第45話 徹底的に戦うよ

それは、ある日。


「おっっらああああ!!!」


グッシャアアアアア!!


「きゃあああああああ!!!しょ…商品がぁああ!!」


福田のアパレルブランドに、生ゴミが投げ込まれる事件があった。

悪臭にまみれた、その生ゴミは。


一瞬にして…オシャレだったその店の殆どを、汚物に変えた。


「ひ…、いやあああ!!くさっ!!やだぁああ!!」

「へ、へへ…もういっちょ!!」


「や、やめてよおおおお!!!」



「ちょ…何してんだよ、アンタ達。」


ちょうど、その場にいた俺。

その日は下見と必要な備品の買付に来ていた。



「ああ…何だオタクぅ。文句あっかよ?」


テンプレのように絡んでくるヤクザ者。…どうして自分が悪い事しているのに、こちらに凄めるんだろうか。




「そりゃ、そうだろうよ。許す訳無いじゃん。…馬鹿なの?あ、馬鹿か。こんな事を白昼堂々…監視カメラのど真ん中でやるような人間だもんね。」





「な、う…うるせぇな!!後でボコボコにしてやるから、どいてろよ。」

そう言いながら、周囲をキョロキョロするヤクザ。



「何、カメラの位置を気にしてんだよ?誰に頼まれた?普通はそんな挙動不審には…ならないよ?こんな勢いよく、店に嫌がらせするなんて…ねぇ?」




「だ、だから…うっるせえなって!!ぶっ殺すぞコラァ!!」






「あーあ。今の、殺害予告だ。警察も動いてくれるねぇ。…アンタに依頼した人も困っちゃうねぇ。あーあ。大変だ。」



「なっ…て、テメェ!!調子のんなよ、コラァ!!」




ガッ…!!

そう言って、その俺の顔を簡単に殴ってくる。


その為、俺は数m吹き飛んで、商品棚に突っ込む。



「きゃ、きゃあああああ!!か、会長!」




「え…あ、そんな力入れてな…な、か…会長?こ…コイツが?」


派手に吹き飛んだ俺は、何秒か経った後。

スッと立ち上がり…周囲を確認した。


「…良いね。派手にやってくれた」

俺は店の中にいた、玲奈と福田に視線を送った。



「…撮れてる?」


「…完璧。」



「お、おい。何、手を出してんだよ!!そんなの話に無かったろう!」


「う、うるせぇ!コイツが…突っかかってきたんだよ、畜生がぁ!」


そう言って、走って逃げていくヤクザ者たち。

わかりやすいなぁ。


「周りの店の皆さ~~~~~ん、見ましたかぁ??」


「ああ、言ってたとおりになったな、兄ちゃん。」

「凄いわね…大丈夫なの?派手に飛んでたけど…」


「あはは…。大丈夫!…じゃなかった。今にも死んでしまいそうですね。…うう。駄目だぁ。死んじゃうよぉ。」



「アンタ、嘘下手ねぇ。」

「大根が過ぎるな。」








prrrrrr prrrrrrr prrrrrr


「あ、渡辺さん?今…忙しい?あ、大丈夫…?言ってた映像だけど…撮れたわ。…え?キー局?いい、いい。全然地方のテレビ局の方が良い。その方がいいの。」





とぼとぼと、店の前に戻ってきた。



「か、会長…こんなにディスプレイが…生ゴミと、会長が飛んできた商品棚で…メチャクチャに…。どうしよう…」


「あーあ。酷いね、コレ。高いのだけ…中に下げといて、ホントに良かったね。絶対に片付けなくていいからね?このまま、絶対。」


「ほ…ホントに片付けなくて…良いんですか?」


「あはは…。こんなの…結構有名な手口だからね。そうだね…全く片付けなくて良い。片付けられると困っちゃうんだ。…その分、君らには取材陣の前で徹底的に悲劇のヒロインになってもらうよ?」



「か…会長は、コレを知ってたから、1ヶ月は売ることを考えなくていいって言ってたんですか?」


「うう~ん。そうとは言えないけど。なんとなくね。邪魔してくるかなって…思ったんだよね。結構待つ時間は長かったね?ほぼほぼ1ヶ月だね。」


「だから…無駄に何日もウチの店で過ごしてたんですね?横の喫茶店とか…ずっと居たし…。ただの金持ち道楽かと思っちゃった。」

「長い下見よね、ホント」


何?なんなの?君らの中で、俺は不審者?

「…ま、いいや。ここは今月で畳んで、違う場所で来月オープンし直そう。」


「ええ?」

「…マジですかぁ?」


「だって…生ゴミのにおい嫌じゃん。」






この1ヶ月。


この店は最低限の営業だけを行った。


店は1人の対応で、他はとにかく可愛い・綺麗なコーディネートで街を回った。


周囲の街の店に顔を出しては、ゆっくりとデザートを食べて店の人間と談笑し、ゆっくりと食事をしては店の人間と談笑。…談笑しかしてないやん。


正直めっちゃ赤字。

でも大丈夫。今後はオンラインでの営業を基本にしようとしてるから。


まずは広告なんだよね。


モデルって仕事は、綺麗な服を着ると、その服が売れるから成り立つのよ。

コレを着て、ブランドロゴだけさり気なく見せておく。


そのままオシャレな優雅な生活をしてもらうだけで、広告になる。

それがモデル。…いや、ホントは雑誌とかの大きな媒体に出てアピールしたいけど。


これは後10年もすれば…SNSが流行った時に、美人モデルをそこに大量投入できそうだ。…結婚して大部分居なくなってんじゃないかな?


まあ、それは祝福しよう。残ったら御の字。

結婚後も努めて貰える努力をしよう。


目指せ、超絶ホワイト企業。だね。




仲良くなった街の人間は味方。…もう親友かなってレベルで接してる。凄いなギャルの人達のコミュニケーション能力。


この一ヶ月で街往くばあさんすら話しかけれてる。

ホント凄いな、この人達。


そんな1ヶ月を過ごした街の人気者の店が、暴漢に襲われる。

そこで暴力事件まで起きたんだ。





さぁ…どれくらい、揉み消せるんだろうなぁ。

地方テレビって…簡単に視聴者の映像、使ってくれるけどねぇ。


芸能界がもみ消すのは、東京を中心としたテレビ網。

そこから抜け出た、情報というのはいくら芸能界が幅を効かせていても難しいのは2023年に芸能界の裏情報がバンバン出てきているのを見ると思ってしまう。


ようは海外の有名動画サービスやSNSの様に、個人が情報をあげやすい時代だとその情報統制が難しくなりやすいということだ。


現に2010年前後では地方テレビ局の放送事故はネット掲示板によく乗って拡散されていた。この動きは、どんなに情報に権限を持つ人間でも、妨げることが出来ていない未来を。俺は知っている。



あーあ。どうなるかな。




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