0018 格闘王ジギル

 今日は新しい仲間を連れて冒険者ギルドにステータスを確認に来たわけだ。


 もしかしたら、スキルなどがあるかも知れんしな。そしたら、冒険の際にも連れていきたいし・・・。


 前回は猫耳娘5人。それぞれLv5。戦闘能力はないが、微弱音も察知できるスキルもあるし、それぞれ使える物を持っている。


 今回は執事5人。これもLv5。隠密行動に長けているようだ。


 まてよ、さっきサリーナが俺の血を飲んだら、レベルアップするって言ってたな。

 俺は自分の腕を切り、グラスに血を注いだ。執事5人に飲めと言ったら、何故か皆が喜んで飲み干した。普通、嫌じゃないの?これもサリーナの力?


 もう一度、レベル測定をして貰う。皆、Lv.8!ちょっと血を飲んだだけで?それに俺のスキルまで所持している!スゲー!これからは、定期的に飲ませよう。


 しかし、残念ながら全員、料理のスキルがない!これは悲しい・・・。

 今夜も玲子か俺が料理する羽目になるのか〜。


 そう考えながら、歩いていると裏路地に入ってしまった・・・。

「獣人居住区」と言われるその地域は、居住区とは名ばかりの差別をされ貧困にあえぐ獣人たちの「スラム街」と聞いている。


 俺が歩いているのを、獲物を見るように睨みつけてくる感触があった・・・。

 一人の大男が襲ってきた、が、単調な攻撃故に簡単にのしてしまった。

 気が付くと、囲まれていて逃げ場がない・・・。どうしよう。


 さっきの獣人を簡単に倒した所を見たからか、俺が隙を見せるのを待っているのか、誰も動かない。ただ、睨みつけるだけ・・・。

「どっからでも、掛かってこいやー!」と日本刀を抜く!すると・・・

「参りました!どうか殺さないでください!」と全員がひれ伏した。

「へ?」俺はあっけに取られてしまった。


「お前らのリーダーは誰だ!」と俺が聞くと、一人の獣人が指を指す。その指の方は、さっき簡単に倒した獣人だった。


「これが、お前らのリーダー?嘘だろ?弱すぎるだろ?」


 聞くところによると、この獣人、名前を「ジギル」と言い、闘技場でも負けなしらしい。そんな奴を簡単に倒したから、こいつらは俺に服従したわけか・・・。納得。


 やっと、「ジギル」と言う獣人が目を覚ました。すぐさま俺に敬服したけど。


 ジギルがこのスラム街に来た理由は、主を失った悲しさからだと言う。憂さ晴らしに闘技場にエントリーしてみたら、負けなしの殿堂入りを果たしたとの事。しかしいくら殿堂入りしたと言っても、対戦相手がいなくなっただけ。当然、収入がなくなり、こうして人間を襲っては食いつないでいたという。


「そうか。お前らは苦労してんだな。女神は何やってんだ!」

「残念ながら、我々獣人族には女神の加護はありません。」

「何!本当か!」

「はい。その通りです!」

「ちょっと待っとけ!」


 俺はスマホを取り出し

「あ〜サリーナ?俺だけど」その言葉に獣人全員がどよめく・・・。

「お前、獣人族には加護を与えてないのか?」

「そんなことはない!わらわは全員に加護を与えている。」

「じゃあ、なんで不幸な獣人がいるんだよ!」

「それは、生まれたときに神殿に来ていないのではないか?」

「ちょっと待って。」


「ジギル!」

「はい!」

「お前、神殿に行ったことは?」

「神殿?なんでしょうか?それは?」


「あ~サリーナ、こいつら神殿の事すら知らんぞ。」

「ならば、お前が加護を与えればいいだろう。」

「俺にそんなことできんのか?」

「ああ、出来るぞ!お前はわらわが見込んだ勇者なのだからな!ただ、」

「ただ、何だ?」

「そいつら全員に名前を付ける必要がある。」

「またかよ。今回は事情があるし無視出来んしな!じゃ、切るぞ!」


「ジギル!それにこのスラムに住んでいる獣人どもよ!」

「今日から俺がお前らの面倒を見てやる!全員俺の屋敷に来い!」

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