名付け親ー10

 しばらくの沈黙の後、


「それは、頭ではわかってるんだよ。

真澄なら、どんな俺でも応援してくれる。


真澄はいつも俺の中にいて、俺がやる事を一緒にやっているって、そう思おうとしているんだけど。


でも、本当はどうなんだろうって考えて逆戻りしたり、その繰り返しなんだよ。

これって、前に進んでるって言えるのかな」


「もうここまで来てるんだから、一歩進んでるんだよ」


目を瞑ったまま、上を向くショウくん。

そして、少し微笑んで、話し始めた。


「お前は見ることできなかったけど、レイちゃんちの練習場の解体見に行ったんだよ。

ぐっさんも哲治さんも涙流してたよ。


その時に痛感した。

もう俺達は昔の様に戻ることはできないんだって。


レイちゃんが言ってたよ。

これで完全に”退路を断たれた”なって」


「もう、前に新しく進むしかないってことだね!」



「なんかさあ!最近レイちゃん良いこと言うんだよな。

ちょっとムカつくんだよね!」


「でもさ!映画の会議の時は、爽快だったじゃない」


「そうだな!

レイちゃんって、なんかそういう生まれついてのリーダーシップみたいなの持ってるのかもな」


「まあ、ワガママっていうか、ワガママだからこそっていうか。

そういうとこあるよね」


「やっぱり、なんかムカつくなー」



そんな話をしているうちに、唄もシオンもすやすや眠っていた。

1階の部屋のベビーベッドにはシオンを寝かせ、2枚の布団に、大人2人子供2人でギュウギュウになって寝た。




 その後ルーが日本に戻って来て、私達は自分のアパートに戻った。

ルーは、シオンにメロメロになっている。

でも、ケイトをいつも優先してくれる。

ご飯を食べさせてくれたり、

公園に遊びに連れて行ってくれたり。

そして、いつも私を抱きしめてくれたり。

ルーは本当に甲斐甲斐しく、私達の面倒を見てくれた。


でも、10日程でフランスに帰っていった。

次はいつ会えるのやら。


その道を選んでしまったのは、私自身だ。



 そして、ショウくんは、新しい道をひとりで進んでいかないといけない。

私に出来ることは、時々こうして、おっぱいを見せて笑わせるとか(失敗したが)、話を聞いてあげる事くらいしかない。



きっと、この選択や経験や想いが私たちにインプットされる。



ーKerlyー



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