第25話 VS闇神官
一度は光り輝く神聖な使命に導かれた神官が、過酷な闇に取り込まれ、魔物と化した姿。
彼の姿は、昔の神聖なる者からは想像もできないような暗黒に囚われた存在となっている。
身に纏わる神聖なる装束は、かつての輝きを失っている。血に濡れ、傷だらけ。
それはまるで、彼が神聖なる光から逸脱し、自らを深淵に投げ込んだ結果としての痕跡が残されたかのように見えた。
そんなが杖を景虎に向けた。
「さて、飛鳥殿……尋ね人は中にいない様子。ここは本気を出してもよろしいか?」
「本気……とは?」
「本気を出した結果、この廃教会を破壊してもよろしいか? そう聞いているのでござるよ?」
飛鳥シノは、そんな無茶な質問をされて混乱するが、魔物の動き――――闇神官が杖先に魔力を込めて始めたのを見て、決断する。
「やってください! その闇神官を全力で倒してください!」
「一切承知!」と剣先を闇神官に向けて駆け出した。
だが、そのやり取りの間に、闇神官は戦闘の準備をしていた。
魔力を込めた杖で地面を叩く。 すると、邪悪な精霊――――闇に溶解した人間のような魔物が召喚される。それも2匹――――
さらに、杖から発せられた魔力は、教会を囲むような結界に姿を変えた。
「邪魔だてをするな!」と景虎は、闇神官を守るように立ち塞がる精霊に斬りかかる。
しかし――――
「むっ! 刃が通らぬ? 結界の魔力によって強化されている!?」
その直後、景虎は胸に衝撃を受けて吹き飛ばされた。
教会の壁に衝突。さらにその奥に張られた結界に接触して、電撃のような痛みが景虎を襲う。
「い、痛痛痛たたた!」と背中を抑えながらも、景虎は立ち上がる。
「結界の痛みもさながら、魔力で打撃を強化している精霊が厄介でござるな。闇神官本体を倒すには、精霊を排除せねばならないでござるな」
「景虎さん! 気をつけてください。闇神官が消えました」
「何!」と2匹の精霊から闇神官がいた場所を見る。 確かに闇神官は消えていた。
「結界から出てはいない……はず? どこに消えた?」
「後ろです! 景虎さん!」
飛鳥の声に振り向く。 そこに闇神官はいた。
その杖が景虎に向けられた。
(――――ッ! なぜ? 先ほどまでは、確かに気配が消えていた。どうやって気づかれずに背後を取った!)
その杖から放たれたのは純粋な魔力の塊。
衝撃で吹き飛ばされる。
激しい痛みに包まれながら、地面に着地。今度はこちらの番と、刀を構え直して闇神官がいた場所に駆ける景虎。しかし――――
「また、気配が消えた。 なるほど――――」と視線を床に向けた。
「どうやら影に潜んで移動できるようでござるな。影の移動。魔力強化……全ては結界による強化効果のよう……ならば簡単でござる!」
景虎はその場から飛び上がる。 その跳躍は高い――――剣を天井に突き刺した。
そして、落下。すると今度は地面に剣を突き刺した。
――――斬。
彼が何を斬ったのか? それは目に見えない物。
景虎が斬ったのは空間。すなわち――――
「結界を切断させてもらったでござる!」
その直後、目に見えないガラスが割れたような音が教会に響いた。
「そんな、景虎さん? 結界の魔力そのものを――――斬ったのですか!」
飛鳥は驚愕する。 結界を斬る。それは空間そのものを斬るような神技だった。
さらに驚愕するのは、闇神官だ。 結界を破壊されると思っていなかったのだろう。
すぐに正気を取り戻したのか、手下である精霊2匹に攻撃を命じた。
だが――――
「やはり、結界による強化効果がないと、この程度でござるか――――動きが遅い!」
景虎は刀を振る。 その動き――――
一度だけ刀を振ったようにしか見えなかったが、2匹の精霊に太刀筋が同時に入った。
真っ二つに体が切断された精霊は、その場で霧散された。
「残りは1匹のみ。闇神官どの、いざ尋常に勝負でござるよ!」
闇神官は、杖に魔力を再装填。 再び、結界を張り精霊を召喚するつもりか?
しかし、景虎は迫る速度の方が勝っている。
結界を諦めた闇神官は、杖を景虎に向けて攻撃魔法に切り替えた。
それは『呪詛の暗黒波動』と言われる魔法。 最上位の呪いを打ち込むだけではなく、ここではない闇の世界から力を繋げる一撃。
魔物で言うならば、巨大な強敵《ボス》でも葬り去る攻撃。
だが、それを発する間もなく、闇神官の腕は斬り飛ばされる。
「そして、もう一度――――」と景虎は刀を走らせる。 今度は腕ではなく、胴体に向けられた。
――――斬――――
闇神官は体と命も2つに切断され、倒れた。
「さて――――これで、ゆっくりと調べられるでござるな」
「……」
「ん? どうかされたかな? 飛鳥どの……?」
「すっ!」
「す?」
「凄い! どうやったのですか? 結界を完成させた闇神官を圧倒するなんて!」
「おっ? 応? 結界を斬る技は有村家の秘伝なので教えるわけにはいかないのでござるが……」
飛鳥シノは景虎の体を確かめるようにペタペタと触り始めた。
「むむむ……その教授を先に探すとするでござるよ」
景虎は困って、誤魔化した。褒められ過ぎて照れてるようだ。
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