第10話 誠心誠意の謝罪。
先に来た王子美咲は緊張した声で「お邪魔します」と言って永礼家に入ってくる。
そもそも笑顔で泣きっぱなしの永礼母が「美咲ちゃん!お願い!ウチに来て!」と言ってきて、断れずにドン引きしながら連れてこられただけだったりする。
永礼家に入ると永礼崇との過去を思い出してしまい強張る王子美咲は、リビングに来ると言葉を失ってしまった。
泣いて感謝する永礼父、腕を組んでニコニコと喜ぶ相田晶、そして土下座の姿勢で頭を踏まれている永礼崇。よくわからないが初見の女性が腰に手を当てて永礼崇の頭を踏みつけている。
絶句する中、「よう美咲!」と笑う相田晶。
その後で「美咲さんですか?はじめまして!アタシは八幡天音です。んー…、このゴミカスを躾ける係みたいなもんです」と八幡天音が永礼崇を踏んだまま自己紹介をする。
カオスな空間に「は…はじめまして」としか返せない王子美咲に、八幡天音が「おいカス、謝れば許してもらえるなんて夢を見るな。魂を振り絞って謝れ。謝罪なんて甘い。懺悔だ」と言って永礼崇を蹴り起こす。
蹴られて仰向けになると悲惨さが伝わってくる。
ボコボコの顔で「美咲…」と言う永礼崇に、「崇?ボコボコだよ?大丈夫?オデコも真っ赤だよ!?」と言う王子美咲。
後ろでは八幡天音が「おいゴミカス。美咲さんの優しさに甘えるな。お前は大罪人だ。忘れるな」と言うと、永礼崇は土下座の姿勢に戻って「晶から手首の事を聞いたんだ。後遺症が残るなんて思わなかった…。冬になるとさするって…。ごめん」と言って土下座をすると、王子美咲は泣きながら「いいよ」と言ってから、「私はもういいから梅子に謝って」と言う。
救われた顔で「ありがとう美咲」と言いかけた永礼崇だったが、直後に頭を踏まれて再度オデコを強打する。
「おいミジンコ。美咲さんの優しさに甘えるなって言っただろ?お前の贖罪は終わってねえ。美咲さんが許しても自分を許すな。勿論アタシは許さない。躾の手を緩めない」
八幡天音は王子美咲に「美咲さん。菩薩様のような優しさですが、このミジンコには過ぎた施しです。是非ここは殴りませんか?」と声をかけて、相田晶はヒーヒー笑いながら「楽しー!」と言っている。
「ううん。八幡さんが…」
「天音と呼んでください」
王子美咲が「天音さんが怒ってくれたからじゅうぶんだよ」と言って泣きながら微笑むと、八幡天音は「敵わん。私もいつか美咲さんみたいな菩薩になりたい」と言いながら足に力を入れていて、聞いている永礼崇は「お前には無理だよ暴力女」と心で思ってしまうと、「オイ、なんか失礼極まりない事を思わなかったか?」と足に力を込められてしまい、永礼崇は「め…滅相もございません」と謝った。
30分して永礼家に到着をした町屋梅子は、永礼家に足を踏み入れる事すら嫌がったが、相田晶から「一生モノのイベントだから見ろよ」と言われて渋々足を踏み入れると、笑顔で泣いている永礼崇の両親と王子美咲。
土下座の永礼崇と頭を踏み続ける八幡天音が居て混乱してしまう。
町屋梅子は王子美咲を見て「美咲?」と声をかけると、王子美咲は「梅子、天音さんが崇を更生させてくれてね。謝る機会をくれたんだよ」と説明をする。
謝る機会。
土下座の永礼崇と頭を踏み続ける八幡天音。
泣いて笑顔の永礼父母。ニコニコ笑顔の彼氏。
混乱から「え?えぇ?」と言うと、王子美咲は「この前の不良崇を見て寝込んだおじさんとおばさんも泣いて喜んでるの」と説明をした。
確かに喜んでいるが、公開処刑の様相に町屋梅子は混乱する中、八幡天音が「梅子さんですね?アタシのことは天音と呼んでください。このミジンコの躾係です!なんでも美咲さんに怪我を負わせて、梅子さんの御心を傷つけたとか聞いたので、謝らせて立場をわからせようと思いましてお呼びしました」と言うと、「おいミジンコ。さっきも言ったが誠心誠意、魂を振り絞って謝れ。謝れば許してもらえるなんて夢を見るな。謝罪なんて甘い。懺悔だ。謝って哺乳類に戻れ」と言いながら永礼崇を蹴り起こした。
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