仕事と私生活の境界線を演じる若者たち
第15話 仕事と私生活の境界線を生きる若者たちの場 1
2023年12月17日・日曜日の午前4時頃。
「それでは、米河さん、準備はよろしいかな」
「はい。早速参りましょう」
「まずはあなたが児童側で感じられたことをお話し願えませんか」
「わかりました」
かくして、論争は再開された。
・・・・・・・ ・・・・・ ・
まず、ここで述べるのはよつ葉園という岡山の一養護施設の、私が見聞き及んだ範囲内での事例でありますことをお許しいただきたい。
これをもってこの仕事一般という総括をするつもりはありませんので。
そこは一応、お断りいたしておきます。
仕事と趣味が同じになる、あるいはなった人というのもいらっしゃいます。
鉄道マニアが鉄道会社に就職して、鉄道の業務に入っていく。好きこそものの上手なれでよさそうにも思いますが、実態はそうでもない。むしろ、それを言うならば、マニアに来られてもしょうがないという思いを持たれている節さえ、鉄道会社には見受けられますね。
しかしながら、鉄道会社に勤める鉄道趣味の人は、なんだかんだで、私生活と業務は歴と分かれますから、いいですよ。
一方、養護施設で住込みの職員として、そうでなくても敷地内の職員宿舎で家族そろって生活することも含まれましょうけど、ここはあえてその例も除外すると致しまして、まずは、独身者もしくは単身者として施設内の部屋をあてがわれてそこに生活する職員、どうしても短大や大学を出て間もない若い女性、今では男性の割合も増えているようですが、ここは男女とも対象に上げましょう。
もう一つ、この住込み職員に該当する者につきましては、保母、今の保育士ですが、これは無論男女を問いません。それに児童指導員という職種の方も男女ともかつてよりおりましたが、この職責を有する者に照準を合わせます。職員宿舎に住込んでいた女性事務員さんもいた記憶がありますが、児童の世話に直接当たらない職員は、そうであったとしてもあえてここでは除外します。無論、既婚者で通勤者や職員宿舎に居住する方も、ここでは基本的に除外します。
排除条項ばかり述べてきましたが、これで、対象とすべき職員のイメージがむしろわかりやすくなったのではないでしょうか。
~ しかし君は、排除の論理になるとさえが出てくるように思えるが、それは気のせいじゃろうか、のう・・・(苦笑~森川氏)
そう言われてみれば、そういう要素があるようにも思われます。
ですが、ここはあえてこの論理を用いて対象を絞る必要を感じましたので、この手法を用いて述べさせていただきました。
さて、よつ葉園におきましては、児童らの居住する本館の向いに、昔からの木造の建物を残し、そこに職員らの居室をあてがっておりました。移転後は、各寮の両端部に個室を2室ずつ設け、そこに単身の住込み職員の寝起企図私的なくつろぎを与える場としておりました。
そうですね、当時はまだ大学生でも一般家庭の空き部屋に下宿させてもらうことはかなりありましたから、そのような生活空間とよく似ていたと言えましょうか。
プライバシーという点につきましては、一般のワンルームのアパートやマンションなんかに比べて、明らかに劣ります。
ですが、昭和50年代まではそんな環境でもまだごく普通に機能していましたというか、一般的にそういう時代でしたから、よつ葉園の職員各位の居住環境が劣悪であったとまでは言えないでしょう。それ以前、それこそ森川さんが園長をされていた時代なら、言わずもがな。
まあその、平成になってしばらくして、そうですね、私が大学を出る頃にもなれば、だんだん、一般家庭に下宿させてもらってというパターンは影を潜め、単身者用のアパート等に一人で居住するというパターンが増えてきたような気がします。
独身者や高齢者の単身世帯が増えるのと軌を一にして、大学生各位の下宿感覚も大きく変貌したように思われてなりません。
以上から思いますに、まず、昭和末期までのよつ葉園の住込み職員らの居住環境という論点におきましては、当時の社会通念に照らし合せ、劣悪であったとまでは言えないと思われます。
確かに、トイレ、風呂及び洗濯等は児童らと共用ですが、どこの「家庭」でも家族というのは似たようなものであると言われればそうでしょうからね。
それがまさに「家庭」だという詭弁の温床であったとまで言い切るのは、いささか即断に過ぎるでしょうが、今時の基準からすれば、そのような解釈も可能ではあるかと思われます。
おいかがでしょうか?
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