第18話 皆で詰め替え作業。俺の勘では明日何かの動きがある筈!
前々から好きだった花の名前を付けた。
『ストレリチア』は俺の祖母が好きだった花だ。
俺もその花が好きで、何時かはその名のついた何かを作りたいとは思っていた。
だからこそ、店の名前にした。
花言葉は知らない。
だが、祖母の優しい顔だけは忘れられなかった。
祖父が祖母に遺した花。
それが何となく、羨ましかった。
「ストレリチアですか、お店の名前決めてたんですね」
「まぁな」
「でも、まだ看板もないのに人来ますかね?」
「来るだろうな。まず俺は賄賂を流した」
「あ」
「それがどこまで効果があるかによる」
「なるほど……今の所流したのは二か所ですよね?」
「そう、道中に出くわしたシズリー辺境伯と、ボルドーナ商会」
「伯爵は解りませんが、ボルドーナ商会は動きがあっても良さそうです」
「そうだな。明日は家にいて子供たちと一緒に詰め替え作業をしていれば、勝手に来ると思うぞ」
それだけの確信はある。
スカルプケアのシャンプーだって効果はあっただろうし、石鹸にしてもそうだ。
アチラの世界のアイテムはこの異世界で倍以上、それ以上の効果を出すようだからな。
それに、価値的にも高い。
うちしか扱っていないのなら、意地でも来るはずだ。
その為に今日はスカルプシャンプーの詰め合わせと、石鹸の紙袋交換、女性用シャンプーとコンディショナーを瓶に詰め替えて貰っている。
動くのなら明日。
間違いない。
「しかし、久々にスーツを着ると先生に戻った気がしていいな」
「そうですね、先生って何時もワイシャツに黒のスーツ地のズボン履いてた気がします。それにトレードマークの赤いネクタイ」
「それが俺の戦闘服だからな! 学校にいる時は何時も戦闘している気分だったぞ!」
「滾ってたんですね?」
「そうだなぁ。力を踏ん張らないと若い力に推し負けるからな!」
「ふふふっ!」
「君の服は浮かない程度に好きにしていいが、俺はワイシャツにスーツ地のズボンに刀用のベルトと刀、それに赤いネクタイでいるほうが性に合う」
「それなら先生はそのスタイルで行くといいですよ。お店の定休日は作りたいですね」
「それもそうだな。せめて週一日は休みたい」
「オープン時間は朝10時からで、閉店時間は夕方5時とかにしたらどうです?」
「ああ、それでもいいか。働いてるのが子供達だからな」
「ええ、それに他の所に拠点を増やすのかも考えないと」
「オスカール王国には拠点も支店も作らないぞ」
「デスヨネー」
「それに、増やすなら一つ考えてる所がある」
「と言いますと?」
「獣人達の避難所になってる場所があるらしい。拠点がある程度大きくなったら、そこを避難所ではなく村、もしくは街にしたいな」
「大きな夢ですね」
「ま、理想は高くだ」
そう言って本拠地に戻ると、子供たちはワラワラッと出迎えてくれた。
3時のおやつには間に合ったようだ。
そう思った時時計の音楽が流れ、おやつタイムのスタートである!
「今日のおやつは、チョコレートビスケットだよ~!」
「黒い?」
「焦げてるの?」
「でも甘い匂いがする」
「確かにこれは、珈琲に合い口だな」
「ですよね。牛乳とも相性がいいの。食べてみてね」
一人5枚ずつ渡されたチョコレートビスケットを一口食べると、子供たちの尻尾は相変わらずビーンと上に立つな!
可愛いが!!
「お、美味しいです!!」
「甘いのに更に甘い!」
「サクサクで美味しい!」
それぞれ喜びを口にしながら食べていて、牛乳を飲んで更に美味しいとかなり盛り上がっている。
子供の喜ぶ顔がみれるとホッとする。
何時かは巣立っていくんだろうが、それまでは世話をして行ってやらないとな。
「それで、どれくらい仕事は進んだ感じだ?」
「あれから50瓶の詰め替えがそれぞれ終わってる感じです」
「なるほど、流石器用だな」
「午後も詰め替え作業ですか?」
「ああ、俺とカナエは別の作業で詰め替えはするが、皆で詰め替え作業だな」
「何時かは大人の人も雇うんですか?」
そう聞いてきたのはシュウだ。
それは俺も考えていた事だが――。
「シュウは俺に着いてくる約束だろう? 俺が移動中は確かに行き来は出来るが」
「そうですね……現場監督が居なくなるのは困りますね」
「大人は別の時にでも考えようと思ってる。ごめんな?」
「いえ……」
「取り敢えず、引き続き現場監督を頼むぞ」
「はい!」
こうしておやつを食べ終わると手を洗い口元を一人ずつ拭いてやってから皆で作業部屋に行き、俺はドリップの紅茶を5個セットで袋詰めして行く。
慣れれば早いもので、サクサクと作っていくと、100の束が出来上がっていた。
だがこれでも足りない場合もあるかも知れない。
更に500追加で作った頃、丁度夕方6時の音楽が鳴り仕事は終了。
無理はしないしさせないのが基本だ。
「皆お疲れ様!」
「お疲れ様です」
「俺は一人ずつの出来栄えをノートに写してから、番号を振って店に置いてくるから、先に手を洗ったりしてゆっくりしててくれ」
「なら、俺も一緒にいていいですか?」
「ん? シュウもいていいが、そう楽しい物でもないぞ?」
「大人のする仕事と言うものに興味がありまして」
「とは言っても、スキル任せだけどな。それでいいならいいぞ」
「ありがとう御座います」
こうして一人ずつの出来栄えと数と作業時間を細かく書き、書き終われば空間収納に入れてを繰り返し、全てが終わる頃奥の扉を潜って在庫を置く場所にまた数字をマジックペンで太く書いていた数字が分かるように、分かりやすいように整理して並べていく。
女性用のシャンプーやコンディショナーは作業場に置きっぱなしなので、後でカナエに取りに行かせないとな。
「よし、コレで良いだろう」
「お疲れ様です」
「シュウもお疲れ様だな。手を洗って少しのんびりしよう」
「はい」
こうして本拠地に戻り、手を洗って顔を洗いスッキリしてからリビングに向かうと、テリアは洗濯をしていて、テリーとテリアナとナノが遊んでいた。
仕事終わりだから少しはゆっくりして欲しい所だが、テリアはカナエに似て仕事好きのようだ。
ココは後で給料に反映させるとしよう。
その後出来上がった夕飯を食べて、いつも通り風呂に入り、歯を磨いて茶を飲んで皆揃ってグッスリと眠った翌日――朝食を済ませて俺らしい戦闘服と言う名の教師服に着替えて一階に降りていると、まだ朝ご飯の後の珈琲タイムだというのに玄関を叩く音が聞こえた。
子供たちも驚いているようで、俺がドアを開けると――。
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