第4話 俺だけで戦うのは嫌
未だに何が起こったのか信じられない。
急に爆発音がしたと思って行ってみたら、巨大な九尾の狐の怪獣――妖魔と可愛らしい衣装に身を包んだ魔法少女が戦っていた。
帰って翌日のテレビや新聞を確認してみるが、その情報は載っていなかった。
「夢でも見てたのかな、鑑定さん」
『解答:夢ではありません』
だよなー。
いや、異世界転移の直前まで行った俺からするとそう驚くことでは無いのかも知れない。
驚くべきなのは、平和と思っていたこの日本で災害紛いの出来事が起こったにも関わらず、何も変わっていないことだった。
そう、何も変わっていないのだ。
次の日に様子を見に行ってみたら壊れた家屋は元通りになってるし、近隣の住民も平然としていた。
こっちは狐につままれた気分である。
「っと、そうだ。大妖魔を倒した時にレベルアップしたって言ってたっけ。ステータス見せて」
鑑定さんにお願いすると、俺の目にステータスが映った。
どれどれ……。
ステータス
名前:
種族:ヒューマン
職業:学生
体力:230(+2300)
魔力:230(+2300)
筋力:230(+2300)
知力:230(+2300)
耐久:230(+2300)
敏捷:230(+2300)
幸運:230(+2300)
所有スキル一覧
コモンスキル
・無し
エクストラスキル
・[鑑定]
・[アイテムボックス]
・[全能力上昇]
ユニークスキル
・[ショップ]
装備
〈絶神剣アヴェルナーク〉
……。
あ、あれ? 能力値の桁が……。急に視力が悪くなったのかな?
「ち、違う、本当に桁が違う!! 特に[全能力上昇]って向上してるステータスがヤベェ!!」
俺は慌てて[全能力上昇]の効果を確認した。
[全能力上昇]
分類:エクストラスキル
効果:基礎能力値の十倍、能力値を上昇させる。
うわあ、シンプル故に強いやつだあ。
ま、まあ、これならまたあの化け物みたいなのに遭遇しても大丈夫そうかな?
……そう言えば、あの化け物と戦ってた女の子、魔法少女? は大丈夫だったのだろうか。
というかそもそも魔法少女ってなんなんだ?
あんな化け物と戦ってるとか、のっぴきならない事情でもあるのだろうか。
「鑑定さん、魔法少女って何か分かる?」
『解答:各地に発生する妖魔を退治する役割を担っていると思われます』
こんな質問にも答えてくれるのか。
「あ、そう言えば、妖魔を倒したら[ショップ]にポイントが入ったよな。もしかしなくても、妖魔って魔物と同じ扱い?」
『解答:はい』
「……じゃあ、俺が妖魔を横取りしちゃってもいいかな?」
『解答:問題ないでしょう』
だよな!! いやー、実は転移拒否で得たポイントがいつか無くなっちゃうと思うと残念で仕方がなかったんだ!!
ここでポイントを補給する方法が見つかった。
決めたぞ。
俺はあの妖魔とやらを狩って狩って狩りまくって、ポイント王に、俺はなる!!
「しかし、あの化け物と直接戦うのはなあ……」
いや、怖くはないのだ。
俺には絶神剣アヴェルナークがあるからな。
あの極太レーザーで消し飛ばせないものはこの世に無いと思う。
でも俺自身はスキルでちょっと強くなっただけの人間だ。
せめて、こう、仲間が欲しい。強くて頼れる仲間が。
俺だけで戦うのは怖いから嫌。
そういう仲間に妖魔を弱らせてもらって、トドメの美味しいところを俺がいただく、というのがベストだと思う。
「うーん、でも俺の話を信じてくれる奴がいるかなあ?」
俺が魔法少女やら妖魔やらを認識できたのは、鑑定さんによるところが大きい。
彼――彼女? が、いなかったら俺は妖魔の存在に気付きもしなかっただろうしね。
「鑑定さん、仲間をゲットする方法ってないかなあ?」
『提案:奴隷を買うのは如何でしょうか?』
「は? 奴隷って、そんなのどこに――もしかして[ショップ]か!!」
『解答:はい』
ちょっと待って!? 俺のスキルって人身売買もできるの!?
[ショップ]を開いて中を確認してみると。
「売ってる……しかもアヴェルナークを見た後だと凄く安価に感じる!!」
俺は即座に購入ボタンを押そうとして、ピタッと手を止める。
冷静に考えてみて……。
「奴隷って、倫理的にアウトじゃね?」
良心が咎めるというか、やっても良いのかなって一歩踏み留まる。
そして、胸に手を当てて自分の心に聞いてみる。
「よし!! 良心より欲求!! 奴隷、買っちゃおう!!」
自分の心に確認を取るのは大切だ。あとで後悔しないために必要だからな。
確認ヨシ!!
「んー、いざ買おうと思うと悩むよなあ。ガチムチのオッサンよりは、可愛い女の子が理想か」
『提案:お望みの奴隷を見繕います』
「お、まじ? よろしくー」
しばらくして、鑑定さんが適当な奴隷を見繕って表示してくれた。
顔写真が購入画面に映し出される。
うーん、どの子も俺の希望に沿った可愛い子だけど、ビビッと来る子がいないなあ。
画面とにらめっこすることしばらく。
「あれ? この子って、エルフ?」
『解答:はい。とあるユニークスキルが原因で故郷を追われ、奴隷狩りに捕まった少女です』
「わお、奴隷になった経緯まで分かるのか」
でもエルフか。エルフ……。
見てみたい。超見てみたいんですけど!!
「この子で決定!!」
俺は速攻で購入ボタンを押した。
必要なポイントはアヴェルナークの十分の一くらいだけど、まあ、可愛いから気にしない!!
ポチッとな。すると、眩しい光が生じる。
その光が収まると、俺と同じくらいの年頃であろうボロ着をまとったエルフの女の子がいた。
「ん……ここは……?」
可愛らしい女の子だった。
日本人には有り得ない金色の髪と翡翠色の瞳、鼻筋の通った綺麗な顔立ちは、儚げな雰囲気と相まって美しいとすら思える。
そして、最大の特徴はその耳だった。
ファンタジーライトノベルによく出てくるエルフそのままだった。
女の子が困惑したように辺りを見回し、そして俺と視線が交差する。
警戒するわけでもなく、ただ静かに俺を見つめている。
「……そう……遂に……お迎えが来たのね……」
悟ったように呟くエルフっ娘。
「天使様はもっと神々しいものかと思っていたけれど……以外と人間に近しいのね……」
「いや、違うぞ」
何やら盛大な勘違いをしているらしい。
「君は俺に買われたんだ」
「……そんな。だって、私はさっきまで牢屋の中にいて……」
「ここは君のいた世界じゃない」
俺は諸々の事情を説明しようとして――ハッとあることを思いついた。
これ、俺がやってみたかったアレができるのでは?
俺は不思議空間で女神に言ったことを思い出す。
『俺はどちらかと言うと、主人公が仲間たちとの大冒険を繰り広げる裏側で暗躍したり、謎の第三勢力として戦いたいタイプなんだ』
そう、第三勢力。
主人公が魔法少女として、敵が妖魔たち。そして、謎の第三勢力!!
秘密結社ごっことかできるかも!!
「君には、俺に協力してもらいたいんだ」
「協、力?」
「すべてを話そう。俺が知るすべてを」
ちょっと俺、カッコ良くなーい? まるで何もかもお見通しですよ、みたいな雰囲気よ!!
俺は即興でストーリーを考える。
普段からライトノベルや漫画ばかりを読み漁っていた俺の想像力を侮るなよ!!
俺はエルフの女の子にあることないこと吹き込むのであった。
――――――――――――――――――――――
あとがき
ワンポイント一言。
多分、主人公は野放しにしちゃいけないタイプの人間。
「面白い!!」「奴隷を買うのにノリが軽すぎる」「主人公がゲスすぎる」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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