きざしー2

 私は買い物が苦手なので、ケイトは、服もオモチャも、よその子に比べて手持ちが少ないらしい。


 ある日、森の公園で遊んでいたら、突然雨が降って来た。

 

「雨が止むまで、修平の家で遊ぶか?ケイト

ママ」


「私は、人のテリトリーに入るのは抵抗がある」


「獣か!」


「とりあえず、オレの家の方が近いから、少し寄っていけ!大丈夫だ!」


「悪い奴も、みんな大丈夫って言う」


「確かにな!

で、どうするよ?」


「私、これでも喧嘩は強いからな。

必殺技があるんで」


同じくらいの子供の生活に少し興味もあったのでついて行ってみるか。


 古いアパートの一階で、部屋もそんなに広くない。

物で溢れているが、整理整頓はされている。


 ケイトと修平は、部屋に入るやいなやオモチャを物色し出した。


「貧乏な人の家でも、こんなにオモチャがあるのか?」


「ずいぶんだなー!

たしかに、貧乏だとは言ったけど」


「ケイトママって、まともな返答が返ってこないっていうか、言葉の選び方が独特だよな!」


「そうなの?」


 そんな話をしていたら、ケイトが「マミー」と言いながら、キーボードのオモチャを持って来た。

小さいけれど、色々な音も出るし、リズムボックスもあって本格的だ。


弾けとばかりに、私に押し付けてくる。

ケイトは覚えているというの?

赤ちゃんの頃、ケイトを抱いたまま、レコーディングでキーボードを弾いていたことを。


アンパンマンのマーチを弾いた。

涙がこぼれ落ちた。


「おいおい!感情込め過ぎだって!

てか、本格的過ぎだろ?」

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