なんで集めたんですか

 

 アイリーンの問いに、エルダーは渋い顔をし、

「今、一生懸命、娘たちの嫁ぎ先を探している」

と言う。


 じゃあ、なんで集めたんですか、という顔をみんながしていた。


「あんなにたくさんいても困るので、我が臣下に与えているのだが」


 物のようだな。


「なかなか、お互いの好みが合致しないらしくて、難しい」


 ……ただの仲人のようだ。


「美男美女をあてがえば、満足するというものではないのだな、人は」


 初めて知った、というようにエルダーは深く頷く。


「あの~、王よ。

 全員追い払ってもらっては困ります。


 気に入った娘の幾人かとは床をともにしていただいて、後継ぎを作っていただかねば」

とイワンが口を挟んだ。

 

「私は忙しいのだ、めんどくさい。

 だが、確かに後継者がいないと、余計な争いが起こるから。


 どこからか優秀な人間を探し出し、私の後を継ぐよう手続きを――」


「そんなことすると、余計揉めますよ」

とイワンは眉をひそめる。


「せっかく美しく賢い娘たちを集めたのです。

 これと思う妃候補の方との間に、良さげなお子様を作ってくだされば、あとは我々でなんとかしますので」


 いや、なんとかしますって、とアイリーンは思ったが。

 まあ、王子の教育に関しては、教育係などの仕事なのだろう。


 イワンのお小言に溜息をついた王は、チラ、とアイリーンの方を見たが、

「……いや、これはやめておこう」

と呟いた。

 

 

 直してもらったかまどで、エルダーたちの食事の準備をしながら、アイリーンはメディナと語り合う。


「やめておこうって言われてよかったわ。

 お泊めするだけですみそう。


 あやうく、お妃候補の方々の闘争に巻き込まれるところだったわ」


「おかしいですよね。

 なにが気に入らないのでしょう。

 この美しく賢く、ともにいて飽きない姫様の」


「別に美しくも賢くもないけど。

 まあ、最初に矢で射ようとしたのもまずかったかしらね」


「あら、相手は王様ですよ。

 弓矢で狙われることなんて、慣れていらっしゃいますよ~」

とメディナは笑う。


 主人がずれているので、メイドも多少、ずれていた。

 



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