでもメッセ出来るよ。
月末は残酷にも静かにやってきた。
「明日何時に出るの?」
「朝の八時」
「早いね」
「ちょっと遠いし」
旅立つのは明日、メッセもするしバスに乗って会いに行くという約束も
カズオ君の部屋はもうベッドもプラモもCDも無かった。捨てるからときれいなお布団をカズオ君のお母さんは用意してくれた。テーブルの上には「ごめんなさい」と、書かれた紙があった。
恨みは無かった。私たちはまだ子どもで大人の
きっと向こうでカズオ君には友達が出来て、私をゆっくり忘れて新しい彼女が出来て、その彼女は付き合うことが何かを分かっているアホじゃないカズオ君と付き合うのだ。
ざまぁ見ろ。カズオ君は丁寧に私を抱きしめた。早めの夕食の後、すぐに本当の最後が今から始まる。
「近藤和央君」
ずっと呼んだ名前、フルネームは最初できっと最後だ。
「突然どうしたの? 新庄ことはさん」
可愛い笑顔も今日で終わりだ。絶対に泣いてやるもんか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます