第14話 彼氏とハグ
「カップ食べたらお風呂ね」
平常心を装ったが、かなりドキドキしている。練習ってどうやってしたのかな。
大きくなるって聞いたけどどれくらいなんだろ。そもそも今日で全部卒業するの。無理だよ、相手も初めてだし、優しくしてくれる余裕はあるのかな。
「お風呂いただきました」
予想より早いお風呂で驚いた。
「部屋で待ってて」
私のお風呂は長かった。ゆっくり入って早くしたいような、もう少しこの不安定な関係をつづけたいような。でもここで逃して変な関係になって、目の前の女に取られたくない。よし、頑張るぞ。
部屋に戻るとカズオ君は正座をしていた。つい笑ってしまった。何だ、コイツも緊張しているじゃん。
「何がおかしい」
「緊張し過ぎ」
「でも、こういうことするの初めてだし」
心の余裕も出てきた。確かに目の前の女に取られるのは嫌だけど焦って辛い思いはしたくない。
「私たちのペースでいいじゃん、一緒に大人になろ?」
私は両腕を広げた。
「まずハグからにしませんか?」
腕の中に恐る恐る入ってくるカズオ君、愛おしくて抱きしめた。ん、と体を揺さぶると背中に手を回した。
「ハグはいかがですか?」
「暖かい」
「お風呂上がったから余計だね」
「細くて柔らかい」
「それはそういうふうに産んでくれたお母さんに感謝かな。硬くてゴツゴツしているね。男の子の体だね。いくら抱きしめてもいい?」
「ずっと抱きしめて、僕も君が抱きしめている時はいつでも、学校でも」
「学校は困るな。せめて家で抱きしめて欲しいかも」
「いい匂いがする」
「君からもいい匂いがする。うちのシャンプーの匂いがするね」
「それよりもなんか違う匂い」
「フェロモンでも出ているのかな」
「だったら、僕は君にヘロヘロにされてしまうね」
「ハグだけでいいの? 練習したんでしょ?」
「ゆっくりでいいんでしょ。顔が見たい」
「普段と変わらないよ。いつも同じ顔」
「今の顔が見たい」
お互いの肩から顔を外した。カズオ君は少し背中を曲げておでこ同士をくっつけた。
「そんなに近いと見えないでしょ」
「おでこも暖かいね」
「ちょっと照れているのかも」
「僕も一緒だよ」
「あんなに天然だったのに一丁前におでこも暖かいねって、ドイツ語はまだ続けているの?」
「うん、勉強になるから」
「すごいね。将来は留学?」
「それもいいなって思ってる」
「私もドイツ語練習しようかな」
おでこを離した。お互い何も考えずに自然と顔が近づいた。優しく触れるだけのキス。
顔を離して二人とも恥ずかしくて顔を逸らした。
「もう一回、いい?」
「いっぱいキスして、一からお互いを知っていこうね。何回でもしよ、キスもその先も膝の上に乗せてよ。キスしやすくなるよ」
「その膝は」
「なんで?」
「その、立ってるから」
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