懲役六時間

業 藍衣

第1話 プロローグ 憂鬱な朝

車で遠出をする。

本来ドライブ好きな私にとってこれ以上無いほど楽しみにな出来事であるはずだった。

それなのに、今日に限っては最悪な気分だ。

朝は布団から這い出るのだって苦痛だったし、朝食の目玉焼きは半熟を通りすぎてガチガチに固かった。その上、ベーコンなんか少し焼きすぎて苦い始末……。

それもこれも運転免許の更新に、最寄りの 警察署ではなく、免許センターまで行かなければならなくなったからだ。

まぁ確かに、違反を重ねた私の罪なのは理解している。

一時不停止を二回。

いや、でもあんな見えにくい消えかけた停止線のせいでもあるし、まるで木の枝に隠すように設置した道路標識にも問題が……。

なんて文句を言ったところで、加算された点数や支払った罰金が戻る事もない。

ああ、憂鬱だ。

私は鉛のように重い足を引きずるような気分で車へと乗り込むと、エンジンをかけるのだった。

時刻は十時五分。

まずは一時間半の、憂鬱なドライブの始まりだ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る