サプライズ、ハプニング、……チョコレート?
香坂 壱霧
第1話
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この物語は、
『フライング・サプライズ・チョコレート』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662774222114
バレンタインのその後になっています。
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チョコレートを渡した日の石田くんの言葉に、困惑していた。意味がわからなくて頭が痛い。
――これからの話なんだけど、聞いてくれる? ちょっと長いかもだけど、いいよね。
自転車を押しながら、わたしは緊張していた。石田くんの言葉をちゃんと聞かなきゃいけないって思ったから。
『ずっと視線感じていたからそうなんだろうって思ってた。だからさっきので、やっぱりそうか〜って。でもさ、付き合いたいんじゃないって、それ、意味わかんねぇから。わかんねぇけど気持ちに
この流れでイヤだなんて言えない。
語尾に圧を感じた。圧をかけてた。わざとだよね、アレ。
そしてあの日から……
石田くんは、わたしを見ている。それもかなり近くで。休み時間になると隣の席に座って、何も言わずに見てくる。
会話があれば、周りの視線を気にせずにいられるだろう。
無言の石田くんが、いつ、何を喋るだろうと、教室にいる誰もが気にしているのがわかる。
こんなに注目されていたら、わたしからは話しかけられない。恥ずかしすぎる。
わたしはノートに、『居心地悪いから、ふつうにしてくれる?』と書いた。石田くんにそれを見せると、
「どういうのがふつうなんだろ?」
疑問形で、しかも小声じゃなくて周りに聞こえるように言ってくれた。しっかり、わたしの目を見ながら。
意地悪そうな笑みが憎たらしいけど、そういうところ嫌いじゃないんだよね……なんて思うわたしは、石田くん中毒重症患者だ。
会話がないのに一緒にいることが増えてるから、周りは付き合ってるんだと生温かい目でにやつきながら、見ている。
「付き合ってないの? アレで?」
いろんな人が驚くけれど、アレで? と言われる意味は、わからない。
今も、廊下でクラスメイトに呼び止められて驚かれていて。
「だってさ、石田が相川さんを見てるときの目が……」
「俺が、なに?」
不意打ちで背後に立つ石田くんは、ささやくような声色で言う。
「好きなんでしょ。石田も」
「俺が、相川さんを?」
「そう! かわいいなぁって思いながら見てる目だよ」
「それは否定しない。付き合いたいと思ってもらえないから、どうしたもんかと悩みながら愛でる、みたいな?」
「はあ? なんか、あほらしくなってきた。そんなので付き合ってないとかからかうようなことして、相川さんがほかの誰かにとられたらどうするのよ」
「相川さん、誰かに告られたら、そいつと付き合う?」
わたしの話なのに、蚊帳の外のような気持ちで聞いていたら、突然話をふられた。
「そんなわけない!」
声高に否定する。
好きじゃないと付き合いたくない。今は、石田くんを好きなんだから……
「じゃあ、俺と付き合いたいわけじゃないっていうのは?」
「相川さん、そんなこと言ったの? 好きなら付き合いたいもんじゃない?」
「相川さんの謎理論なんだよなあ」
石田くんはしみじみ言いながら、「そろそろ休み時間終わるから」と、教室に入っていった。
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