席替えで『神席』を引いて、トップ美少女達から物理的に囲まれてしまった件。
@shiru_a17
第1話 『神席』を引いたらしい
高校2年生、5月の下旬。
新しいクラスにもすっかり慣れてしまったと感じる今日この頃。
放課後のHRで、担任の
「急だが、今から席替えをするぞー。なんか最近授業をしててもつまらなかったし、変化が欲しかったところなんだよな」
圧倒的に、自分本位すぎる理由。
とても教師とは思えない発言だが、この人のこういう所は意外と生徒受けが良く、見た目が美人なことも相まってか人気は高い。
そんな漆間先生の発言を聞き、生徒達はざわざわと盛り上がった様子を見せる。一部、「俺のオアシスが……」などと悔しそうな顔を浮かべている人もいるが。
席替え。
生徒達にとって、学校生活における数少ないお楽しみイベントの一つだろう。
かくいう俺──
というのも、どこの席になるかによって、今後の授業中の過ごし方が左右されるからだ。
一番前のど真ん中の席になんてなってしまえば、授業を真面目に受けることを余儀なくされてしまう。
もちろん俺の狙いは最後列、もしくは後ろから2列目。端の方だと尚良し。
「あ、ちなみに他の人と席の交換とかするなよ、面白くないから。そんな面白くないことをしたやつはこれから一年間、最前列ど真ん中で、面白くない授業を一番近くで聞く権利をあげてやる」
面白くないって言いすぎだろ、この教師。てか、面白くない授業は他の先生たちにも失礼では?面白くないけど。
その後生徒達は、教卓の前に並んで次々とくじを引いていく。
残りが数人となったところで俺は席を立ち、一番最後にくじを引いた。並ぶのが面倒だったというのもあるし、残り物にはなんとやらという言葉もある。
手元の紙を開くと、そこには『25』の数字が書いてあった。漆間先生って、意外と可愛らしい字を書くんだよな。ちょっとギャップ萌え。
俺が密かに萌えを感じていることなど知る由もない漆間先生は、全員がくじを引いたことを確認すると、黒板に書いた座席表にランダムに数字を記入していく。全ての命運は、漆間先生の手に託された。
あと俺にできることと言えば、せいぜい神頼みくらい。
神様、仏様、漆間様。
お願いします、どうか俺に安息の地を……。
すると、そんな思いが通じたのだろうか。
最後列、左端の窓際。そこに『25』の数字が記入された。狙い通り、いや、狙っていた席の中でもベストな席と言える。
やはり、日頃の行いが良かったからだろうか。
ありがとう、漆間様。この先生は一生独身なんだろうなとか思っててごめん。
そんなことを考えながら、荷物を持って新しい席に移動する。みんなテンションが上がっているようで、辺りはザワザワと盛り上がっている様子。
「八代くん、よろしくね〜」
席についたとき、隣からそんな声が聞こえてきた。
顔を横に向けると、そこにいたのは
うちのクラスの中心人物で、誰とでも分け隔てなく仲良くし、男女問わず人気が高い。彼女に告白して撃沈した人は数知れず。そんな人物。
「うん、よろしく」
それだけ言うと、俺は帰りの準備を始める。リュックが重くならないよう、必要最低限の教科書やファイルだけを仕舞っていく。置き勉最高。
「あ、透華じゃん」
「やった〜。前の席、しずくなんだ」
百合瀬の前で、俺の右斜め前の席を引いたのは、望月しずく。ダウナーな雰囲気を持つ、百合瀬に負けず劣らないほどの美少女。だが、百合瀬と違って仲がいい人物以外と関わっているところをあまり見たことがない。
すると、そこにもう一人やってくる。
「あれ、二人とも席めっちゃ近いじゃーん!しかも窓際で後ろの方だし、これは日頃の行いのおかげかなー?」
その小柄でショートヘアの少女は、
「学校生活も私生活も一番だらしない人が何か言ってるよ、しずくさん」
「寝言は寝て言うべきだよね」
「二人とも、ひどくないかにゃ……?」
相沢に辛辣な二人。相沢は、この中ではいじられキャラ的なポジションなのだろうか。
見ての通り三人は仲がよく、容姿端麗なためクラスの男子からは美少女トップスリーなどと呼ばれているらしい。
そんな三人の席が一箇所に密集したことにより、今もかなり注目を集めている様子。特に男子は、三人のうちの誰かと近くの席になりたいと思っていた者も多いのだろう。
ちなみに相沢の私生活は知らないが、確かに遅刻や宿題忘れは多いイメージだ。俺もそのあたりは人のことは言えないが。
「ね、八城くんもひどいって思うよね?」
そして、なぜかこっちに振ってくる相沢。
というか、普通に返答に困るのだが?
「えーっと……俺たち初めて話したし、答えると相沢に悪いからノーコメントで」
「それほぼ答えてるようなものだよね!?」
「ぶふっ」
「あはははははっ!」
横で聞いていた望月が吹き出し、百合瀬が大笑いする。
そして、その笑い声によって周囲からさらに注目を集めてしまっている気がする。
……今、「あんなやついたか?」という声が聞こえてきたが、もしかしなくても俺のことですよね?一応、二ヶ月近く同じクラスにいたんだが。
三人が注目されるのはいつものことだが、俺は目立つのに慣れてないため、居心地はあまり良くない。
そそくさと帰りの準備を済ませると、俺は席を立った。
「じゃあ、俺帰るから」
「うん。また明日!」
一番後ろの端で美少女三人から囲まれた俺の席は、クラスの間で『神席』と呼ばれることとなるらしい。
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