第29話元夫達の現状2

 現在、鈴木グループは急速に傾きつつあるようです。


 まず、第一に中小企業が鈴木グループから手を引きました。

 如何に大企業であろうと、下請けを敵に回して今まで通りにやっていける筈がありません。鈴木グループは今までにない好条件を突きつけたようですが、社長達が頷くことはなかったそうです。



『仕事に私情は挟みたくはない。それでも限度というものがある』


『夫婦間の事や、男女の仲は他人がとやかく言うべきじゃないが、やり方ってものがあるだろう』


『鈴木の跡取りは常識ってもんが欠けているのかねぇ?それとも人の心ってものがないのかい?あんだけ尽くしてくれた奥さんを裏切るなんてありえない』


『聞くのも酷い醜聞は知っている。それを全部鵜呑みにした訳じゃない。こっちだって事実確認はしたよ。結果は噂以上に酷かったがなぁ』



 鈴木グループはまさか断られるとは思っていなかったのでしょう。

 金さえ払えば下請け業者は自分達に鈴木グループに尻尾を振ると思い込んでいたのです。そんな筈がありません。ああいった縁の下の力持ちの方々は義理人情に厚いですから。元夫を始め、鈴木家の人達はそういった人達に昔からあまり好かれていなかったようです。あの上から目線の物言いが良くなかったのでしょう。私もやんわりと注意した事がありましたが改善される事はありませんでした。


 中堅中小企業も次々と鈴木グループから手を引く企業が増えました。


 信用を第一とする企業は元夫達が考えるよりも多いのです。


 いずれにしても、彼らの再婚は早すぎました。

 これで数年経っていれば話は別だったでしょうに……。堪え性のない方はこれだから困りますわね。


 経営陣の中にはあからさまに嫌悪を露わにして鈴木の営業の者を追い出した方もいらっしゃったようです。

 そうですよね。そうなりますわよね。

 元夫の信用はゼロどころかマイナスです。

 結婚はいわば『契約』です。それを一方的に破棄した相手を信用するのは容易ではありません。鈴木家は「円満に離婚した」と言っていますが、慰謝料を支払った事を「円満に離婚した」と捉えている節がありますからね。そういった処がきっと透けて見えるのでしょう。


 企業としても、いつ自分達の会社を粗末に扱うか分からない相手と手を取り合いたくないと考えても不思議ではありません。

 それに、皆さま優秀ですからね。引く手あまたです。伊集院家の仲介がなくても引く手数多だったでしょう。


 このように企業が次々と手を引いた事で元夫達は内部を再構築しなければならなくなりました。それも新たな人財も引っ張ってくる必要があったわけですから、全てが後手に回った感がありますわね。

 そんな動きを週刊誌やTVで大きく報道しないわけがありません。

 ゴシップ記事としても大きく取り上げられ、面白おかしく話題にされました。元夫が激昂しているようですが、どうにも火に油を注ぐようで笑ってしまいます。


 流石の鈴木家も騒ぎがここまで大きくなるなど予想外だったようで、慌てているようですわ。

 事態の収拾が付けられず右往左往していると聞き及んでおります。


 困った鈴木会長達は、藁にも縋る想いで何故か伊集院家に助けを乞いに来たようです。

 何故ですの?


『伊集院家からの口添えさえあれば……ッ!』


 と、鈴木グループの会長夫妻が土下座をして懇願してきたそうですわ。

 どうしてそうなるのでしょうか?……本当に理解できませんわ!


 そもそも私達に助けを求められる立場だと思っていらっしゃるのですか!?


 まったく何を考えているのでしょう!

 


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