第7話:敵(とも)の来襲、偉大な四大魔女
村に着いた私は、目の前の信じられない光景に目を丸くしていました。
大地の魔女シーシエ・ジュラ・ペレストールと大樹の魔女カリエナ・テ・ラ・ジュエールが、
村の入口で待機していたのです。
そこで私は自らの過ちに気が付きました。
凍結花の発見し、それについての情報提供を頼んだことが失敗でした。
四大魔女は探求を好みます。
故に、彼女らの家の書庫は、本の数は兎も角、この世のあらゆる知識が収まっており、本の質だけなら
王家の書庫をも凌駕していと言えるでしょう。
そして、その本の作者は皆、歴代の四大魔女なのです。
彼女らが求めるのは知識のみ。
魔法は手段の一つでしかありません。
私は大きな溜息をつきながら、彼女らに問いました。
「状況を・・・理解はしているんですよね」
シーシエとカリエナは何の迷いもなく頷きましたが・・・筋肉馬鹿(シリエスタ)は違うようです。
まあ、筋肉馬鹿(シリエスタ)状況を理解していないであろうことは、皆が分かっていたことです。
筋肉馬鹿(シリエスタ)には後で状況を説明するとして、一旦レベロさんの所へ戻るとしましょうか。
カルム君も疲れて眠ってしまっていますし、カルム君のお母様の容態も気になります。
でも、レベロさんに彼女達のことを説明するのも面倒ですし、シーシエとカリエナには先に私の家に
行ってもらっておきましょう。
筋肉馬鹿(シリエスタ)は・・・カルム君を背負っていますから、不本意ですが付いてきてもらいま
しょう。
「おお魔女様、御無事でなによりです」
そう言ってくれたレベロさんに、私はお礼を言い、軽く現状を説明しました。
筋肉馬鹿(シリエスタ)のことは一応 旧友 とだけ紹介しました。
大まかながらも、現状を理解してくれたレベロさんは
「凍結花の研究が終わるまで、彼女のことは私にお任せ下さい」
と言ってくださいました。
そのお陰で、私は研究に集中できます。
さて、カルム君のお母様の容態については、出来るだけ詳しく把握しておきたいですから、
今日はお母様の容態を詳しく調べてから、帰ろうと思います。
私は、レベロさんと筋肉馬鹿(シリエスタ)にカルム君を任せて、カルム君のお母様の下へ向かい
ました。
お母様の容態は・・・はっきり言って、とても危険ですね。
何日も低体温で過ごし、食事は栄養薬だけ、体は衰弱しきっています。
後遺症なしで復帰できるのはあと数週間、それ以降は・・・後遺症が残らないとは言い切れません。
それどころか、最悪の場合、死に至るかもしれない。
一刻も早く、解決策を見つけなければ。
容態を見終えた私は、筋肉馬鹿(シリエスタ)を連れて、早速家に帰りました。
・・・喜ぶべきか、人の家で何してんだと怒るべきなのか、彼女らは私の家にある道具を勝手に使って
早速何かをやっている様でした。
私が帰って来るのを見るや否や、
「アレは何処」「アレを取って」「アレはないのか」
と、聞いてくる始末。
何百年と生きている私達は・・・色んな知識を持っています。
無論、常識も持ち合わせています。
なのに・・・なのに・・・。
私は大きく溜息をつくと、彼女らの作業の手伝いに参加します。
無論、筋肉馬鹿(シリエスタ)にも手伝わせるつもりですよ。
まあ、流石に人命が掛かっているので、彼女達も凍結花の 成分 から調べてくれています。
「状況はどうですか」
私のその一言に、二人は首を左右に振りました。
まあ、予想通りの反応です。
凍結花の様に珍しい植物は、発見されるたびに四大魔女が集まって、研究・分析を行っています。
大方、新種でもない限り私達の代が出来ることは、珍しい花の 利用法 について模索することくらいです。
カルム君のお母様が今すぐに死ぬと言うことは恐らくありませんが・・・研究・分析には予想以上の
時間がかかるかもしれないので、状況はよくないと言えるでしょう。
とりあえず、私達は役割分担をして作業をすることにしました。
私達四人の中で、云(うん)百歳ほど年長(ババア)な人達には、凍結花本体を調べてもらい、
私よりも、たった、ほんの少し、誤差程度ではありますが、若い筋肉馬鹿(シリエスタ)には、火炎の魔女ということもあって、上温薬の上位互換である、高温薬を作ってもらうことになりました。
私は・・・過去の資料をもう一度読み漁ったり、他の薬から新たな発見がないかを調べたいと思っています。
四大魔女が揃ったのですから、きっと大丈夫なはずです。
私は胸の奥底にある、焦燥感をぐっと押さえて、研究を開始しました。
一日また一日と過ぎて行く毎に、私の胸の奥にある焦燥感が、月の引力に引っ張られる潮の様に、私を飲み込もうとしてくる気がします。
お風呂も、修行も、食事すらも省いて、私は研究と実験を、そして資料を読み漁りました。
ですが・・・突破口を見つけられそうにありません。
カルム君との約束が頭をよぎったり、母との・・・嫌な思い出が蘇ったりして、私の精神が不安定なのは明らかですが、今は休むことが出来ません。
とりあえず、私は皆の進捗を確認するために、皆の下に向かおうと立ち上がりました。
でも次の瞬間、ふらっと視界が歪んで、足に力が入らなくなったと思ったら、意識が暗い闇の底に引っ張られて行きました。
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