サプライズ、ハプニング、……チョコレート?

香坂 壱霧

第1話

  ✳  ✳  ✳


 この物語は、

『フライング・サプライズ・チョコレート』

https://kakuyomu.jp/works/16817330662774222114

バレンタインのその後になっています。


  ✳  ✳  ✳



 チョコレートを渡した日の石田くんの言葉に、困惑していた。意味がわからなくて頭が痛い。


 ――これからの話なんだけど、聞いてくれる? ちょっと長いかもだけど、いいよね。


 自転車を押しながら、わたしは緊張していた。石田くんの言葉をちゃんと聞かなきゃいけないって思ったから。


『ずっと視線感じていたからって思ってた。だからさっきので、やっぱりそうか〜って。でもさ、付き合いたいんじゃないって、それ、意味わかんねぇから。わかんねぇけど気持ちにこたえるにはどうするのがいいか考えてみたんだ。で、相川さんを好きになるように見ていようってなったわけ。それでいい? いいよね?』


 この流れでイヤだなんて言えない。

 語尾に圧を感じた。圧をかけてた。わざとだよね、アレ。


 そしてあの日から……

 石田くんは、わたしを見ている。それもかなり近くで。休み時間になると隣の席に座って、何も言わずに見てくる。

 会話があれば、周りの視線を気にせずにいられるだろう。


 無言の石田くんが、いつ、何を喋るだろうと、教室にいる誰もが気にしているのがわかる。

 こんなに注目されていたら、わたしからは話しかけられない。恥ずかしすぎる。


 わたしはノートに、『居心地悪いから、ふつうにしてくれる?』と書いた。石田くんにそれを見せると、

「どういうのがふつうなんだろ?」

 疑問形で、しかも小声じゃなくて周りに聞こえるように言ってくれた。しっかり、わたしの目を見ながら。

 意地悪そうな笑みが憎たらしいけど、そういうところ嫌いじゃないんだよね……なんて思うわたしは、石田くん中毒重症患者だ。


 会話がないのに一緒にいることが増えてるから、周りは付き合ってるんだと生温かい目でにやつきながら、見ている。

 

「付き合ってないの? アレで?」


 いろんな人が驚くけれど、アレで? と言われる意味は、わからない。

 今も、廊下でクラスメイトに呼び止められて驚かれていて。


「だってさ、石田が相川さんを見てるときの目が……」

「俺が、なに?」


 不意打ちで背後に立つ石田くんは、ささやくような声色で言う。


「好きなんでしょ。石田も」

「俺が、相川さんを?」

「そう! かわいいなぁって思いながら見てる目だよ」

「それは否定しない。付き合いたいと思ってもらえないから、どうしたもんかと悩みながら愛でる、みたいな?」

「はあ? なんか、あほらしくなってきた。そんなので付き合ってないとかからかうようなことして、相川さんがほかの誰かにとられたらどうするのよ」

「相川さん、誰かに告られたら、そいつと付き合う?」


 わたしの話なのに、蚊帳の外のような気持ちで聞いていたら、突然話をふられた。


「そんなわけない!」


 声高に否定する。

 好きじゃないと付き合いたくない。今は、石田くんを好きなんだから……


「じゃあ、俺と付き合いたいわけじゃないっていうのは?」

「相川さん、そんなこと言ったの? 好きなら付き合いたいもんじゃない?」

「相川さんの謎理論なんだよなあ」


 石田くんはしみじみ言いながら、「そろそろ休み時間終わるから」と、教室に入っていった。


 

 

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