第2話帰って来たじいちゃん

ある日の夕方、じいちゃんはいつもの散歩に出かけた。

僕が小さい頃はよく一緒に歩いたけど、中学になってからは部活が忙しくて全く行けなくなっていた。

じいちゃんは、いつもと同じ散歩コースのいつもの横断歩道を渡っている時に、右折してきた車にはねられた。スピードが出ていたわけではないけど、頭を強く打ったらしく、病院に着く前に死んでしまったらしい。


駆けつけた病室のベットに横たわっているじいちゃんは寝ているようにしか見えなかった。

すぐに起き上がって「おい、帰るぞ」と言いそうだ。


「じいちゃん…じいちゃん、起きてよ。皆んな心配するからさ、こんな冗談全然面白くないよ…」

僕はじいちゃんの体を揺さぶりながら話しかけた。

ばあちゃんは、じいちゃんの顔を撫でながら泣いている。

母さんもじいちゃんにすがって泣いている。

父さんも立ったまま泣いている。父さんが泣いている姿を初めて見た。


今朝学校に行く前も、ディズニーランドで何に乗るか、大きなターキーを何本食べれるかとか。温泉のバイキングではじいちゃんは肉しか食べないとか、そんな話で盛り上がっていた。

出掛ける時は、ハイタッチをして「今日も楽しんで来いよ」と言って見送ってくれた。

いつも通りの朝だった。


それなのに、じいちゃんは突然いなくなってしまった。

あんなに元気だったのに、死んだなんて信じられるわけがない。

神様は、大金が当たったからその代わりにじいちゃんの命を持っていってしまったのか?

お金なんていらないからじいちゃんを返して下さい。神様お願いします……

僕はそんな事を思いながらずっとずっと泣いていた。


家族全員が、悲しみの底なし沼に落ちてしまったようだった。



それから何日間は、お通やとお葬式と大人達は忙しそうだった。親戚やじいちゃんの友達などたくさんの人が来ていた。


それでも、全てが終わると日常が戻ってきた。

人が大勢来ていた時に比べると、家族4人の家はとてつもなく静かだった。

…家族4人…


僕は夜ご飯の後も、なるべくリビングに居るようにしていた。1人で部屋にいたくなかったし、ばあちゃんや母さんの事も心配だった。


「そういえば、じいちゃんが当てた宝くじ

取り替えてこなくちゃね」

ばあちゃんが言った。

「…うん、そうだね…でも…お父さんがいないのにお金だけあっても全然嬉しくないし、何にも楽しめないわ…」

母さんが泣きそう言った。父さんも黙って頷いた。僕もそう思った。

じいちゃん抜きでどこに行ったって楽しいわけがない。

するとばあちゃんが

「いつまでも泣いてばっかりで暗くなってたらじいちゃんに怒られちゃうよ。そりゃ、じいちゃんがいないのはとっても悲しいけど…

でも、じいちゃんは家族みんながいつも笑ってるのが好きだったでしょう?ユイもりんも健斗君も、そんなに暗い顔してないで。私もだけどね…さっ、これからもみんなで頑張りましょう!」



「その通りだぞっ!さっすがばあちゃんはいい事言うなあ!惚れ直した!」



⁈⁈⁈⁈


「じいちゃん⁈」

「お父さん⁈」

「お義父さん⁈」


どこからかじいちゃんの声が聞こえた。

4人で固まったまま目を合わせた。

「今お父さんの声がしなかった?」

「した。確かにお義父さんの声だよな」

「聞こえた、聞こえたよ、絶対じいちゃんだった!」

「じいちゃん…」

ばあちゃんがリビングのドアを開けようとした時…

ガチャっとドアが開いた。


「おぅ、ただいま」



!!!!



じいちゃんが立っていた。

「ただいま笑」

「亮ちゃん…」


ばあちゃんがじいちゃんの名前を呼んだ。


「ただいま、花。悪かったな、悲しくさせて、悪かった…」

じいちゃんがばあちゃんを抱きしめながら謝っていた。

「お父さん?え、幽霊?まさか生き返った?

お父さん!」

母さんが泣き出した。

父さんが泣いている母さんを支えながら、やっぱり泣いていた。

僕もすごく驚いたけど、じいちゃんが目の前にいるのが死ぬほど嬉しかった。

じいちゃんに飛びついて泣きながら叫んだ。

「じいちゃん、じいちゃん、会いたかったよ

もうどこにもいかないで!」

「ああ、もうどこにも行かない。悪かった、悪かった…」



普通に考えれば、死んだ人が戻ってくるなんて信じられないはずなのに、僕達家族は嬉しくてしょうがなかった。








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ユーレイじいちゃん 天天空空 @tentenkuutan

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