第6話 彼氏のその先は

 お家デートから明けた一月の中旬、なんだかおかしな噂を聞いた。あちらこちらで勤勉なカズオ君が胸を触った後の先について男の子に聞きまくっているそうだ。


「カズオもそういう事に興味があるのかいいぞ教えてやる」

 今のところ秘密で付き合ってはいるが、一部の女子には伝わっている。彼女達は言わないでいてくれるが、ここは釘を刺した方が良さそうだ。


「最近、色々な男子に胸から先を聞いて回っているってホント?」


「同性の友人があまりいなかったのでな、ひとまずクラスの男子に聞いている」


「何でそんなこと聞くの? 恥ずかしいでしょ? なんで分からないの?」


「その分からないことは聞かないと理解が追いつかない」


「その先なんて、彼女の私がいくらでも教えてあげるじゃない」


「その、ごめん。悪気は無かったんだ」


「今は秘密で付き合っているから、いいけどバレた時に噂でカズオ君は彼女とここまで進んだとか言われたら嫌だよ。分かってよ」


「ごめん、本当にごめん」


「もう周りに聞かないでね」


「そうするよ」


「明後日、うちに遊びにおいでよ。親いないしさ」


「パジャマパーティーか、初めてだから緊張するな」


「じゃなくて、先を教えてあげるから」

 すごい恥ずかしいことを言っている。それぐらい彼女が言っているから気付けよ馬鹿。


「家はどこにある」

 わざわざ迎えに行くのもしゃくだ。住所を教えたので、勝手に来いとすることにした。


 カズオ君の家と私の最寄りの駅は同じ線路の始点と終点だ。家には十六時くらいに来てもらって、夜ご飯を振る舞うことにした。


 その後、シャワーを浴びて、アイス食べて部屋に誘う。で、部屋に入った瞬間本能でする事になる。流石にも男なので、くらいはするだろう。

 でもまさかカズオ君の最寄りからうちの最寄りに来て、運悪く折り返して、カズオ君が寝ているうちにカズオ君の家の最寄りに着いて電話で「時間は進んでいるのに場所は動いてない。これはタイムマシンか」と、言われるとは思わなかった。


 駅まで迎えに行った。うちは三丁目だが、二丁目に行かれたら面倒だからだ。


「申し訳ない。まさか現代にタイムマシンがあるとは」

 一応、謝られているので怒るに怒れない。ただ時間をロスしたので到着時間は十七時半、夜ご飯開始が十九時、終わりが二十時。

 先にシャワーに入らせようとしたら、シャンプーがどれか分からないので説明をした。お風呂も沸かしたので、思ったよりゆっくり入られ、私が上がったのが二十二時。


 カズオ君、爆睡である。何で、彼女の初お家デートだよ。こうさ、緊張感とか無いの? 電車で寝たよね。なのにまた寝るのかよ。


「あっ、お風呂上がった」

 眠りまなこで、私の方にカズオ君は振り返った。


「なんか落ち着いちゃってさ、寝ちゃった」

 自分の家みたいに安心してくれたんだ。嬉しいな。私は一瞬で幸せな気持ちになった。


「それで僕はどこで寝れば、いいの? もう眠くてさ」


「部屋余ってないから」


「そしたらここで寝る」


「カズオ君は私の部屋で寝るの!」

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