胸糞展開で倒されるラスボスに転生してイライラするので、ストーリフラグ全部破壊することに決めた

竜頭蛇

第1話 手始めは死亡フラグから


 アーマードファンタジーのラスボスーークリア・ヴィラン。

 自分が忠義を尽くしていた国をたった1人で滅ぼし、親も恋人も王も殺し尽くして、帝国を築き、民や臣下に裏切られて、齢18歳で主人公たちに殺される。

 とことん救いがない人生を送る人物だ。

 国を滅ぼした理由もあまりに強大な力を持っていたクリアを国が危険視して、騙し討ちして殺そうとしてきたからだし。

 親や恋人を殺したのも、国が騙し討ちにしたクリアが新しい鎧に乗って、家族と恋人を国から脱出させにきたことをいいことに、クリアを殺したのはあの新型鎧だと家族と恋人に吹き込み、お互いに敵の正体を知らずに彼と家族恋人たちを殺し合わせたせいで。

 虐殺を引き起こしたのも殺した強敵が家族と恋人だと気づいて、自分が守りたかったものを自らの手で殺した絶望と国への憎悪で暴走したからだ。

 その後せめて主人公たちもそんなクリアを受け入れてくれればよかったのだが、そうはならず、人間不信でつっけんどんになっていた彼を、過去の悪行だけから許されざる悪だと断罪して、ブチ殺す。

 俺も主人公側でプレイしてた時は、我に正義ありとした感じだったが、その後のDLCでクリアの過去がわかっていくごとに、あまりにも救いがなさすぎて、製作陣にドン引きした。

 別に記号的な悪役でも良かったというのに、わざわざ辛い過去を用意して苦しめ抜いて闇堕ちさせなくてもいいだろうに。

 どうせならラスボスというのなら彼岸島の雅様のようにやりたい放題やらせるのがちょうどいいと俺は思う。

 自由が一番だ。

 胸糞展開を押し付けられてイライラするし、そんなものをなぞるつもりは一切ない。

 むしろクソシナリオのストーリーフラグを俺は全てへし折るべきだろう。

 いや絶対にへし折らなければならない。

 

 なぜならラスボスに転生した俺は胸糞が大嫌いだからだ。



 ーーーー


「ものども皇国貴族の誉を、ラピュセル草原に刻み込むのだ! 各自散開! 作戦行動に移れ!」


 総指揮官である姫騎士ーーデススター皇国第三皇女ダリア・デススターが鬨の声を上げると15メートル近くある魔導ロボットーー鎧たちが樹々を抜けて草原を駆け抜けていく。

 俺の鎧は周りの鎧と同じ量産型のものだが、家が没落していて金銭的な余裕がないこともあり、他の鎧のような緑色の迷彩仕様の塗装がなされていない。

 そのため鎧の下地の赤色がもろに露出しており、木々の緑や草原の緑に同化している他の鎧と比べるとひどく目立つ。

 おそらく敵側からしたら、俺の赤い鎧を見て、こちら側の部隊が近づいてきているのを察するだろう。



「ヴィラン、貴様に名誉を与えよう。今を以ってして、貴様を遊撃突撃部隊隊長に任命する。部隊から離れ、敵に奇襲をかけ、貴様の赤い毒針で王国の犬どもの間抜けヅラを貫いてこい!」


「御意」


 案の定、大隊長から厄介払いを受けて、1人だけの遊撃隊の隊長に任命されたので、大量の量産型の鎧ーースピアの中から出て、自由行動に移ることにする。

 狙い通りだ。

 迷彩仕様の塗装の代金についてはこの世界をゲームで網羅している俺にはそう手間をかけずになんとかできたが、こうして個人行動に誘導するためにあえてそのままにしていたのだ。

 これも全ては序盤にラスボス特効鎧が手に入る主人公専用課金イベントのフラグを消すためだ。

 なんとこの鎧、運営の元にゲームの難易度がむずかしすぎると苦情が腐るほど寄せられて造られたものでラスボス含め大概の鎧がワンパンできる上に、ラスボスについては攻撃に絶対追尾機能が発動して必中だ。

 死という一番の胸糞を回避するのであるのならこのイベントフラグは折らない手はないだろう。




 ーーー


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