第3話捜索願い

登場人物紹介


主人公 白雪 冬樹


所長  槇原 優 


助手  瑞穂 瞬  


静岡県警 塩坂 登  


依頼人


渡辺 真紀


真紀の娘 真優


真紀の元夫


鈴木 正孝


鈴木の同僚


田中 勉 


警視総監


真木 勝

 

      



 


娘の真優を探して欲しいという、母,渡辺真紀からの依頼であった。


短大生の真優は、真面目で明るく、交友関係も広かった。


母子家庭で生まれたため、アルバイトをして、学費などの足しにしていた。


渡辺 真紀「お願いです。真優を探してください」。


警察にも捜索願いを出してから一週間以上。


まだ、渡辺真優は見つかってないという。


真優の足取りは警察も把握しており、静岡県新富士駅で、白い乗用車に乗るところを


目撃されている。


その後、富士宮市のスーパーで買い物をしている事も、防犯カメラから特定されている。


その後の足取りがつかめない…。


真紀の話を聞いている時に電話が鳴った。


所長「こちら、槇原探偵事務所です」。


その電話は、真木 勝からであった。


真木「もしもし、真木です。渡辺真優さんに関する情報で進展があったぞ」。


そう話すと、「静岡県警から連絡があり、白い乗用車の所有者が判明したとのことです」。


「名前は鈴木 正孝 55歳 富士宮市小泉…」。


「今、所轄が鈴木のアパートに向かっているところです」。


「鈴木さん 鈴木さん…」。(ガチャ)

「はい」。

「鈴木 正孝だな。」

「ええ、そうですが、何か?」。


「私は静岡県警の塩坂と申します」。警察手帳を見せる。

鈴木「なんの御用ですか?」。


塩坂「渡辺 真優さんをご存知ですね?」。写真を見せる。


鈴木「!、ええ、知っています」。


塩坂「今どちらに?」。


鈴木「今はいません」。


塩坂「隠すとためにならないですよ?」。


鈴木「本当です」。「先週の土曜日まではうちにいました」。


塩坂「彼女との関係は?」。


鈴木「彼女が、私がSNSにあげたキャンプ動画に興味をもって」。


「そのうち連絡を取りたいと」。


塩坂「それで会ったということですか?」。


鈴木「はい、それだけです」。


塩坂「今日は署のほうにご足労願いますか?」。


鈴木「私が一体何をしたって言うんですか?」。


塩坂「それは署のほうでゆっくり聞かせてもらいます」。


鈴木「…、わかりました。準備をしてくるので、少し待っていてください」。



警察署に連行された鈴木は、真優さんを迎えに新富士まで言ったこと。


途中、スーパーで買い物をして、アパートに一緒に戻って来た事。


彼女が静岡おでんを作ってくれた事を話した。


塩坂「それから?」。


鈴木「私は働いているので月曜日の朝から、金曜日の夕方まで家にはいません。彼女


がその間、何をやっていたのかまでは知りません」。


塩坂「彼女も母親から捜索願いが出されている」。


鈴木「えっ!」。


塩坂「本当のことを言ったほうが身のためだぞ」。


鈴木「彼女はスーパーで買い物をしてくる時に母親に連絡しておくと言ったんです」。


塩坂「確認したのか?」。


鈴木「いえ、彼女の言うことを信じていましたから」。


塩坂「会ったばかりの人を信用できるもんですかね?」。


鈴木「連絡を取り合っているときから、彼女は信用できると思いました」。


「母親のことや、自分のこと、夢や決まった内定先の会社のことなんかも話してくれましたから」。


塩坂「見ず知らずの人にそこまでね」。


塩坂「今、お前の部屋を鑑識が調べている。車もだ。いずれ証拠が出てくる」。

「今日は泊まっていけ」。


鈴木「…」


翌日

鑑識「結果が出ました」。


塩坂「そうか」。「彼女がいたという証拠は出たのか?」。


鑑識「はい、DNA鑑定の結果、彼女があの部屋に居たのは間違いありません」。


塩坂「よし、鈴木を誘拐事件の犯人として逮捕状を請求しよう」。


塩坂「車も徹底的に調べろ、必ずなんらかの証拠が出るはずだ」。

鑑識一同「はい」。


塩坂と鑑識達は、鈴木の部屋から車まで隅々まで調べた。


その結果、彼女の毛髪が部屋とお風呂、トイレにも。扉にも指紋が残っており、彼女が鈴木のアパートにいたことは間違いなさそうだ。


塩坂「彼女をどこにやった?」。


鈴木「知りません」。


塩坂「証拠も挙がってんだ」。「素直にはいちまったほうが楽になるぞ」。


鈴木「…」。


塩坂「今度は黙秘か?」。「いつまでも付き合うからなっ」。


槇原「冬樹、瞬と共に富士宮に行ってくれ。私から真紀を通して、静岡県警には話をしておく」。


冬樹「わかりました。瞬、行くぞ」。

瞬「はい」。


二人は新幹線に乗り富士宮を目指した。


冬樹「富士宮か…」。(心の中で元妻の夏樹のことを思っていた、夏樹は富士宮出身だからだ)。


瞬「富士山が見えて来ましたね。富士宮ってどんなところなんですかね?」。

冬樹「人口12万人ほどの町で、富士山の一、二合目って言ってもいいくらい、坂だらけだ」。


瞬「詳しいんですね、冬樹さん」。

「もしかして、富士宮の出身ですか?」。

「それはないですよね?」。

「まえに大阪府出身って言ってましたから」。

「誰か知り合いでもいるんですか?」。


冬樹「あぁ、知り合いが住んでいた」。

瞬「過去形ですね?」。

冬樹「今はどこにいるのかはわからない…」。

瞬「もしかして、この町に戻ってきてたりして?」。


冬樹(そんなことはないだろうと思いながらも少しは期待していた)。


新富士に到着


塩坂「静岡県警の塩坂です」。


冬樹「初めまして、冬樹です」。(名刺を渡す)。


冬樹「こっちは…」。


瞬「助手の瑞穂瞬です」。


塩坂「まず、署のほうに向かいましょう」。「鈴木に会って話をしてください」。


「今は黙秘を続けたままですが…」。


冬樹(彼女はなぜひとりで鈴木に会いに行ったのか?)。

(母親にも言えない理由があったのか)。

(確かめる必要はあるな)。



塩坂「こちらです」。「鈴木を連れて来ますので待っていてください」。

冬樹、瞬「わかりました」。


瞬「どう思います?冬樹さん」。


冬樹「会って話すのが一番手っ取り早い」。


瞬「そうですね」。「話してくれるといいけどなぁ」。


塩坂「こちらへどうぞ」。


少しやつれた鈴木の姿があった。


冬樹「二人だけにしてもらえませんか?」。


瞬「俺は?」。


冬樹「警察官内を案内してもらえ、いい勉強になる」。


瞬「わかりました」。(やつは素直だ)。


塩坂「かまいませんよ」。「どうせ一言も話さないでしょうから」。


冬樹「初めまして、探偵の白雪冬樹と申します。(名刺を渡す)今回は真優さんの母


親、渡辺 真紀さんの依頼で来ています。警察からは大体のことは聞きました。


なぜ、彼女は一人であなたに会おうと思ったんでしょうか?」。


「それも母親にないしょで」。


「自分の推理を話してもよろしいでしょうか?」。


鈴木「…」。


冬樹「あなたは真優さんの実の父親ではありませんか?」。

(鈴木が明らかに動揺している)。


冬樹「私は真優さんがSNSか何かであなたのことを知った。もしかしたら、彼女の


家に昔の写真か何かが残っていて、それを見た。若き日の二人の写真。


そう思っています。そして、その男性に似ているあなたと連絡を取り合うようになっ


た。違いますか?」。


鈴木(溜息)「そこまで調べたんですか?」。(鈴木がくちを開いた)。


鈴木「そうです。真優の父親は私です」。

「SNSにあげているキャンプ動画がきっかけだったそうです」。


冬樹「そうですか。母親にないしょにしてまで会いに行く人物なら、遠距離恋愛している恋人か、肉親ではないかと思っていました」。


鈴木「真優の成長した姿を見れて嬉しかった。母親に似ていた。車で迎えに

行った時、すぐにわかりました」。


冬樹「それで?」。


鈴木「自分の事、母親の事、私の現在と過去。いろんな話をしました」。


冬樹「それは楽しかったでしょうね」。


鈴木「えぇ、一週間があっという間に過ぎてしまいました。心残りでしたが、

「また会いに来るから、お母さんと一緒に、と」


冬樹「それで?」。


鈴木「土曜日の夜、新富士駅まで送りました」。

「それから先のことはわかりません」。


冬樹「そうですか、わかりました。あなたの話を信じましょう。しかし、彼女が行方不明になっている事も知らなかった?」。


鈴木「はい、そうです」。「警察がうちに来るまでしりませんでした」。


冬樹(嘘を言っているようには思えない、だったら彼女は今どこに?)


鈴木「お願いです。真優を探してください」。


冬樹「そのために来ました」。「真優さんが行きそうな場所に心当たりは?」。


鈴木「お父さんが生まれた町のことを、もっとよく知りたいと言っていました」。「だから、いろんな場所に行ったんだと思います」。


冬樹「わかりました。真優さんは必ず見つけ出します」。「任せてください」。


鈴木「お願いします」。(頭を深々と下げていた)。


冬樹「瞬!」。


瞬「冬樹さん。何か聞き出せましたか?」。


冬樹「車の中で話そう。もしかしたら、彼女は事件に巻き込まれているかもしれない」。


瞬「え!」。


車の中、先ほど交わした鈴木との会話を瞬に聞かせ、俺たちは彼女が立ち寄ったとされる、スーパーを目指していた。


冬樹「ここか、彼女が立ち寄ったとされるスーパーか」。


店内をうろつき、レジに近づくと、そこには元妻の夏樹の姿があった。


夏樹「信(まこと)」。


冬樹は夏樹に今は探偵をやっていると告げる。


夏樹「そう」。


夏樹「じゃあ、事件か何かあった訳ね」。


冬樹が写真を見せながら「この女性を知らないか?」。


夏樹「この子なら日曜日の夕方、買い物にきたわ」。「私がレジを担当してたからよく、おぼえている」。「こんな田舎じゃ見ない人は観光客か家出、何か訳ありだもん」。


冬樹「何を買ったか覚えてるか?」。「それと防犯カメラも見せて欲しい」。

警察で見せてもらったものの、自分の目で確かめたかったのだ。


夏樹「一緒に店長の所に行きましょう」。

そう言って奥の扉を抜け、店長室に入った。(コンコンコン)


夏樹「店長いますか?」。


店長「夏樹くんか?」。

夏樹「はい」。


店長「なんの用だね?」。


夏樹「探偵さんが尋ねて来ました」。


店長「どうぞ」。


夏樹「入りますね」。


扉を開けると小太りの中年男性が、画面を見ていた。


冬樹「初めまして、わたくし探偵の白雪冬樹と申します。彼は助手で瑞穂瞬です。


店長「警察にも聞かれましたけど、防犯カメラの映像のコピーも提出しましたよ」。


冬樹(名刺を出しながら)「改めて映像を見せて欲しいのです」。


店長「特に変わったところはなかったけど、いいのかい?」。


冬樹「ぜひ、見せて頂きたい」。


店長「わかりました。お見せしますよ」。「どうぞ」と言ってDVDを差し出してきた」。「そこのレコーダーでみれるよ」。と指さす。


冬樹「ありがとうございます」。早速、DVDをセットし、見始める。


夏樹「時間は夕方の5時半くらいよ」。そこまで先送りする。


夏樹「ストップ!」。「ほら、この子。この子を探しているのね」。


冬樹「あぁ。名前は渡辺真優、短大生で春休み」。「父親に会いに来たんだ」。


夏樹「父親らしき人は一緒にいなかったけど」。


冬樹「鈴木は、父親は車の中で待っていたらしい」。

「なんでも秘密にしたかったそうだ」。


冬樹「この時、何を買ったか覚えてるか?」。


夏樹「おでんの具よ」。「信もしってると思うけど、黒はんぺんが有名だからね」。


冬樹「そうか、父親におでんを作るためにこのスーパーに寄ったってわけだ」。

夏樹「そうみたいね」。


冬樹「名刺を渡しておく、なにかあったら連絡をくれ」。「自分たちは駅前のホテルに泊まってるから」。


夏樹「わかったわ」。


冬樹「元気でなによりだ」。


夏樹「あなたこそ」。


瞬「あの人が、前の奥さんですか?」。「なんで別れたんですか?」。


冬樹「大人の事情ってもんがあるんだよ」。


瞬「難しいですね?」。「大人って」。


駅前のホテルに到着し、これからの作戦を練っていた。


(着信音)

冬樹「塩坂警部、なにか進展があったんですか?」。


塩坂「あぁ、白糸の滝の川辺で死体が発見された」。


冬樹、瞬「!」。


塩坂「身元は不明、スマホに財布、腕時計に靴が持ち去られていた」。


冬樹「じゃあ、時間がかかりそうですね」。


塩坂「いや、もう、判明した」。


冬樹「名前は田中勉、55歳、彼も鈴木同様キャンプ動画をアップしていたらしい」。


冬樹「死因は?」。


塩坂「絞殺、背後からロープ状のもので首を絞められたことによる窒息死」。

「凶器はまだ見つかっていない」。「犯人が持ち去ったに違いない」。


塩坂「唯一の手掛かりは、タバコの吸い殻だ」。「彼はタバコを吸っていない」。

「なぜなら、車の中にも、いっさい灰皿の類がなかったからだ」。


冬樹「そうですか」。


塩坂「そのタバコからDNAを検出してもらっている」。「明日にでも判明するだろう」。


冬樹「わかりました。明日一番で署に向かいます」。


塩坂「いや、車を手配しておくから、一緒に現場まで足を運んでくれ」。


冬樹「では、明日」。


ツーツーツー


冬樹「瞬、嫌な予感が的中しそうだ」。


瞬「真優さん、無事だといいですけど」。


冬樹「そうだな、今は祈ることくらいしか出来ない」。

「早く休んで明日に備えよう」。ふたり共に早く寝ることにした。



翌日


塩坂警部と共に現場に向かっていた。


着信音


塩坂「何?」。「ありえないだろう」。


冬樹「どうしたんですか」。


塩坂「どうもこうも、DNA判定の結果、鈴木のDNAと一致した」。


冬樹、瞬「彼は警察署に…」。


塩坂「どうやったかはわからんが、犯人がわざと置いていった事に間違いはない」。「やれやれ、人探しが今度は謎の殺人犯探しとはな」。


現場に到着した我々は、現状を見せてもらった。


塩坂、冬樹、瞬

三人がそれぞれ別に調べる。


テントに焚火の跡、イス、食材…。


「田中の解剖は終わったんですか?」。冬樹が塩坂に訊ねる。


塩坂「あぁ、たった今、終わったところだ」。

「解剖の結果、死因はやはり窒息死」。

「胃の内容物を調べたが、キャンプのために用意した、肉や野菜、アルコール、それと小さな石粒が出てきたそうだ」。


冬樹(石粒、バーベキューの跡からして、食材に石が付着していてもおかしくない)。


瞬「こんなものを見つけました」。紙きれ、しかも小さい。なにかのちらしの端切れのように見えるが。


冬樹「塩坂さん、この紙切れも鑑識にまわしてもらえませんか?」。


塩坂「ん。ただのゴミにしか見えないが、調べて欲しいというのなら、鑑識に渡しておこう」。


冬樹「お手数おかけいたします」。


塩坂「証拠は多いにこしたことはない」。


一体誰が、動機は?どうやって鈴木の唾液が付着した吸い殻を手にいれた?

わからないことだらけだが、彼女が事件に巻き込まれていることには間違いないようだ。


塩坂「これからどうする?」。


冬樹「自分たちは独自に真優ちゃんの捜索を続けます」。

「殺しのほうは塩坂さんにお任せします」。


塩坂「わかった」。「くれぐれも用心するこった」。「犯人は人一人殺している」。

「いつどこで襲ってくるかわからんぞ」。



冬樹「気をつけて捜索します」。


瞬「警部さんも気をつけてください」。


塩坂「あぁ」。「何かわかったら連絡する。そっちも何かわかったら連絡をくれ」。


冬樹、瞬「わかりました」。


冬樹「よし、瞬。この辺りで聞き込みだ。真優さんの目撃情報を探そう」。


瞬「分かれますか?」。


冬樹「そうだな、必ず一時間置きに連絡するように。進展があってもなくても夕方5時にはホテルで落ち合おう」。


ホテルにて


冬樹「どうだった?」。


瞬「彼、田中は地元住民ではなく、一年ほど前に引っ越してきたことがわかりました」。

「近所の評判も悪く、騒音問題で何度もいざこざがたえなかったようです」。

「キャンピング仲間達から評判も悪く、マナーも最悪で、ゴミも持って帰らないし、爆音で音楽をかけて周りも迷惑してたようです」。


冬樹「同じだな。俺のほうもいい噂は聞かなかった。ただ、元妻の高橋 恵

に会う事ができ、話を聞くことができた」。


瞬「どういった内容なんですか?」。


冬樹「田中とは東京で出会い結婚。妻の故郷、富士宮に来てから態度が変わったそうだ」。「引越ししたいといいだした田中は恵の意見も聞かずに、勝手に転居届をだしていたようだ」。「それを知った恵は仕方なくついてきたそうだ」。「故郷に住むのだからそんなに居心地は悪くなかったみたいだ」。


瞬「勝手にですか…」。


冬樹「田中はすぐに仕事を見つけ、生活は安定していたようだ」。


冬樹「ところが、半年ほど前からキャンプにハマり、恵をかまうこともなく、

常に一人で行動していたようだ」。


冬樹「恵から離婚届をだしたが、田中はそれにすぐサインをし、離婚は成立した」。「その後の田中のことはわからないといっていた」。


瞬「なんだか恵さん、かわいそうですね?」。


冬樹「田中を殺す動機もあるとも考えられる」。


瞬「!」。


冬樹「明日はもう少し捜索範囲を広げ、山奥のほうにも探しに行こう」。


瞬「わかりました」。


冬樹「明日も早い、もう寝よう」。

明日には見つかればいいが…

不安が脳裏をよぎる。



冬樹「塩坂さん」。スマホで進展を聞く。


塩坂「田中についてわかったことがある。やつには東京で暮らしていた時に

知り合った、本折 求という男がいて、悪さをはたらいていたようだ」。

冬樹「警察沙汰になったんですか?」。


塩坂「あぁ、しかし、警察に厄介になったのは、本折だけだ」。「田中は名前すら出てこなかった」。


冬樹「かなりキレるやつですね。田中は」。


塩坂「しかし、殺されたのは田中のほう。こっちは本折の行方を追っている」。


冬樹「わかりました。ありがとうございます」。「自分たちは真優さんの捜索を続けます」。「朝霧公園のほうまで足を延ばそうと思っています」。


塩坂「気をつけろよ。犯人がまだ富士宮に潜伏しているかもしれないからな」。


冬樹「はい、気をつけます。何かありましたら、連絡いたします」。


塩坂「おう。こっちも情報を提供するぜ」。


ふたりは朝霧高原へと向かった


冬樹「ここでも、有力な情報はなしか」。


冬樹「瞬、どうだった?」。


瞬「ええ、あまりいい情報はありませんでしたが、」。「田中さんが殺された夜、

爆音を鳴らして走って行く車の音を聞いたそうです」。


冬樹「爆音?」。


瞬「はい、その音で目が覚めてしまったそうなのでよく、覚えていたそうです」。


冬樹「車の色やナンバーは?」。


瞬「いや、そこまでは」。


冬樹「瞬、この先に桜で有名な場所がある」。「そこまで足を運んでみよう」。


瞬「はい」。



ふたりは桜で有名な、富士山さくらの園を目指した。


瞬「あっ!」。「誰か倒れてる」。

冬樹と瞬は駆け寄った。


冬樹「真優さんだ。間違いない。息はしている。」。「瞬、救急車の手配を」。

「俺は塩坂警部に連絡する」。


冬樹「塩坂さん」。


塩坂「どうした?」。「何か見つかったか?」。


冬樹「ええ、探していた、渡辺真優さんを発見しました」。



塩坂「何?」。


冬樹「場所は富士山さくらの園です」。


塩坂「彼女は無事なのか?」。「彼女は濡れているのか?」。


冬樹「ええ、目立った外傷もなく、眠っているようです」。「念のため、救急車を呼びました」。「それに濡れているのは背中側だけです」。


塩坂「わかった」。「今からそちらに向かう」。「鑑識も連れて行くので待っててくれないか?」。


冬樹「わかりました」。「瞬は彼女と一緒に病院のほうに付き添わせます」。


塩坂「そうしてくれ」。「病院のほうにも刑事を送る」。「彼女に何かあったら警察の信用に関わるからな」。


冬樹「そうしてください、お願いします」。「真紀さんにはこれから連絡します」。「彼女も病院に連れて行ってあげてください」。


塩坂「わかった」。


真紀さんに彼女を無事発見したことを伝え、その辺りを捜索していた。

(なにか犯人の手掛かりになるものはないだろうか)。

そこには一本のロープが置いてあった。


冬樹(もしかして、田中さんを殺した時につかったロープでは?)

鑑識が来るまでは触らないでおこう。


冬樹「所長」。電話で彼女を発見したことを伝える。


所長「そうか、無事ならよかった」。「戻ってくるのか?」。


冬樹「実は…」。殺人事件が起こったことを知らせる」。


所長「あまり首は突っ込まないほうが身のためだが」。「調べるのか」。


冬樹「はい、この一連の事件、まだ終わってないように思うんです」。


所長「あくまで捕まえようなんて考えるなよ」。「それは警察の役目だ」。


冬樹「はい、犯人を探すまでにして、あとは警察にお任せします」。


所長「必ずだぞ」。


冬樹「はい」。


この事件の犯人は? 

一体なぜ真優さんを誘拐したのか?

今になって見つかるようなところに放置したのか?

疑問だらけだ。



(塩坂が一人でやって来た)


冬樹「塩坂さん、速かったですね?」「お一人ですか?」。


塩坂「ああ、君からの連絡を聞き、他の刑事達に応援の連絡をして、パトカーで、すっ飛ばしてきた」。「真優さんが居たのはここか?」。


冬樹「ええ、そうです」。(何故か悲しげな表情をしている冬樹…)。


冬樹「あと、ロープを見つけました」。「田中絞殺した時に使った物かもしれません…」。


塩坂「そうか、わかった」。「鑑識が到着したらすぐにロープを…」。


冬樹「濡れている…」。「なぜそう言ったんですか?」。「塩坂さん」。


塩坂「昨日の夜、雨が降っていた。だから彼女が濡れているのではないかと思って」。


塩坂「お前コートを着てないし、濡れている」。「さっきの通り雨で濡れたのか?」。「ここに向かう途中、雨が降ってきたからな」。


冬樹「違うんだ、塩坂さん」。「なぜ濡れていると言ったんだ」。


塩坂「だからそれは…」。


冬樹「真優さんはあそこの物置小屋から発見した」。「ロープも一緒に」。「だから濡れているはずないんだ」。


冬樹「もう自首してくれないか?」。「彼女を拉致監禁し、田中を殺したのはあなただ!」。


塩坂「何のことだ」。「何を言っているのか分からない」。


冬樹「所長が言ったんだ」。「探偵風情に喜んで協力してくれるヤツは信用するなと」。


瞬が現れる


塩坂「救急車で病院に行ったんじゃなかったのか?」。


瞬「駐車場に止めてあった黒のワゴン、あなたの車ですよね?」。


塩坂「違う、俺はパトカーで」。


瞬「駐車場にはありませんでしたけど」。


瞬「それにこれ」。(ポケットからマイクロSDを取り出す)。


瞬「その車のドラレコのものです、調べれば走行記録から」。


塩坂「俺の車は軽自動車だ」。


瞬「このマイクロSDも調べましょうか?」。

「所有者の老夫婦には、事情を話して安全なところに避難してもらっています」。

(冬樹が悲しそうな顔で立ちすくんでいる)。



塩坂「金か、金が欲しいのか?いくらだ?言え、いくら欲しい?」。


瞬「冬樹さんはあなたの事を信じていました」。


(ホテルでの会話)。

瞬「俺は塩坂さんを疑います。だから冬樹さんも塩坂さんを疑ってください」。


冬樹「俺は信じる」。


瞬「わかりました、僕は疑います」。「冬樹さんは信じ続けてください」。



 (今)

冬樹「もう調べはついている…」。「お前が他人名義で借りたアパートは見つけてある」。「そこに彼女を監禁していたことも」。


(真優を捜索中)。

瞬「このまま真優さんを助け出しましょう」。


冬樹「まだだ」。


瞬「どうして?」。


冬樹「真優さんを助けても、塩坂を逮捕出来ない」。「部屋は他人名義、しらを切り通せば、また別の人間に罪をなすりつけるに違いない」。


 (今)

冬樹「田中を殺した罪を、同僚の鈴木に着せようとタバコの吸い殻を鑑定せたな」。「しかし、タバコを吸わない鈴木から、どうやって唾液を付着させたもかを考えた

時、警察内部の人間が真犯人であると確信した」。


瞬「鈴木さんはDNAの提出を求められていた」。

「それに応じた事を利用し、綿棒の先の唾液をタバコの吸い口につける」。

「こうして証拠をでっちあげたんだ」。


冬樹「しかし、予想外の事が起きた」。

「真優さん捜索のため、大捜索が開始され、田中が発見されてしまう」。

「鈴木は警察に居た事で完璧なアリバイを持ってしまった」。

「そこで彼女をこの場所に移し、発見させ、他に容疑者がいるように思わせる」。


塩坂「そうか、全てお見通しだったわけだ」。(拳銃を向ける)。


塩坂「お前たちを殺して俺は逃げる」。


冬樹「好きにしろ」。


塩坂「ハハハハハ」。「俺は絶対捕まらない」。


(パトカーのサイレンの音が近づく)。



冬樹「もう観念するんだ」。

(塩坂が銃口を自分の頭に…)。

(瞬が素早く走り出し、塩坂の手から拳銃を奪い取る)。


冬樹「終わりだ」。





所長「よくやったな」。

(携帯から所長の喜んだ声が聞こえてくる)。


所長「熱を出して入院にいるそうじゃないか」。


冬樹「ヘックション」。(まだ3月、コートも着ず、雨に濡れていた俺は風をひいてしまった」。


瞬「冬樹さんは安静にしててください」。「僕はこの町をもう少し散策しようかと…」。


所長「バカもん」。「瞬、お前はすぐに事務所に戻って来い、いいか、すぐだぞ」。


瞬「ひいい、人使い荒い、この会社」。


所長「戻って来たら、調査報告書を書いてすぐ、張り込みだ、いいな」。


瞬「わっかりましたー」。(走る瞬)


ナース「病院内では走らないでください」。


(三人そろってお見舞いに来てくれた)。


真優「探偵さん」。「助けてくれて、ありがとう」。「お身体のほうは…」。


冬樹「心配ない、ただの風邪だ」。


真紀と正孝「本当にありがとうございます」。「どれだけお礼は払ったらいいものか」。


冬樹「捜索代金は頂いてますよ」。「その分の仕事をさせてもらっただけです」。


(三人が去ったあと、俺は考えていた)。

(夏樹に出会えたことが何よりの報酬だ、連絡先も交換したし、いや、俺が名刺を渡したのか)

(また会うことも、話すこともできる、それが一番の幸せだな)

(冬樹は深い眠りに陥った)。


                                



              調査報告書


依頼人の要望に答え、無事、真優さんを見つけ出すことに成功しました

今度はどんな事件が待ち受けているのか楽しみで仕方ありません



                               瞬





                                完

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