スター・スフィア-異世界冒険はおしゃべり宝石と共に-

黒河ハル

プロローグ:忘レラレシ記憶

『宇宙にいるのはお前たちだけではない』



むかし観たSF映画で妙に耳に残った言葉だ。


人間とは似ても似つかぬ、高度のテクノロジーを持つ地球外生命体が地球へ侵略してくる話。


現代兵器が通じない軍隊が攻めてくるなんて、普通に考えたらクソ恐ろしい。


だけど、人間って奴はいつだってまだ見ぬ世界や出会いに焦がれている。


そうだろ?

天空の世界を人類の領地にしようと、60年代にヒトが月へ降り立ったんだから。



みんな心の奥底で望んでいる。


ああ…じゃない場所へ旅立ちたい。


その旅立ちたい場所とはどこだ?


都会か?田舎か?

それとも海を超えた外国か?

いや…そもそも次元すら超越した、自分の推しの漫画や小説の〝異世界〟か?


…何でもいいが、俺はそれを望んでいる連中に一つだけ言いたい。



『帰れる保証がある場所にしときなさい』



これ、マジで大事だから。


離れてみて、今まで居た環境がどんだけ恵まれていたか自覚してからではもう遅い。


家族や友達はもちろん、好きな趣味、好きな店、好きな人…。

全部失くしちゃうなんて嫌でしょ?


かくいう俺もその絶望感を味わった男だ。



お前はどこに旅立ったんだって?


剣と魔法とドラゴンがある異世界…異星だよ。


どうやってそんな場所に行った?


大学の帰り道に〝蒼の宝石〟を拾ったらそんなとこに行っちまったんだよ。


『蒼の宝石』って何だ?


喋る。食べる。転移テレポートする。

めっちゃ澄んでる女声の変な石。


そんなことなってどうやって帰るの?


…んなもん俺が知りたいよ。

でも、希望はある。

蒼の宝石が忘れてしまった記憶を取り戻してあげることだ。


頑張ってね?


いつも俺は頑張ってる。



まあそんな具合で、俺は所謂いわゆる『異世界転移』に巻き込まれちまったわけだ。


だけど…俺は必ず帰ってみせる。



俺の故郷、地球へ…







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