悪役の息子に転生してしまったっぽいですが、俺が死ななきゃ物語が始まらないのでは? ~まあ、死ぬ気ないのでハーレム作って別の物語を始めようと思います~
青薔薇の魔女
どうやら俺は悪役の息子に転生したらしい。
『クロス・クロドットラース』
通称「黒黒」
そのゲームに出てくる理不尽な悪役である男グラハム。その息子に……どうやら俺は転生したらしい。
「うおおおおお……ラプラス目を覚ましたかあああ‼」
目の前で泣き叫んでる、髭面黒髪のいかついおっさんこそが、その悪役のグラハムである。
この「黒黒」内で登場するグラハムという男には悲しい過去がある。
この男には昔、愛する妻と息子がいた。
『伝説の傭兵』と呼ばれたグラハムは、そんな愛する二人の家族と共に片田舎で幸せな生活をおくっていた。
そんなある日、グラハムが出張していた時に村にやってきた悪徳貴族によって、妻と息子は殺害されてしまった。
村に戻った時グラハムが目にしたのは、燃えカスになった家と、弄ばれて殺された二人の死体だった。
絶望し、怒りに満ちたグラハムは、かつての仲間を呼び集め、世界を混沌の世界に作り変えるため魔神を復活させようと主人公たちの前に立ちふさがる……と、言う話だった。
だからこそ思うのだ。
俺は、グラハムの息子に転生した。
という事は……だ。
これ、俺が死なないと物語始まんないのでは?
――――
――――
とりあえず、現状を簡潔に整理すると。
悪役の息子に転生した。
俺の名前はラプラス。苗字は不明。
原作でグラハムの名字に触れられてなかったから、もしかしたらないのかもしれない。
中世の日本とか、苗字が無かったっていうし。
そう言う感じなのかもしれない。
そして、どうして俺がベッドに寝かされているかというと……
どうやら俺は戦闘訓練中に雷に打たれて気絶していたらしい。
生きていたの普通に奇跡的だなって思うよ。
「まったく、一時はどうなる事かと思ったぞ」
「ん、心配かけてごめんなさい」
「いや、良いんだ。生きてたらな」
そう言って、俺はグラハムから頭をポンポンと撫でられた。
「……とりあえずだ、母さんにも元気な顔を見せてやらないとな」
「ん……そうだね」
そうだ、母さん。
俺がまだ生きてるってことは、母さんもまだ生きてるってことだ……
母さん、か。どんな人だろう?
ゲームの中じゃ、妻も子も名前とかどんな人だったとかは触れられてなかったからな。
なんて思っていると父さんが、母さん? を呼んだ。
「あなた、ラプラスが目を覚ましたって……あっ」
そう言って目に涙をためているのは、金髪の美人さんだった。
瞳はおっとりとした垂れ眼、鼻先は……西洋というより、日本人みたいな感じ、口元もそうだ。
さっき美人さんって言ったが、正確に言うと美少女寄りの美人さん……と言ったところで、優しくていい人そうだ。
そして体つきだが…………出るところは出て、引っ込むところは引っ込むを体現したまさに美しさに化身と言って過言ではないだろう。
「よかった、よかった!」
「……うぷっ」
流石はエロゲキャラと言ったところか……なんて、セクハラじみた感想を頭の中で思い浮かべていると、
母さん? が僕に抱き着いてきた。
おうぅ……たわわな胸が心地いい。
童貞にはちと刺激が強いぞ?
「良かった、よかった……」
それにしても、お嫁さんがこんな美人さんの癖にグラハム、お前……原作では年の離れた美少女を抱きまくるんだよな。
羨ましいぞ。
「しかし、本当に……本当に良かった」
「……ん?」
そう言ってグラハムは俺の事を抱きしめた。
まあ、子供が目を覚ましたら……そう言う反応にもなるか。
まあ、中身は別人であるのだが――
(そう考えると、むしろある意味で原作よりも悲惨だな)
まあ、無事に俺が死なずに成長した場合の話だが。
そう、無事に死なずに成長したら。
(俺、死ぬ可能性あるもんな)
原作では、村に訪れた貴族の暴虐によって俺と母さんは殺されることになる。
……たぶんあくまで予想だが、俺がこのまま呑気に成長して、原作と同じように貴族に殺されるようなことがあれば、「黒黒」原作のストーリーが開始されることになるだろう。
「黒黒」の世界は理不尽に満ち溢れている。
「黒黒」ヘビープレイヤーな俺は、なおさらそのことを知ってる。
貴族、王族の力は絶対。
それはこのの世界どこに行っても変わらない。
その上、この世界には魔物、山賊……少し遠くに行けば戦争が起こっていたりと、まさにファンタジーの皮を被った世紀末世界だ。
原作の流れで生き残っても、何かの拍子に俺が死んで「黒黒」の世界が始まらんともいえない。
まあ、原作が始まったとしても俺には関係ない話だが……
だが、とはいえ……俺も易々と死ぬつもりはない。
だって、死んで異世界に転生できたんだ。
「ん……父……さん? 髭が痛い」
「あ、すまん。すまんなラプラス」
普通人は死んだら地獄。
転生なんてこんなチャンス普通はあるわけがないのだから。
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