第12話 ボルドーナ商会への顔つなぎと、商業ギルドで土地を借りて。
「国の様子を見て、拠点地にするかは決めよう。無理に決めなくても、周辺の町や村に拠点を持った方がいい場合もある」
「それもそうですね」
「後は拠点と拠点を幾つまで出せて通れるのかも知りたいな」
「ああ、所謂ワープですか」
「うむ、それが出来れば御の字なんだがな」
そう言って入国する際、商人ギルドのカードを見せ、この獣人の子供は自分の奴隷である事の証明書を出して見せると、ようやく中に入る事が出来た。
流石首都なだけあって大きい。
まずは商人ギルドでアイテムを売りたいが……オスカール王国のギルドマスターが面白い話をしていた。
ボルドーナ商会……一度覗くのもありだろう。
まずは聞き込みだ。
「すみません、ボルドーナ商会の店を探しているんですが」
「ああ、それなら商業ギルドの隣だよ」
「ありがとう御座います」
まさか商業ギルドの横で商売してるとは……中々強気とみた。
だが、商売をするには商売が集まる場所でした方がいいと言うのも分かる。
そんな事を思いつつ、ボルドーナ商会へ足を踏み入れると、大きな店で革細工から何から色々と売っている。
宝石店は流石に無かったが、服に装飾品にと幅広い様だ。
だが思ったことが事ある。
「カナエ」
「はい」
「此処では塩や砂糖は無理だな」
「そうですね、美容関係でしょうか」
「そうなるな」
そうなのである。
砂糖や塩と言った物は売っておらず、あるのは美容関係の物が数点。
取り敢えず売り込みだけはしておこう。
「すみません、商品の買い取り等はして貰えるのでしょうか?」
「それなら商業ギルドが、」
「いえ、このボルドーナ商会で一度使ってみて貰って、その上で買い取りをするかどうか決めて貰いたいんです。もしオーナー、社長様がいらっしゃるのでしたらお会いできればと」
「まぁ、ボルドーナ商会の拠点は此処だから社長たちはいるが」
「お会いできないでしょうか?」
「一応聞いてきます」
そう言うと中に入って行った従業員。
その後、やり手な顔の背の高い男性がやってきて、「この方が?」と声を掛ける。
身長は俺が177cmだから、同じくらいだろうか。
「初めまして、不躾にすみません。俺の名はアツシと申します。実は、ボルドーナ商会の話をオスカール王国の商業ギルドマスターから聞いたもので」
「ほう、オスカールの商業ギルドマスターからですか?」
「はい、それで、此方の商品を一度お使い頂いて、それからでいいので契約をして頂ければと思いまして」
そう言って瓶を一つ取り出すと、彼は眉を片方だけ上げると「こちらへ」と客室に案内してくれた。
どうやらプレゼンしていいらしい。
「こちらの商品は、男性の頭皮を綺麗にする成分の入った男性用のシャンプーとなります」
「男性の頭皮……」
「分かりやすく言うなら、抜け毛を予防する効果が期待されます」
「!?」
「洗い上がりもスカッとするので、男性向けには丁度いいかと。それとカナエ、石鹸を」
「あ、はい。こちらです」
「花のいい香りがしますね」
「はい、此方は花の香りを詰め込んだ石鹸となっております。手を綺麗にするのはもちろん、身体に使うのもアリの商品です」
「ふむ、実に面白い」
「そうでしょう? 一度体感して使ってみては」
「そうですね。それで本当に良いモノだと分れば契約しましょう。結果は一週間後で宜しいですかな?」
「はい、勿論です。では一週間後にまた来ますので、その時に色良いお返事が頂けると幸いです」
「ああ、そうなる事を祈るよ」
「それと、こちらはほんの気持ちですので、是非奥様とどうぞ」
「ああ、ありがとう」
ちゃんと賄賂も手渡し、これにてボルドーナ商会の問題は一旦解決。
次に商業ギルドに行き、取引して欲しい商品があると伝えて『砂糖』『塩』『胡椒』を一つずつ取り出し、また大慌てでギルドマスターが飛んできて応接室に呼ばれ、交渉となる。
砂糖はカナエの商品だが、塩と胡椒は俺の商品。
「オスカール王国では、砂糖が1つ金貨70枚、胡椒は1つ金貨90枚で購入して頂けたのですが、ノスタルミア王国ではお幾らになるでしょか」
「むむむ……」
「無論、ノスタルミア王国を拠点として活動しようと思っていますので、少しだけ勉強させて頂くことも可能です」
「むう!!」
「それと、住む場所を探したいのですが、土地だけで良いので広い場所はないでしょうか。その代わり、家は要らないので土地だけを貸して貰えたらと」
「ふむ、家は要らないのですか?」
「家は俺のレアスキルでなんとでもなるので」
「なるほど、でしたらいい場所が御座います。私が案内いたしましょう。その前に此方の代金ですね。幾つ程今お持ちでしょうか?」
「俺と弟子であるカナエは空間収納の中を持ってますので、その中に各種50個は入っております」
「では全てお買い上げせて頂きたく」
「ありがとう御座います」
丁度段ボールに入っている数が各種50個までだったので助かった。
呼び鈴を鳴らし、人が入って来ると空間収納からカナエは砂糖50個入りの段ボールを。
俺は塩50個と胡椒50個の入った段ボールを取り出し、机に並べた。
それを恭しく社員の方々が運んで行かれる。
胡椒も砂糖も袋詰めの大袋入りで買ってるんだけどな……値段はとてもお手頃だったが、この世界では大金になる。
「では、お弟子様の砂糖が金貨3000枚。アツシ様の方が塩に金貨3000枚と、胡椒に金貨4000枚。ご確認下さい」
「ありがとう御座います」
「確認致します」
こうして鑑定で数を数えると「確かに」と口にし、恭しく金貨の入った袋を手渡され、それを素早く鞄に入れて空間収納に入れ込む。
「次に土地でしたね、どれくらいの広さをご希望ですか?」
「そうですね、少し待って下さい」
そう頼んだのは、脳内でレベルアップの声が響いたからだ。
【拠点レベルが3上がりました。次の項目から三つ選べます。一つ、拠点を一つ増やす。一つ、キャンピングカーの改造。一つ、今ある拠点を二階建てにして作業スペースを作る。一つ、店を作る】
一気に出て来たな……。三つしか選べないし、拠点を増やすは後に回すとして……キャンピングカーの改造、拠点の二階建て、後は店か……。
「すみません、自分の店用の土地も見ておきたいんですが」
「土地だけで宜しいのですか?」
「ええ、最初は小さい土地で構いません」
「ふむ、でしたらまずは賃貸と言う形で宜しいのでしょうか?」
「はい、気に入れば購入と言う事で」
「畏まりました。店と店舗は近い方がいいですよね。となるとおすすめの場所があります」
「では案内お願いします」
こうして俺達は町を歩きながら行き交う人々の表情や声を聞いていた。
確かに安定した国の様だ。それに獣人もよく見かける。
辿り着いたのは商業ギルドからそこまで離れていない広い土地でそれなりに広く、片方は中くらいの土地があるだけの場所だった。
「この連結した二つの土地などはお勧めかと」
「凄く良いですね。でも商業ギルドとそう離れていないですが」
「商業ギルドとボルドーナ商会には貴族が多く訪れます。私の見立てでは、アツシ様もその傾向があると思いまして」
「なるほど、確かにそれはあるかも知れませんね」
「ですので、此方の土地を選ばせて貰いました。ですがここは曰く付きの土地でして」
「ほう?」
「以前此処に立っていた屋敷が、火の気がないのに燃えてしまったんです」
「ふむ」
「商人ですから恨みを買う事はあったんでしょうが……ね」
「なるほど、それで死人が出たか何かで曰く付きと」
「その通りで御座います」
「俺はその辺り気にしないから構わないよ。でも、曰く付きなら少しはお安くお願いしたい所ですね」
「わかっております。こちらは二つの土地合わせて月、金貨200枚とさせて貰います」
「分かりました、そちらで契約します」
「では、商業ギルドに戻ったら契約致しましょう」
こうして住む場所も何とかなったし、後はギルドカードがレベルアップしてくれればいいんだがな。流石にそれは欲張りすぎか?
そんな事を考えつつ商業ギルドに到着し、応接室に通されると土地の契約を交わして前金として二か月分を支払う。
今の金銭面からして、金貨月200ならそう苦しい問題じゃない。
さて、問題は――。
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本日の更新は以上です。
明日朝8時から一日三回更新です。
どうぞよろしくお願いいたします。
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