愛の魔神 マゴウ🌙

ブロク代謝医学🌙

第1話

愛の魔神 ギタール ;


古い記事などの引っ越し保管と改訂など+;


歴史事らなどを述べた物を、 大説、などと言い、

個々の人々の私生活などの事らを述べた物を、

小説 、 などと言うが、


星新一さんの、 ショート・ショートらの様な、

より、 文言らを少なくし、 より、 微かな量において、 より、 妙なる知的喚起性にも富むべき、

規定性からなる、 文芸作品らについては、

微説 ビゼイ 、 とでも、 呼べば、好かろう。



微説 ; 題:愛の魔神:


《 あのギター を抱くように、 彼は、私を抱いてくれた事がない・・。

いかにも愛しそうに撫で回して・・、

うっとりした、 優しい眼差しでも、撫で回すように観て・・、

いかにも、 心の底から沸き立って来た、 という感じがする、 心地の良さそうな声を、 伸びやかに響かせながら、 かき回すように、かき鳴らして・・、 半日を抱いていたって、 飽きはしないんだから・・、 あの半分でも、 私を構い付けてくれれば、いいのに・・ 》 、

蘭堂夫人が、 そんな思いに囚われながら、

黄金色の爛具 ( らんぐ: ランプ ) を、

真っ白い布で撫で回している。


何度も何度も、 同じ思い繰りに耽りながら、

何度も何度も、 撫で回しているのだが、

真っ白い布は、 些 イササ かも汚れぬまま、

爛具だけは、 その黄金色の身柄を、妖しく輝かせ始めていた。


ぴかっと、 瞬くように輝いた爛具の照りが、

蘭堂夫人の目に入り、 彼女を、はっと驚かせた。


なんで、 私は、こんな物を磨いているんだろう、と・・。

いつ、どこで、 こんな物を見付けたんだろう・・。


まるで、 見覚えのない物なのに、 なぜ、 拭いていたんだろう・・。


蘭堂夫人の心が、 疑問府でいっぱいに成った時、

その答えらしきものは、現れ出た。


最初は、 爛具の上口から吹き出した、 青い煙と共に。

段々と、薄れゆく煙が、 ごく薄い霧の覆いのようなものに成った時、

それは、 その大柄な身を、 蘭堂夫人の見開かれた目に、 ぼんやりと映し始め、 やがて、 その目の中で、蘭堂夫人が、小さい頃から、好んで読み付けて来た、アラビアの物語に登場する魔神にそっくりの大男に成った。


『 ・・お呼びでございますね、ご主人さま 』 。


お馴染の決まり文句までが、 そのにこやかな浅黒い大男からは飛び出して来た!


ひどくやって欲しい事がある人の前にだけ現れるのだ、と云う。


つまり、 蘭堂夫人のいの一番の願いを叶えてくれる、と云うのだ!


『 ・・あのギターに・・、 この私をあのギターにして頂戴!

何日かを、 私をあのギターにして! 』 。


何日かを、 私が、 彼の前から姿を消したら、

彼は、 きっと、 心配しまくるに違いない・・。


もともと、 熱烈に愛し合って結婚したんだし、

あのギター以外に、彼が強い関心を示すものなんかは、 何もないんだから、 彼は、 きっと、 私の存在の大きさを見直す事に成るに違いないわ・・。


きっとうまくいく・・, きっと・・。

それに、 あのギターみたいに抱かれてみたい。


どうしても、 あのギターみたいに、 彼に抱かれてみたいのよ・・。


『 ・・それでは、 ご主人さま、

あなたを、最も愛する方が、 あなたを抱 イダ かれますように手配いたします・・ 』 。



私は、 肉体を脱ぎ捨て、声を放り捨て、

私の思い心地だけに成って、

あのギターの中に入り、 ギターの隅々にまで、

私を行き渡らせて、 彼の帰りを待つ事にした。  


本当に、 ギターに成り果せる事ができたのよ、

本当に!


ここまで、 うまくいったんなら、

全てが、 うまくいくに違いないわ。



『 ・・私 ワタクシ めを、 数百年ぶりに、

爛具から解放して頂き、 ご主人さまのお蔭で、

しばらくは、この世界で暮らす自由を満喫できまする。

有り難い上に、 こんなにも美しい、 ご主人さまに恵まれ、 私めも、 幸せこの上ない思いが致しまする・・ 』 。


笑顔を輝かせて言上 ゴンジョウ した、

あの魔神の様子からは、 私の為を思う心遣いが、

明らかに観て取れたわ。


きっと、 全てが、 うまくいくわ。


あっ、あの人の足音だ!

階段を登り始めた所・・。

左足を、 ちょっと引きずる癖があって、

それが、 足音の調子にも出ている。


いよいよ、抱かれるんだわ、彼に。

真っ先に、 私の所に来て、

もう、 本当に、 堪 コラ え切れないって感じで、

抱き上げるのよ! いつも通りに。



『 愛っ! おい、 あーいっ!

買い手が見付かったぞ、 あのギターの。

お前が嫌がってたから、売る事にしたんだ、

この人に。

あのギターの話をしたら、 どうしても、 欲しいって、おっしゃるしさ!

女房孝行がしたいって言ったら、 二人で、 船旅に行ける位の大金を頂いたんだよ。


ほら、君が行きたいって言ってた、アラビアの・・、

あれは、 どこだっけな。 まあ、 どこであれ、

そこにも行けるさ。 仕事先の方で、アラビアの方なんだ。

君とも話が合うと思って、 ギターを渡しがてら、

こちらにもお連れしたって訳さ 』 。


伝音 ( デニン ) 越しに話しながら、

玄関の警備装置を通過して現れた、 夫の横には、

紳士服姿に、 衣装をかえて、 輝くばかりの、

にこやかな顔をした、 あの浅黒い大男が・・。


見た瞬間に思ったのよ、

私は、夫のもとに、 何日かしたら、 本当に帰れるのかしらって・・・・。 【 完 】 。

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