第35話 恋愛? 舐めるなよ。努力しない奴が出来ると思うな。

 どうしよう。ミイちゃんとマジで付き合う事になってしまった。


 莉々伊ちゃんが知ったら俺はどんな目に遭うのだろう。そして俺よりもミイちゃんの身が心配になる


 かつて錬蔵にやったように、山に捨てて来たりなんてしないよな?


 あれは錬蔵だから生還出来たのであって、ギャクキャラではない俺やミイちゃんが生きて帰れるとは思えない。



「武太先輩。私、昨日の放課後は校門で待ってたのに、どうして来なかったんですか?」



 別に約束はしてなかったじゃん。


 待ってたと言うよりは待ち伏せしてたんじゃん。



「ちょ、ちょっとね。」


「仕方がありませんので、今日は一緒に登校しましょう。」



 俺と一緒に堂々と母の朝食を食べる莉々伊ちゃん。


 何故朝から家に莉々伊ちゃんが家にいるかって?


 母さんが何の躊躇いもなく家にあげたからだ。ニヤニヤしながら。



「えっと……じ、実はさ。」



 もう言ってしまおう。


 今の俺は完全無欠ではなくなってしまったものの、莉々伊ちゃんには少ししかドキドキしない。


 昨日ミイちゃんと車内で二人きりになった時のような心臓バクバク状態ではないのだ。


 つまり、俺は最初からミイちゃんが好きだったのだろう。



「あの、俺……実は…………。」


「あぁ。ミイちゃんと付き合うという話ですか? ミイちゃんからLIMEで聞きましたけど、莉々伊は気にしませんよ? 私は大人の女ですので。」



 やけに物分かりが良い。


 態度も言葉遣いも特に変わったところはないし、本当に気にしてない?


 いや、でも普通そんな事あるか?



「結婚しているわけでもありませんし、浮気だなんて責め立てる事はしません。莉々伊は大人ですから。あ、スプーンがねじ切れちゃいました。」



 ひぃっ



「私は大人……私は大人……。大丈夫です。最悪二股すれば問題ありませんからね?」



 問題だらけだ。



「あの、親が聞いてるし……その話は後日で、どうでしょう?」



 母さん、頼むから乱入してくれ。昨日のように。



「武太先輩は親に聞かれるの、恥ずかしいですか?」


「う、まぁね。」



 当たり前だろ。親の前で二股宣言するなんて嫌だよちくしょう。


 二股なんて最初からする気はないけど。



「同居したらアノ声も聞かれるんですよ? 今からこのくらいの会話を恥ずかしがってたら身が持ちません。」



 何て下品な子だろう。


 清楚系は清楚じゃないという噂は本当だったのか。



「母さん、何とか言ってくれよ。」


「二股はまぁ……良くないんじゃないかしら?」


「何で取ってつけたような言い方なの?」


「ふふふ。当然二股なんて最低よ。でもね。あの全くモテない武太が女の子を、しかもスクールカースト最上位女子を二人も連れて来るなんて嬉し過ぎて……。女としては最低野郎と思いつつも、母としては嬉しさを隠せないってわけ。」



 なんじゃそりゃ。



「武太みたいなつまんない男は後になってフラれる可能性もあるんだし、今のうちに二人とも囲っちゃえば良いんじゃないかと思わなくもなかったり。片方にフラれても片方は残るでしょ?」



 信じられん親だ。よそ様の娘さんになんて事を提案するのか。



「保険って事? 母さんこそ最低じゃん。」


「お黙りなさいっ! それもこれもあんたがモテなさ過ぎて結婚なんて出来そうな気配を微塵もみせないから悪いんじゃないの! お蔭で母さん最低な提案をせざるを得ないんですからね!?」



 ぎゃ、逆ギレ……。



「大体あんたはね、幼馴染の零子ちゃんを大事にしないであんたと同レベルくらいの馬の骨に横から掻っ攫われてたわよね? 母さん何度も言ったでしょ? あの娘はモテるのに何故かあんたを好きだから絶対に告白しておけって。」



 そう言えば中学の頃から散々言われてたっけ。


 つか零子ちゃんの元カレって俺レベルなのかよ。



「あんたがさっさと告白しないからあの娘、変なのと付き合って今では恋愛観がぶっ壊れてんのよ!?」


「え? 俺のせい、なの?」



「知らないわよ。勢いで言っただけだから。」



 このアマ。


 少し責任感じちゃっただろが。


 それより母さんが零子ちゃんの事情を知っていた事に驚きだ。まぁ、家も近いし変な事ではないのか。



「あんたはただモテないんじゃないの。モテる努力を一切しないからダメなの。待ってればいずれ運命の相手が見つかるとでも? はんっ。」


「いや、俺にも事情が……。」


「どうせ自分からガツガツいくのが恥ずかしいってつまらないプライドでしょ。勿論好きでもない相手にガツガツ来られたらうざいと思うけど、零子ちゃんは無自覚であんたを待ってたのよ? 零子ちゃんに限って言えば、そこで攻めないあんたが悪い。」



 何も言い返せない。


 母さんから零子ちゃんに告白しろと言われていたあの頃、好きかどうかよく分からないというのもあったが、恥ずかしいからアプローチしたくないという気持ちは強かった。


 彼女が欲しいと言っておきながら何も行動しない。


 本当にその通りだ。



「大体あんはいつもいつも彼女欲しいって言う割りには服装も髪型も整えないし、特に部活に打ち込む訳でもないしで本当に…………。」




 母さんのお小言が始まってしまった。


 しかも今回の小言に関してはちょっと胸が痛い。



「まあまあお義母様。今は私がいるから良いじゃありませんか。」


「え? あ、そうね。」



 莉々伊ちゃん……。



「大丈夫です。仮にどうしても武太先輩が私とお付き合いしてくれなかったとしても、私が勝手に使用済みティッシュを採取して勝手に妊娠してお孫さんをお見せ致しますので。」


「ちょっと待て。」



 ほんとどういう事なんだよ。


 むしろ酔わせて無理矢理やった方が確実なまである。



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